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- 英国、離脱期限延期でも霧は晴れない
英国のEU離脱期限は半年ほど先延ばしされました。合意なき離脱の懸念は当面後退したようにも聞こえます。しかし、為替市場を見ても、本来なら上昇しても不思議ではないポンド(対ドル)に回復の気配が見られません。その背景と思われる点を振り返ります。
英国EU離脱:離脱期限を10月末まで再延期、前倒しも想定、6月に進展を見直し
欧州連合(EU)は2019年4月10日にEU臨時首脳会議を開催、11日未明にまで及ぶ議論の末、英国のEU離脱期限を10月31日まで再延期することで合意しました。6月に英国の離脱に向けた進展状況を検証することも合意されました。
これまでの期限は4月12日でしたが、EU臨時首脳会議を前に、メイ首相は離脱を6月30日まで延期するよう要請しました。一方、トゥスクEU大統領は最大1年の長期延期案を提示していました。1年延長案には、英国がEUの将来の政策決定に関わり続けるとして、フランスが難色を示し、結局玉虫色の離脱期限延長となりました。
どこに注目すべきか:
離脱期限、関税同盟、欧州議会選挙、ポンド
英国のEU離脱期限は半年ほど先延ばしされました。合意なき離脱の懸念は当面後退したようにも聞こえます。しかし、為替市場を見ても、本来なら上昇しても不思議ではないポンド(対ドル)に回復の気配は見られません(図表1参照)。その背景と思われる点を振り返ります。
最初のポイントは、合意なき離脱の可能性が残されている点です。メイ首相はイースター休暇(4月19~22日)後から、欧州議会選挙直前(5月22日、図表2参照)まで、過去3回否決されたEUとの離脱合意案の可決、もしくは関税同盟を軸に英国議会で過半数の可決を目指すと思われます。
しかし、英国議会がEU離脱に5月22日までに合意できなければ5月23日からの欧州議会選挙に参加する義務があるため、仮に、5月22日までに合意に至らず、その上、欧州議会選挙に参加しないという条件が重なると、英国は6月1日に合意なき離脱となるリスクが残されています。
なお、5月2日の地方選挙は、英国議会とは直接関係はありませんが、世論の動向が、合意案の議論の方向に影響する可能性は考えられます。
次に、メイ首相の戦略が不透明なことです。英国議会の構図は、メイ首相に反対を続ける半数近い野党の労働党と、離脱強硬派と親EU派に別れる与党となっており、与党内の説得では、与党反対派と野党が結びつき、議会での過半数獲得は困難となる傾向が見られました。現在もこの構図に大きな変化は無いと見られます。そこでメイ首相は野党に協力を求める姿勢を見せています。ただ、メイ首相と労働党コービン党首との隔たりは大きいことや、与党分裂が深まる懸念など新たな路線の先行きも不透明です。
5月22日までの合意をあきらめ、欧州議会選挙に参加(英国は既に選挙の準備は進めていると報道されています)した場合でも、その時点から半年以内に10月末の離脱期限が控えています。時間が無いわけではありませんが、再国民投票など他の選択肢を導入するにはタイトなスケジュールで、中途半端な延期であることも懸念されます。
もっとも問題なのは、このシナリオで推移した場合は不透明な状態が長期化し英国経済への影響が懸念されること、そしてメイ首相の政治的立場が不安定なことです。離脱期限の延長だけではポンド上昇を見込みにくいと見ています。
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