もっと知りたいメガトレンド





サステナブルな建築と土を使わない農業

世界初の超高層農園タワー「farm-scraper」

Share

Line

LinkedIn

URLをコピー

世界初の超高層ビル型農業施設「ファームスクレーパー(farm-scraper)」は、高層での屋内栽培などを行う垂直農法と呼ばれる農作法に新たな可能性を開きます。



1. 食料自給が求められる都市

世界では、約44億人が都市に住み、その人数は日々増え続けています。ただ、それだけの人々が暮らすには問題があります。まず、従来の建築方式は環境を破壊しており、土地の重要性はますます高まっています。さらに大きな課題は、増加する都市住民に、どう栄養豊富な食料を供給し続けるかということです。

一つの解決策は、都市自体がもっと食料を自給できるようになることです。そうすれば、フードマイレージ(食料の輸送量に輸送距離を掛け合わせた指標)を減らし、都市の二酸化炭素排出量を減少させることができます。しかし、そのためには、都市の中で農地を増やす方法を見つけなければなりません。

「屋上に農園がある建物は世界中にありますが、問題はその規模が非常に小さいことです。あれでは一家族分の食料をまかなうのが精一杯でしょう」。CRA(Carlo Ratti Associati)の共同創立者であり、MIT(マサチューセッツ工科大学)Senseable City Labのディレクターでもあるカルロ・ラッティ氏は言います。「新たな水耕栽培技術を活用し、屋内で大量生産を可能にする方法はあるのでしょうか?」



2. 超高層農園タワーにおける先進農法

この問いに挑戦しているのが、CRAが中国南部の深圳市に建設したJian Mu Towerという最新プロジェクトです。高さ約218メートル、51階建てのこのタワーは、約1万平方メートルの食料生産スペースを持ち、「垂直農法」に全く新しい意味を与えました。

世界初の「ファームスクレーパー」と呼ばれるこのビルは、年間27万kgの新鮮な野菜などを生産することが可能です。果物、野菜、ハーブ、サラダ菜などの栽培には、「エアロポニックス」と呼ばれる土を使わない先進的な農法が用いられます。栽培される植物の根は土の中ではなく、十分な酸素が確保された空気中で育てられます。水分や栄養分は細かい霧状で噴射され、その量はAIがサポートする「バーチャル農学者」の手によって常に最適化されています。

従来の水耕栽培では、養分や酸素を含んだ水中で根を育てるため管理が困難でしたが、このエアロポニックスはその点が改良されています。

気候変動や集約農業によって耕作可能な土壌が急速に失われている現在、世界人口の増加に対応するためには、土を使わない農業が鍵を握ると考えられています。毎年、表土の1%が侵食によって失われていると言われていますが、これは主に農業が原因です1。国連によると、現在のレベルの侵食が続けば、60年以内に世界の表土が枯渇すると言われています。

「ファームスクレーパー」の建物内で育つ植物は、超高層ビルの環境負荷軽減に貢献し、環境に優しいビルの新たなあり方を示してくれるかもしれません。建築物は、その建設と運営を通じて、世界のエネルギー使用量の36%を占めると同時に、エネルギー関連の二酸化炭素排出量の約40%を占める要因でもあります。つまり、建築分野における環境負荷の軽減は、気候変動との戦いにおいて避けては通れない課題なのです。



3. 超高層農園タワーでは高層ビルの遮光も可能に

都市部の超高層タワーが抱える問題として、太陽光をどう遮るかがあります。

「高い建物や超高層ビルの場合、遮光設備が必要です」とラッティ氏は指摘します。

都市部では、ガラス張りの高層ビルの外壁に太陽光が反射することがよくあります。これはオーバーヒートの原因となり、大量の電力を空調設備に消費することを余儀なくされます。また、ビル内部でも、コンピュータのスクリーンに映り込みが生じると、利用者の不満につながります。

一方「ファームスクレーパー」なら、植物が自らの成長のために太陽光を吸収してくれるだけでなく、同じ建物内で人が集まるオフィスやショップに日陰をもたらす効果も期待できます。

大規模な建物になると、このようなデザインは大きな違いをもたらします。調査によると、都市の気温上昇は、アスファルトやコンクリートなどの熱をため込む舗装材の普及や、植物の不足によって生じます。そしてそれは巡り巡って、疾病率や死亡率の上昇へとつながる可能性があります2

植物が吸収してくれるのは太陽光だけではありません。空気中の二酸化炭素濃度を下げ、気候変動の影響を軽減するには、植林により緑を増やすことも重要です。

「1年で約4万人分の食料と約2万kgの二酸化炭素を吸収することができます」とラッティ氏は言います。「これは皆がWin-Winになれるものなのです」。

 

[1] "Dirt: The Erosion of Civilizations", D. R. Montgomery, 2012
[2] "Global urban population exposure to extreme heat", C. Tuholske et al, 2021



対談者
カルロ・ラッティ

建築家、兼エンジニア。自身が指揮するSenseable City Labがあるマサチューセッツ工科大学(MIT)にて教鞭をとる。国際的なデザイン&イノベーションオフィスであるCarlo Ratti Associatiの共同創立者。

