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- 1月の米雇用統計、不確実性が多く判断しづらい
米労働省が発表した1月の米雇用統計で、非農業部門の就業者数は市場予想を下回った。しかし、過去2ヵ月のデータは大幅に上方修正され、失業率も低水準であるなど、米労働市場の底堅さを示唆する結果だった。ただし、1月の雇用統計は悪天候や山火事の影響が見られた。平均時給などはこの影響で押し上げられた可能性がある。概ね底堅い結果ではあったが、判断には慎重さも求められよう。
1月の米雇用統計で非農業部門の就業者数は市場予想を下回った
米労働省が2月7日に公表した1月の米雇用統計によると、非農業部門の就業者数は前月から14.3万人増と市場予想の17.5万人増を下回った(図表1参照)。就業者の伸びは過去2ヵ月分について、24年11月が21.2万人増から26.1万人増に、12月は25.6万人増から30.7万人増にそれぞれ上方修正された。1月の就業者数の伸びは市場予想を下回ったが、過去の上方修正分を含めると米労働市場の底堅さがうかがえる。
なお、年次基準の改定に伴い、昨年の雇用増加は月平均16.6万人と改定前の同18.6万人から下方修正された。労働市場はこれまで見てきた数字より弱いことが示されたが、下方修正は想定の範囲内で、市場への影響は限定的だった。
米雇用統計は失業率が4.0%となるなど労働市場の底堅さが示された
1月の米雇用統計で就業者数の伸びを単月で見ると鈍化したものの、3ヵ月平均で見るとみると底堅かった。また失業率や賃金などで米労働市場の底堅さが示された。ただし、1月のデータには悪天候等の影響もあり、解釈には慎重さが求められる。この点に注意しながら主な指標を振り返ろう。
就業者数の伸びを部門別にみると、「教育・医療」や「政府」など、最近までの採用の伸びを支えてきた部門は1月も伸びを確保した。また「小売」も底堅かった。一方、「娯楽・宿泊」は1月に就業者数の伸びが急落した。米国は1月前半寒波に襲われたうえ、未曽有の災害となったカリフォルニア州ロサンゼルス近郊の山火事も、「娯楽・宿泊」の雇用に影響した可能性があろう。そこで、悪天候等による休業者数をみると1月は57.3万人だった(図表3参照)。米労働省は声明文で雇用に「認識可能な影響」を与えなかったと指摘してはいるが、60万人近い雇用に影響があったことは事実だろう。今回の山火事は過去最大級の規模で、災害からの1日も早い復興を祈るばかりだ。
次に、失業率は1月が4.0%と市場予想の4.1%を下回った。なお、1月の失業率は年初の人口統計推計の修正を反映しており、前月との比較で強弱を語るべきではないが、市場予想との比較や、雇用統計とは別の求人件数統計で解雇者数をみると、レイオフは抑制されている。他の指標を組み合わせてみると、1月の失業率は米労働市場の底堅さを示唆していると考えられよう。
もっとも、職探しの困難さを示唆する定性的な調査には気になるものもある。職が見つけにくくなっているのだ。米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長はこの点を指摘したことがある。失業率は米労働市場の底堅さを示唆しているとしても、同時に幅広く他のデータを見る必要がありそうだ。
悪天候や山火事の影響もあり、データの判断には慎重さが求められる
1月の米雇用統計の発表の瞬間、端末のスクリーン上に現れたデータで誰もが目を引かれたのは平均時給ではないだろうか(図表4参照)。平均時給は前月比0.5%上昇と、市場予想の0.3%上昇を大幅に上回った。前年同月比も市場予想の3.8%上昇を上回った。しかし、1月の平均時給が急上昇した背景には悪天候や山火事を受け労働時間が短くなったことにより時間当たりの賃金が高まった可能性もありそうだ。週平均労働時間を見ると、1月は34.1時間と前月を大幅に下回った(図表5参照)。米労働市場の過熱感が後退し、週平均労働時間は足元34.3時間程度で安定していた。今回の労働時間の減少は天候や災害が理由であろう。労働時間の変化が平均時給にどの程度影響を与えたかを判断するため、今後のデータの推移を見守る必要があるだろう。
1月の米雇用統計を受けた当局からの発言は、現時点では少数に限られる。しかし、1月のデータはノイズも多いことから、雇用データだけで踏み込んだ判断をすることは避けると筆者は見ている。金融政策は「急ぐ必要はない」方針のもと、目先(3月会合)は据え置きが基本路線となりそうだ。
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