Article Title
カナダ中銀、国債購入額の縮小を表明
梅澤 利文
2021/04/22

Share

Line

LinkedIn

URLをコピー


概要

今回のカナダ中銀の会合は、結果公表後の市場の反応を見てもタカ派(金融引締めを選好)寄りと見られます。そのカナダ中銀がタカ派と見られた主な要因は次の3つです。国債購入額の減額、カナダ経済見通しの改善、そして政策金利引き上げ時期の前倒しを示唆したことです。



Article Body Text

カナダ中央銀行:政策金利は据え置くも、国債購入額の縮小を表明

カナダ(加)銀行(中央銀行)は2021年4月21日の金融政策決定会合で、市場予想通り政策金利を0.25%に据え置く一方、国債の購入額を減額(テーパリング)することを表明しました。現在の週次国債購入額(40億カナダドル)を来週から30億カナダドルに減額することが決定されました。

カナダ中銀の発表を受けた市場の反応を見ると、カナダ国債市場では購入額の縮小を反映して利回りが上昇(価格は下落)し、一方カナダドルは上昇しました(図表1参照)。

どこに注目すべきか:資源国、テーパリング、上方修正、前倒し

今回のカナダ中銀の会合は、結果公表後の市場の反応を見てもタカ派(金融引締めを選好)寄りと見られます。そのカナダ中銀がタカ派と見られた主な要因は次の3つです。国債購入額の減額、カナダ経済見通しの改善、そして政策金利引き上げ時期の前倒しを示唆したことです。

1つ目の要因は国債購入金額の縮小(テーパリング)です。米国や日本など先進国から一部新興国まで、金融緩和政策として採用されている国債購入ですが、カナダは他の国に先駆けテーパリングを決定しました。

もっとも、カナダ中銀は20年10月に購入額を週次50億加ドルから40億加ドルに引き下げています。ただこの時は長期債へ購入をシフトさせており、その意図をテクニカルな要因と説明しています。市場でも実質的なイールドカーブコントロールといった受け止め方も見られました。その意味で今回は「純粋」なテーパリングとなる模様です。

2つ目の要因であるカナダ中銀の経済見通しについては、カナダ中銀の21年のカナダ経済の成長率見通しが6.5%へと大幅に引き上げられたことなどに示されています(図表2参照)。カナダ中銀は金融政策レポートで上方修正の理由として交易条件の改善、追加財政政策、足元では新型コロナウイルスの感染再拡大が懸念されるものの、ワクチン接種の拡大や経済再開などによる年後半の消費者マインド改善などをあげています。一方、21年のインフレ率予想は2.3%と、前回の1.6%から上方修正しています。カナダ中銀はインフレ率上昇は一時的要因によると説明しています。

カナダ中銀が経済見通しを改善させる中、今回最も意外と市場が受け止めたのは政策金利引き上げ想定時期の前倒しです。1月時点の声明では、その時期を23年としていましたが、今回の声明では想定される利上げ時期が22年後半と読み取れる内容となっています。テーパリングについては市場でも、ある程度想定していた面もある一方で、政策金利のフォワードガイダンス(将来の政策方針)の変更はやや意外感を持って受け止められた可能性が考えられます。

なお、カナダの隣国米国でも、テーパリング開始や、利上げ時期について様々な思惑があります。最初のステップは恐らくテーパリングの検討開始の示唆となる見込みですが、米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長が時期尚早との姿勢を示していることもあり、米国市場はカナダ中銀の決定に反応は限定的でした。ただ、米国経済も中身は異なるものの数字は改善しており、経済データの点検は怠れないと考えています。


梅澤 利文
ピクテ・ジャパン株式会社
ストラテジスト

日系証券会社のシステム開発部門を経て、外資系運用会社で債券運用、仕組債の組み入れと評価、オルタナティブ投資等を担当。運用経験通算15年超。ピクテでは、ストラテジストとして高度な分析と海外投資部門との連携による投資戦略情報に基づき、マクロ経済、金融市場を中心とした幅広い分野で情報提供を行っている。経済レポート「今日のヘッドライン」を執筆、日々配信中。CFA協会認定証券アナリスト、日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)


●当資料はピクテ・ジャパン株式会社が作成した資料であり、特定の商品の勧誘や売買の推奨等を目的としたものではなく、また特定の銘柄および市場の推奨やその価格動向を示唆するものでもありません。
●運用による損益は、すべて投資者の皆さまに帰属します。
●当資料に記載された過去の実績は、将来の成果等を示唆あるいは保証するものではありません。
●当資料は信頼できると考えられる情報に基づき作成されていますが、その正確性、完全性、使用目的への適合性を保証するものではありません。
●当資料中に示された情報等は、作成日現在のものであり、事前の連絡なしに変更されることがあります。
●投資信託は預金等ではなく元本および利回りの保証はありません。
●投資信託は、預金や保険契約と異なり、預金保険機構・保険契約者保護機構の保護の対象ではありません。
●登録金融機関でご購入いただいた投資信託は、投資者保護基金の対象とはなりません。
●当資料に掲載されているいかなる情報も、法務、会計、税務、経営、投資その他に係る助言を構成するものではありません。

手数料およびリスクについてはこちら



関連記事


FOMC:市場予想通りの利下げながら全体にタカ派

ECB:声明文はハト派ながら会見はタカ派も匂わす

11月の米CPI、市場予想通りの裏側にある注意点

11月の米雇用統計、労働市場の正常化を示唆

米求人件数とADP雇用報告にみる労働市場の現状

韓国「非常戒厳」宣言と市場の反応