- Article Title
- FOMC、ブラックアウト期間前の発言の振り返り
次回の米連邦公開市場委員会(FOMC)は1月31日~2月1日に開催が予定されています。市場が次回の利上げ幅を0.25%への縮小と見込む一方で、FOMCのコアメンバーは具体的な金融政策への言及に慎重です。最近のインフレのピークアウト感や景気の鈍化は十分認識しているとみられることから、時間を確保して、インフレ率の低下を確かなものとしたい意向と思われます。
FOMC参加者、ブラックアウト期間前のコメントに注目が集まる
米連邦準備制度理事会(FRB)のブレイナード副議長は2023年1月19日、シカゴでのイベントで講演しました(図表1参照)。また同日ニューヨーク(NY)連銀のウィリアムズ総裁も講演を行いました。両者とも、インフレ率は依然として高く、インフレ率が持続的ペースで2%のインフレ目標に向け鈍化するための金融引き締め継続を支持しました。
次回の米連邦公開市場委員会(FOMC)は1月31日~2月1日に開催が予定されています。今週末からFOMC参加者が金融政策について発言を控えるブラックアウト期間となります。次回FOMCを前に、金融当局からの発言に注目が集まっています。
地区連銀総裁に0.25%の利上げ支持が増えるも執行部は慎重姿勢
次回FOMCを前に、市場では0.25%の利上げを予想する声でほぼ固まっています。また、ブラックアウト期間を前にFOMC参加者の発言を振り返ると、地区連銀総裁の多くは多少ニュアンスの違いはあるにせよ、市場同様に0.25%での利上げ幅を支持する動きが広がりつつあるようです。
一方で、理事や正副議長、毎年投票権を持つNY連銀総裁などのコアのメンバーは「まだやるべき仕事がある」などの表現により金融引き締め姿勢の継続を示唆しています。連銀総裁に比べ、コアのメンバーからは次のFOMCにおける利上げ幅や、利上げの最高到達地点(ターミナルレート)など具体的な金融政策についての手掛かりは乏しかったように思われます。
講演内容から推して知るべし、ということかもしれません。そこで、ブレイナード副議長の講演内容を振り返ると、冒頭、インフレ率は高いと述べてはいますが、講演半ばでは昨年12月の雇用統計で平均時給が市場予想を下回ったことなどを指摘、インフレのピークアウト感も示唆しています。景気については金融・財政政策の引き締め(財政は縮小)などを受け23年の景気回復が鈍いと見通しを述べています。特に景気の先行きを示唆する傾向がある人材派遣サービスが低調であると指摘しています。
賃貸や持ち家を賃料に換算する帰属家賃などからなる住居費は先行き低下を見込むなど、新鮮味に欠ける内容でした。
なお、70年代に見られた賃金と物価のスパイラルについて、ブレイナード副議長は明確に今の米国ではスパイラルは見られないと説明しています。
インフレを懸念すべき要因はあるが
インフレ懸念として注意を続ける必要がある要因に労働供給不足や、期待インフレ率と輸入物価などを挙げています。コロナ禍やロシアのウクライナへの軍事侵攻後のエネルギー価格上昇が期待インフレ率の動向を不安定にしており、足元の落ち着きが持続するのか引き続き見守る必要があるとみているようです。また、ユーロ圏経済は過去の想定ほどには悲観的な景気見通しでないこと、中国のゼロコロナ政策解除後の商品価格動向などにも注意を払っているようです。
ただし、インフレ懸念要因にも目新しい材料はなく、今後の展開を見守る時間の確保を意図した発言とも思われます。
コアメンバーがやや慎重なコメントに終始するのは、すでに一部連銀総裁が利上げ幅を0.25%へ縮小する考えを表明する中、コアメンバーが同調すれば将来の金融緩和のサインと市場に先読みされることを警戒しているのかもしれません。
昨年3月のFOMCで利上げが開始される前、FRBのパウエル議長などがインフレは一過性として利上げに慎重でした。一方で、連銀総裁が先行して利上げを主張しました。今回についても、筆者は多くの連銀総裁の主張である、利上げ幅を0.25%に縮小する方向に展開するものとみています。
当資料をご利用にあたっての注意事項等
●当資料はピクテ・ジャパン株式会社が作成した資料であり、特定の商品の勧誘や売買の推奨等を目的としたものではなく、また特定の銘柄および市場の推奨やその価格動向を示唆するものでもありません。
●運用による損益は、すべて投資者の皆さまに帰属します。
●当資料に記載された過去の実績は、将来の成果等を示唆あるいは保証するものではありません。
●当資料は信頼できると考えられる情報に基づき作成されていますが、その正確性、完全性、使用目的への適合性を保証するものではありません。
●当資料中に示された情報等は、作成日現在のものであり、事前の連絡なしに変更されることがあります。
●投資信託は預金等ではなく元本および利回りの保証はありません。
●投資信託は、預金や保険契約と異なり、預金保険機構・保険契約者保護機構の保護の対象ではありません。
●登録金融機関でご購入いただいた投資信託は、投資者保護基金の対象とはなりません。
●当資料に掲載されているいかなる情報も、法務、会計、税務、経営、投資その他に係る助言を構成するものではありません。