トリノ工科大学とパリの理工系グラン・ゼコール(高等専門教育機関)である国立土木学校を卒業後、英国ケンブリッジ大学で修士号と博士号を取得。この10年間は「スマートシティ」をテーマに世界各地で講演を行い、作品はヴェネチア・ビエンナーレ、ニューヨーク近代美術館(MOMA)、ロンドン科学博物館、バルセロナ・デザイン・ミュージアムなどに展示された。Digital Water Pavilion(デジタル・ウォーター・パビリオン)とCopenhagen Wheel(コペンハーゲン・ホイール)の2つのプロジェクトは、『TIME』誌の「Best Inventions of the Year(各年の最も優れた発明品)」に選出。また、『BLUEPRINT』誌の「25 People who will Change the World of Design(デザインの世界を変える25人)」や、『WIRED』誌の「Smart List: 50 people who will change the world(スマートリスト:世界を変える50人)」にも選ばれた。2015年のミラノ万博ではFuture Food Districtのキュレーターを務め、現在は世界経済フォーラムのGlobal Future Council on Cities and Urbanizationの共同議長を務める。



本ページは2021年11月にピクテ・アセット・マネジメントが作成した記事をピクテ・ジャパン株式会社が翻訳・編集したものです。




関連する投資テーマ



もっと知りたいメガトレンド|最新の記事


よりスマートでグリーンな建物のための技術ソリューション

投資家と企業が直面する自然関連リスク─ミツバチに寄生するダニから学ぶ教訓



関連するオンライン専用ファンド


投資リスク、手続き・手数料等については、ページ下部に表示されているファンド詳細ページのリンクからご確認ください。




未来を創る企業に投資する

iTrustオールメガトレンド




スマートシティ関連株式に投資する

iTrustスマートシティ



お申込みにあたっては、交付目論見書等を必ずご確認の上、ご自身でご判断下さい。
投資リスク、手続き・手数料等については以下の各ファンド詳細ページの投資信託説明書(交付目論見書)をご確認ください。

iTrustオールメガトレンド

iTrustスマートシティ

投資リスク

基準価額の変動要因

  • ファンドは、実質的に株式等に投資しますので、ファンドの基準価額は、実質的に組入れている株式の価格変動等(外国証券には為替変動リスクもあります。)により変動し、下落する場合があります。
  • したがって、投資者の皆様の投資元本が保証されているものではなく、基準価額の下落により、損失を被り、投資元本を割り込むことがあります。ファンドの運用による損益はすべて投資者の皆さまに帰属します。また、投資信託は預貯金と異なります。

株式投資リスク(価格変動リスク、信用リスク)

  • ファンドは、実質的に株式に投資しますので、ファンドの基準価額は、実質的に組入れている株式の価格変動の影響を受けます。
  • 株式の価格は、政治経済情勢、発行企業の業績・信用状況、市場の需給等を反映して変動し、短期的または長期的に大きく下落することがあります。

為替変動リスク

  • ファンドは、実質的に外貨建資産に投資するため、対円との為替変動リスクがあります。
  • 円高局面は基準価額の下落要因、円安局面は基準価額の上昇要因となります。


基準価額の変動要因は上記に限定されるものではありません。

投資信託に係る費用について

投資信託に係る費用について

(1)お申込時に直接ご負担いただく費用:ありません。

(2)ご解約時に直接ご負担いただく費用:ありません。

(3)投資信託の保有期間中に間接的にご負担いただく費用 :

  • 運用管理費用(信託報酬) :毎日、信託財産の純資産総額に年0.6776%(税抜0.616%)の率を乗じて得た額とします。
  • 実質的な負担(投資先ファンドの信託報酬を含む実質的な負担) :上限年率1.2676%(税込)

(4)その他費用・手数料等:

信託事務に要する諸費用(信託財産の純資産総額の年率0.055%(税抜0.05%)相当を上限とした額)が毎日計上されます。
その他、組入有価証券の売買委託手数料等、外国における資産の保管等に要する費用等が、信託財産から支払われます。(これらの費用等は運用状況等により変動するため、事前に料率・上限額等を記載することはできません)。また、投資先ファンドにおいて、信託財産に課される税金、弁護士への報酬、監査費用、有価証券等の売買に係る手数料等の費用が当該投資先ファンドの信託財産から支払われることがあります。詳しくは、目論見書、契約締結前交付書面等でご確認ください。

当該費用の合計額については、投資者の皆さまがファンドを保有される期間等に応じて異なりますので、表示することができません。


個別の銘柄・企業については、あくまでも参考であり、その銘柄・企業の売買を推奨するものではありません。


●当資料はピクテ・グループの海外拠点からの情報提供に基づき、ピクテ・ジャパン株式会社が翻訳・編集し、作成した資料であり、特定の商品の勧誘や売買の推奨等を目的としたものではなく、また特定の銘柄および市場の推奨やその価格動向を示唆するものでもありません。
●運用による損益は、すべて投資者の皆さまに帰属します。
●当資料に記載された過去の実績は、将来の成果等を示唆あるいは保証するものではありません。
●当資料は信頼できると考えられる情報に基づき作成されていますが、その正確性、完全性、使用目的への適合性を保証するものではありません。
●当資料中に示された情報等は、作成日現在のものであり、事前の連絡なしに変更されることがあります。
●投資信託は預金等ではなく元本および利回りの保証はありません。
●投資信託は、預金や保険契約と異なり、預金保険機構・保険契約者保護機構の保護の対象ではありません。
●登録金融機関でご購入いただいた投資信託は、投資者保護基金の対象とはなりません。
●当資料に掲載されているいかなる情報も、法務、会計、税務、経営、投資その他に係る助言を構成するものではありません。

手数料およびリスクについてはこちら