もっと知りたいメガトレンド





森林火災防止に向けたテクノロジーの役割

人工知能(AI)を活用した森林火災との闘い

Share

Line

LinkedIn

URLをコピー

森林火災は、生物多様性の損失や地域社会(コミュニティ)の破壊の原因であり、地球温暖化を悪化させています。こうした状況を解決する手段の一つになると期待されるのが人工知能(AI)です。


森林火災は地球の温暖化に深刻な影響を及ぼしています。欧州連合(EU)の地球観測プログラム「コペルニクス(大気監視サービス)」の報告によると、森林火災は、約17億6千万トンの二酸化炭素(CO2)を大気中に放出していますが、これは、ドイツ全土で一年間に排出されるCO2の2倍を超える量にあたります。森林火災は、野生生物や生物多様性にも甚大な影響を及ぼす他、コミュニティを破壊し、経済成長を阻害しています。

森林火災の最も一般的な原因は、送電線が樹木に接触して発火することです。電力会社は多くの場合、全長数千キロにも及ぶ架空送電線を、人が住んでいない地域の原生林を通して設置していますが、送電線に接触した樹木が倒れる場所を予測することは容易ではありません。



こうした状況の解決に貢献しているのが、ローロフ・ピータース(Roelof Pieters)です。ピータース氏は、森林火災や停電を防ぐためにAIと衛星データを使い地球上の全ての植生を分析する、オーバーストーリー(Overstory)社の共同創業者であり、最高技術責任者(CTO)です。ピータース氏によれば、同社の使命は、「世界の自然資源の全体像をリアルタイムで把握すること」であり、また、「同社が提供する情報にアクセスした世界中の誰もが、気候危機やそれに関連する環境問題等、今日、私達が直面する課題を解決するために、より的確な判断を下せること」です。

オーバーストーリーの使命を実現するのは、かなりの難題です。同社が拠点を置く、アムステルダムとボストンに勤務するピータース氏と彼の同僚は、機械学習と人間の専門知識を組み合わせ、主に公益事業を展開する顧客のために目標の実現を目指しています。

大手電力会社の送電線は、都市や森林の上空を通過し、様々な植生の中を通って設置されています。長い送電線上で起こっている変化やリスクを全て監視することはこれまで不可能でしたが、ピータース氏によると、「衛星画像を使えば、地上の極めて詳細な状況を把握することが可能」であり、「地球上の様々な場所を上空から見ることができるので、発生している事象やその規模も伝えられるのです。また、ドローンやヘリコプターとは違いアクセスに制約がないため、世界中どこへでも行き、分析を行うことができるからです。」

AIのみで解決できる課題は全体の80%程度に留まるため、残りの20%程度については、樹木の専門家や現場の状況に詳しいメンバーで構成されるチームがデータを調べ、リスクに晒されている場所に実際に足を運んで分析を行います。

オーバーストーリーは世界各地に顧客を持っています。米国に拠点を置く大手電力会社は、オーバーストーリーの分析精度が極めて高いおかげで、停電を15%、樹木の伐採を18%減らすことができたと試算しています。

インフラの整備や運営に係るセクターも恩恵を受けています。鉄道会社や道路会社は、植生の変化が運行ルートに及ぼす影響や、インフラ施設の近くに生えている健全な樹木が地滑りや落石の防止に役立つかどうかを知りたいと考えています。



「オーバーストーリーは、森の健康を理解し持続可能な伐採に取り組んでいる、北欧諸国の企業と共同事業を行う多くの機会を得ましたが、持続可能な伐採は、健全な森をつくり、その影響を追跡できるだけでなく、森林の木材生産量を単位面積当たりの収入において増やしています」。

このような分析は、保険会社や急成長を遂げつつある炭素クレジット業界にとっても貴重です。透明性が低く、個々の商品の効果が疑問視されるなど、論争の的となっている炭素クレジット業界は、オーバーストーリーが他社に先駆けて開発したAIと人間の混合解析モデルを利用する可能性が大きいと考えます。

ピータース氏によれば、木を植え、炭素クレジットを計算するだけでは問題の解決につながらないことを、企業は理解しています。植樹の方法を決めるために必要な情報を入手するだけで、優に10年を要し、(木の種類や植える場所にもよりますが)木が育つまでに20~30年が必要です。そうしてようやく、炭素排出量が減り始める段階に到達するのです。樹木は生物多様性への貢献、水分の涵養・保持、浸食防止等、様々な恩恵をもたらしますが、新しい木を植えることよりも、伐採しないことや森林火災を回避することに、これまで以上に注力すべきかもしれません。


  • 森林火災が特に発生しやすい「火災多発期」は、1980年代以降、世界平均で27%長期化しており、世界経済フォーラム」の分析によると、アマゾン川流域、地中海、北米の一部で、特に顕著です。こうした傾向は今後も継続が予想されます。
  • 各国政府は森林火災の防止および緩和のための投資の増額を検討しており、米国ではバイデン政権の優先課題の一つになっています。
  • 産業界では、公共セクターや保険セクターが森林火災リスクの増加によって特に大きな影響を被っています。カリフォルニア州に拠点を置く公益大手のPG&Eが2019年に破産申請を行った原因は、火災による負債の増加です。

対談者
ローロフ・ピータース

人口知能(AI)、衛星画像、コンピューターを組合わせて、森林のインテリジェントシステムなどを展開する会社Overstoryの共同創業者兼最高技術責任者(CTO)。また、Creative.aiの共同創業者兼最高経営責任者(CEO)で、持続可能なソリューションを提供するコンサルタント会社Sunshine Labの共同創業者でもある。社会人類学の修士号を取得後、ストックホルムの王立工科大学(KTH)で理論計算機科学の博士候補資格者となり、マルチモーダルAI、生成モデル、クリエイティブAIなどの分野に注力。スウェーデンのAIネットワーク「ストックホルムAI」の創設者でもある。



