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11月のFOMC、前のめりは許さない
梅澤 利文
2022/11/04

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概要

大幅利上げを決定した11月の米連邦公開市場委員会(FOMC)の声明文では、今後の利上げペースの減速が示唆されました。しかし記者会見でパウエル議長は利上げ停止についてまだ道半ばであることを繰り返し強調し、金融引き締め姿勢が続くことを示唆しました。利上げペース減速を示唆しながらも、しっかりと金融緩和の前のめり観測にくぎを刺した格好です。




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11月FOMC:4会合連続の大幅利上げとなるも、声明文では利上げペース減速を示唆

米連邦準備制度理事会(FRB)は2022年11月1-2日に開催した米連邦公開市場委員会(FOMC)で、4会合連続となる0.75%の利上げを決定しました。今年3月の利上げ開始前には0.0-0.25%だったフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標レンジは、今回の利上げで3.75-4.0%となりました。

声明文で、FFレートの引き上げ継続が適切と述べる一方で、将来の利上げペースを決めるにあたり、FOMCは①累積した金融引き締め、②金融政策が経済活動やインフレに影響を与える時間差、③経済・金融情勢を考慮する、と述べています。

どこに注目すべきか:FOMC、ハト派、タカ派、累積効果、到達点

11月のFOMCは声明文で今後の利上げペース減速の可能性を示唆しハト派(金融緩和を選好する傾向)的でした。一方で、依然堅調な労働市場(図表1参照)などを踏まえ、FRBのパウエル議長は記者会見で金融引き締めを緩めないタカ派(金融引き締めを選好する傾向)姿勢を示しました。巧みな組み合わせにより、今後の利上げペース減速の可能性を示唆しながらも、市場の金融緩和に対する過度な期待をけん制したように思われます。市場ベースの期待インフレ率はこれまでのところ落ち着いています(図表2参照)。

今回のFOMCではハト派、タカ派を表現するのに、それぞれ3つのキーワードを用意したと見ています。まず、ハト派については先の①~③で、利上げペースを検討するにあたり急ピッチの利上げによる、①累積効果、②時間差、③経済と金融情勢に注目するとしています。①と②は欧州中央銀行(ECB)のラガルド総裁が会見で利上げペースの減速を示唆した時と似た表現です。ECBは③の代わりにインフレ見通しを挙げているのは経済環境の違いかと思われます。FRBは③として経済と金融環境としています。FRBは利上げペース減速の条件に労働市場の過熱感の後退やインフレ率の持続的な低下を挙げていますが、9月の求人数は再び増加するなど労働市場の沈静化に金融引き締めの効果は時間がかかりそうです。その場合、引き締め過ぎで市場にひずみが生じる恐れもないわけではありません。労働市場沈静化の必要性は不変ながら、あえて幅広く経済・金融情勢を条件としたのかもしれません。

次に、今回市場に、より影響を与えたと見られるタカ派姿勢の維持は、パウエル議長が今後の金融政策のキーワードとして、(1)利上げのペース、(2)利上げの到達点、(3)到達点の金利を維持する期間、を挙げたことに示されます。仮に(1)が減速しても(2)と(3)により、しっかりタカ派姿勢を維持することを示したからです。(2)の利上げの到達点について、パウエル議長はデータから判断してFF金利の最終的な水準が従来の想定より高くなることを明確に示唆しました。

また、(3)について明確な期間は示さない一方で、利上げは「まだ道半ばである」ことを複数回繰り返し、FOMCとして「するべきことが残されている」ことも強調しています。また、「利上げの休止を考えるのは時期尚早」ということも強調しており、到達点の金利を維持する前の段階でさえまだ先ということを述べています。これらにより(3)が相当の期間維持されることを印象付けているように思われます。


今回のFOMCでは、利上げペースの減速を示唆する一方で、利上げ到達点予想の引き上げ示唆などにより、市場の金融緩和に対する前のめり観測にしっかりとくぎを刺したと見られます。利上げ幅の予測が過度に重要視される傾向から、利上げ到達点や期間に関心を拡散させることで、政策運営の懐を深くしているようにも思われます。


梅澤 利文
ピクテ・ジャパン株式会社
ストラテジスト

日系証券会社のシステム開発部門を経て、外資系運用会社で債券運用、仕組債の組み入れと評価、オルタナティブ投資等を担当。運用経験通算15年超。ピクテでは、ストラテジストとして高度な分析と海外投資部門との連携による投資戦略情報に基づき、マクロ経済、金融市場を中心とした幅広い分野で情報提供を行っている。経済レポート「今日のヘッドライン」を執筆、日々配信中。CFA協会認定証券アナリスト、日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)


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