- Article Title
- さらなる著しい進展には至らなかった6月の米雇用統計
6月の米雇用統計で非農業部門就業者数は前月比が85万人と市場予想を上回りましたが、発表があった2日の米国市場では株式市場が上昇し、債券市場で利回りが低下(価格は上昇)しました。雇用市場の回復は米連邦準備制度理事会(FRB)が金融引締めを急がせるほどではなかったとの見方が優勢となったことなどによります。
米6月雇用統計:非農業部門就業者数は市場予想を上回り、回復傾向を維持
米労働省が2021年7月2日に発表した6月の米雇用統計で非農業部門就業者数は前月比85万人増と、市場予想の72万人増、前月の58.3万人増(速報値55.9万人増から上方修正)を上回りました(図表1参照)。
家計調査に基づく失業率は5.9%と、市場予想の5.6%、前月の5.8%を上回りました。平均時給は前月比0.3%増と、市場予想に一致し、前月の0.4%増を下回りました。
どこに注目すべきか:就業者数、政府部門、U6失業率、労働参加率
6月の米雇用統計で非農業部門就業者数は前月比が85万人と市場予想を上回りましたが、発表があった2日の米国市場では株式市場が上昇し、債券市場で利回りが低下(価格は上昇)しました。雇用市場の回復は米連邦準備制度理事会(FRB)が金融引締めを急がせるほどではなかったとの見方が優勢となったことなどによります。
前月比85万人となった6月の非農業部門就業者数は昨年8月以来の水準となるなど、全般的な雇用市場の回復傾向が確認できるなか、FRBが金融引き締めを前倒しさせるほどではないと判断した理由は次の通りです。
まず、非農業部門就業者数を市場予想の約72万人より13万人程度押し上げた要因として、政府部門が前月比18.8万人増と堅調であったことです。なお、政府部門で増えたセクターを見ると教育関連(連邦政府が前月比で約7.5万人、地方政府が約15.5万人)が増加しています。
次に、雇用が増えた部門に注目すると飲食業などを含んだ娯楽部門や(図表1参照)、他には運輸部門など新型コロナウイルスに関連する特定の部門による増加という面が見られます。教育・医療や、人材派遣、小売などは堅調で雇用増に幅の広がりも見られますが、製造業は上昇の勢いが6月は低下しました。
もっとも、製造業については半導体の供給不足により自動車などが生産を調整した可能性もあり、今後の展開を見守る必要があると思われます。
賃金も6月は前月比で0.3%の上昇に留まり、4月と5月の前月比の上昇率を下回りました。飲食業などの求人数は増えており、人手不足が懸念されながらも給与が抑えられています。要因は(確認は必要ですが)就職時の奨励金などで対応している可能性が考えられます。求人サイトのデータを見ると、奨励金が昨年比で急増している例が見られます。
失業率も5.9%と上昇(一般には雇用の悪化)しています。
しかしながら、6月の雇用統計は雇用の質の改善や、データの内容の確認によってはプラスに転じる要因も見られます。
例えば失業率の上昇は杓子定規な判断では雇用の悪化ですが、新たな職場を自発的に求めることから、雇用市場の活況を示す自発的失業率が急上昇しています。また、全体の労働参加率は61.6%と前月と同じでしたが、女性の労働参加率は57.5%と前月から0.1%改善しました(図表2参照)。学校の再開などにより、今まで家庭の事情で復職を見送っていた人たちが雇用市場に回帰した可能性が考えられます。また、経済的理由などによりパートタイムを選択している人を失業者として算出するU6失業率は6月が9.8%と前月の10.2%から0.4%低下し、10%を下回るなど前向きな動きも見られます。
6月の米雇用統計は雇用市場の回復を示唆する内容で、特に質の点で改善が見られます。ただ就業者数は新型コロナ前のピーク(20年2月)に比べ676.4万人低い水準です。米金融当局は雇用データを様々な角度から分析した後に正常化の準備を開始すると見られ、それはもう少し先となりそうです。
当資料をご利用にあたっての注意事項等
●当資料はピクテ・ジャパン株式会社が作成した資料であり、特定の商品の勧誘や売買の推奨等を目的としたものではなく、また特定の銘柄および市場の推奨やその価格動向を示唆するものでもありません。
●運用による損益は、すべて投資者の皆さまに帰属します。
●当資料に記載された過去の実績は、将来の成果等を示唆あるいは保証するものではありません。
●当資料は信頼できると考えられる情報に基づき作成されていますが、その正確性、完全性、使用目的への適合性を保証するものではありません。
●当資料中に示された情報等は、作成日現在のものであり、事前の連絡なしに変更されることがあります。
●投資信託は預金等ではなく元本および利回りの保証はありません。
●投資信託は、預金や保険契約と異なり、預金保険機構・保険契約者保護機構の保護の対象ではありません。
●登録金融機関でご購入いただいた投資信託は、投資者保護基金の対象とはなりません。
●当資料に掲載されているいかなる情報も、法務、会計、税務、経営、投資その他に係る助言を構成するものではありません。