- Article Title
- 11月の米雇用統計、労働市場の正常化を示唆
11月の米雇用統計では、非農業部門の就業者数が前月比22.7万人増と急回復したことや、平均時給が前年同月比4.0%増と堅調な伸びを示し、米労働市場の堅調さが示されました。一方で、11月の失業率は4.2%に上昇するなど気になる面はあったものの、全体としてみれば米労働市場は緩やかな鈍化にとどまると見られます。これを受け市場は12月の利下げの可能性が高まったと見ているようです。
米11月の雇用統計は前月の雇用の落ち込みが一時的だったことを示唆
米労働省が12月6日に発表した11月の米雇用統計によると、非農業部門の就業者数は前月比で22.7万人増と、市場予想の22万人増、10月の3.6万人増(速報値の1.2万人増から上方修正)を上回りました(図表1参照)。11月の就業者数が急回復したことで10月の落ち込みはハリケーンなど一時的要因だったことが示されました。
11月の失業率は4.2%と、市場予想、前月(共に4.1%)を上回りました。なお、失業率は災害の影響を受けにくい集計方法と見られています。
平均時給は前年同月比で4.0%上昇と、前月と一致するも、市場予想の3.9%上昇を上回りました。前月比では0.4%上昇と、前月に一致するも市場予想の0.3%上昇を上回りました。
11月の部門別就業者数に10月のストライキや悪天候の影響が示された
11月の米雇用統計は、10月の就業者数の伸びが落ち込んだのは一時的だったことが示唆されるなど堅調な面がある一方で、失業率の上昇など一部に弱さも見られました。しかし、全体としては米労働市場の正常化が示されたと見ています。
非農業部門の就業者数の伸びを部門別にみると、10月の就業者数急落の背景であった悪天候とストライキで影響を受けたと思われる部門に回復が見られました(図表2参照)。天候要因としては娯楽・宿泊や、図表にはありませんが建設業も11月の就業者数の伸びが前月を上回りました。
ストライキは大手航空機メーカーなどで行われ就業者数の下押し要因でしたが、メーカーが含まれる製造業はストライキの終了を反映して伸びが改善しました。ただし、ストライキの影響がどの程度なのかについて、米労働省の声明文には詳細な説明はなく、今後も注意が必要です。
一方、悪天候などの影響が比較的小さいと見られる教育・医療や政府部門は前月に続き堅調な伸びを確保しました。
悪天候やストライキの影響を均すため3か月移動平均でみると、11月の非農業部門の就業者数の伸びは17万人超と、米労働市場は堅調であることを示唆する数字と見られます。
次に平均時給は前月比、前年同月比の両方で市場予想を上回り、堅調な伸びでした。米国の個人消費はGDP(国内総生産)で堅調な伸びが示されましたが、賃金は下支え要因の1つと見られます。
ただし、部門別にみると、賃金の伸びとインフレとの相関が高いとみられるサービス部門の伸びは前月比0.4%上昇と前月を下回りました(図表3参照)。またサービスに含まれる小売部門の伸びは0.8%上昇と例外的に高く底上げされている可能性もありそうです。
失業率は4.2%と前月を上回り労働参加率も低下しているため注意が必要
一方で、11月の失業率は4.2%(4.246%)と、市場予想、前月の4.1%を上回り、米労働市場の弱さの一面を示しています(図表4参照)。失業率を小数点以下3桁まで見ると、ほぼ4.3%で、8月月初に発表され市場に景気後退懸念を引き起こした7月の失業率4.3%(4.253%)にほぼ並ぶ水準でした。もっとも、他の経済指標が堅調なことや、8月のイベントを通じた学習効果もあり、市場の反応は冷静です。他の経済指標としては新規失業保険申請件数や、米国雇用動態調査(JOLTS)などがあり、それらは米労働市場の安定化を示唆しており、悪化とは言い難い状況です。例えば新規失業保険申請件数は足元では20万件を小幅上回る程度で推移しており、安定さを示しています。
ただし、11月の失業率では労働市場参入の活況度合いを示す労働参加率が低下(悪化)した中で失業率が上昇した点は気がかりです。仮にこのような傾向が続くとしたら、米労働市場にとっては注意信号となる可能性もあります。
それでも、11月の米雇用統計は全体的には過熱感は後退する一方で、概ね堅調な水準で推移しておりソフトランディング・シナリオと整合的です。そしてこの結果は米連邦準備制度理事会(FRB)の12月の利下げ観測をより確かなものとしたようです。先物市場で利下げの織り込み度合いを見ると、11月末には65%程度であった12月の利下げ確率は、雇用統計後は85%程度に高まりました。今週発表される11月の消費者物価指数(CPI)が想定外とならない限り、12月に利下げが行われる可能性は高そうです。
当資料をご利用にあたっての注意事項等
●当資料はピクテ・ジャパン株式会社が作成した資料であり、特定の商品の勧誘や売買の推奨等を目的としたものではなく、また特定の銘柄および市場の推奨やその価格動向を示唆するものでもありません。
●運用による損益は、すべて投資者の皆さまに帰属します。
●当資料に記載された過去の実績は、将来の成果等を示唆あるいは保証するものではありません。
●当資料は信頼できると考えられる情報に基づき作成されていますが、その正確性、完全性、使用目的への適合性を保証するものではありません。
●当資料中に示された情報等は、作成日現在のものであり、事前の連絡なしに変更されることがあります。
●投資信託は預金等ではなく元本および利回りの保証はありません。
●投資信託は、預金や保険契約と異なり、預金保険機構・保険契約者保護機構の保護の対象ではありません。
●登録金融機関でご購入いただいた投資信託は、投資者保護基金の対象とはなりません。
●当資料に掲載されているいかなる情報も、法務、会計、税務、経営、投資その他に係る助言を構成するものではありません。