本ページは2023年3月にピクテ・アセット・マネジメントが作成した記事をピクテ・ジャパン株式会社が翻訳・編集したものです。



関連する投資テーマ



もっと知りたいメガトレンド|最新の記事


よりスマートでグリーンな建物のための技術ソリューション

投資家と企業が直面する自然関連リスク─ミツバチに寄生するダニから学ぶ教訓



関連するオンライン専用ファンド


投資リスク、手続き・手数料等については、ページ下部に表示されているファンド詳細ページのリンクからご確認ください。




未来を創る企業に投資する

iTrustオールメガトレンド




先進国の公益企業が発行する株式に投資する

iTrustインカム株式




世界の環境関連企業の株式に投資する

iTrustエコイノベーション




スマートシティ関連株式に投資する

iTrustスマートシティ




先進国の公益企業が発行する株式に投資する

iTrustロボ




バイオ医薬品関連の株式に投資する

iTrustバイオ




世界のブランド企業に投資する

iTrustプレミアムブランド




世界のセキュリティ関連株式に投資する

iTrustセキュリティ




木材関連企業の株式に投資する

iTrustティンバー




お申込みにあたっては、交付目論見書等を必ずご確認の上、ご自身でご判断下さい。
投資リスク、手続き・手数料等については以下の各ファンド詳細ページの投資信託説明書(交付目論見書)をご確認ください。

iTrustオールメガトレンド

iTrustインカム株式(ヘッジあり)
iTrustインカム株式(ヘッジなし)

iTrustエコイノベーション

iTrustスマートシティ

iTrustロボ

iTrustバイオ

iTrustプレミアム・ブランド

iTrustセキュリティ

iTrustティンバー

投資リスク

基準価額の変動要因

  • ファンドは、実質的に株式等に投資しますので、ファンドの基準価額は、実質的に組入れている株式の価格変動等(外国証券には為替変動リスクもあります。)により変動し、下落する場合があります。
  • したがって、投資者の皆様の投資元本が保証されているものではなく、基準価額の下落により、損失を被り、投資元本を割り込むことがあります。ファンドの運用による損益はすべて投資者の皆さまに帰属します。また、投資信託は預貯金と異なります。

株式投資リスク(価格変動リスク、信用リスク)

  • ファンドは、実質的に株式に投資しますので、ファンドの基準価額は、実質的に組入れている株式の価格変動の影響を受けます。
  • 株式の価格は、政治経済情勢、発行企業の業績・信用状況、市場の需給等を反映して変動し、短期的または長期的に大きく下落することがあります。

為替変動リスク

  • ファンドは、実質的に外貨建資産に投資するため、対円との為替変動リスクがあります。
  • 円高局面は基準価額の下落要因、円安局面は基準価額の上昇要因となります。


基準価額の変動要因は上記に限定されるものではありません。

投資信託に係る費用について

投資信託に係る費用について

(1)お申込時に直接ご負担いただく費用:ありません。

(2)ご解約時に直接ご負担いただく費用:ありません。

(3)投資信託の保有期間中に間接的にご負担いただく費用 :

  • 運用管理費用(信託報酬) :毎日、信託財産の純資産総額に年0.6776%(税抜0.616%)の率を乗じて得た額とします。
  • 実質的な負担(投資先ファンドの信託報酬を含む実質的な負担) :上限年率1.2676%(税込)

(4)その他費用・手数料等:

信託事務に要する諸費用(信託財産の純資産総額の年率0.055%(税抜0.05%)相当を上限とした額)が毎日計上されます。
その他、組入有価証券の売買委託手数料等、外国における資産の保管等に要する費用等が、信託財産から支払われます。(これらの費用等は運用状況等により変動するため、事前に料率・上限額等を記載することはできません)。また、投資先ファンドにおいて、信託財産に課される税金、弁護士への報酬、監査費用、有価証券等の売買に係る手数料等の費用が当該投資先ファンドの信託財産から支払われることがあります。詳しくは、目論見書、契約締結前交付書面等でご確認ください。

当該費用の合計額については、投資者の皆さまがファンドを保有される期間等に応じて異なりますので、表示することができません。


個別の銘柄・企業については、あくまでも参考であり、その銘柄・企業の売買を推奨するものではありません。


●当資料はピクテ・グループの海外拠点からの情報提供に基づき、ピクテ・ジャパン株式会社が翻訳・編集し、作成した資料であり、特定の商品の勧誘や売買の推奨等を目的としたものではなく、また特定の銘柄および市場の推奨やその価格動向を示唆するものでもありません。
●運用による損益は、すべて投資者の皆さまに帰属します。
●当資料に記載された過去の実績は、将来の成果等を示唆あるいは保証するものではありません。
●当資料は信頼できると考えられる情報に基づき作成されていますが、その正確性、完全性、使用目的への適合性を保証するものではありません。
●当資料中に示された情報等は、作成日現在のものであり、事前の連絡なしに変更されることがあります。
●投資信託は預金等ではなく元本および利回りの保証はありません。
●投資信託は、預金や保険契約と異なり、預金保険機構・保険契約者保護機構の保護の対象ではありません。
●登録金融機関でご購入いただいた投資信託は、投資者保護基金の対象とはなりません。
●当資料に掲載されているいかなる情報も、法務、会計、税務、経営、投資その他に係る助言を構成するものではありません。

手数料およびリスクについてはこちら