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日本銀行と金融政策④~日本銀行の金融政策の変遷①~
2024/11/13

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概要


長らく日本の政策金利としての役割を果たし、日本銀行の主たる金融政策手段であった公定歩合は1994年の金利の完全自由化をもって、その役割を終えました。


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■公定歩合

今回は日本銀行の金融政策について、戦後から現在に至るまでの変遷をご説明いたします。戦後からしばらくの間、日本銀行は主に「公定歩合」を政策金利として扱い、これを調整することで金融政策の引締めや緩和を実施してきました。公定歩合とは、中央銀行である日本銀行が民間の金融機関に貸出しを行う際の金利を指し、当時の預金金利や貸出金利等はこの公定歩合に連動していたため、これを調整することが経済活動に大きな影響を及ぼしました。このように、金利が市場で自由に決定されるものではなく、公定歩合に連動するように管理、規制される金利を「規制金利」といい、政府および日本銀行による公定歩合を通じた金利の管理、規制は1994年にすべての流動性預金金利が自由化(当座預金を除く)されるまで続きました(図表1)。ちなみに規制金利は1947年に制定された「臨時金利調整法」によって策定されたものです。戦後復興に重きを置き、安定した金融経済の実現と低金利政策による経済発展を実現させるため、市場原理ではなく政府、日本銀行による管理が行われました。


■金融自由化と公定歩合廃止

臨時金利調整法にはじまる、長年続いた金融行政は護送船団方式注1ともよばれ、金融システムが安定化することで、戦後の経済復興や高度経済成長期を支える基盤を維持することができました。しかし、自由競争に晒されることがなく、経営効率の悪い銀行でも生き残れるような状況は資本主義経済に相反するものでもありました。さらに、日本経済の国際化や日本国内の国債市場の拡大が進む中、日本の金融市場を閉鎖的だと考えていた米国の要求等もあり、1970年代後半から金融の自由化と国際化が進みはじめました。

1970年代後半より社債発行における担保条件の緩和が進み、市場の自由化が進みました。間接金融から直接金融へと企業の資金調達手段が変化していたこともあり、社債市場の規模は一気に大きくなりました。1979年には転換社債での完全無担保債が、1985年には普通社債での完全無担保債が発行されました。また、1980年には外為法が改正され、海外との取引が原則禁止から原則自由へと大きく緩和された結果、海外での資金調達が活発化し、直接金融化がさらに進展することとなりました。

注1:過度な競争を避け、行政が金融業界全体の保護を図ることで、金融機関の破綻等を防ぎ、金融システムの安定化を図ること。

さらに、オイルショック以降の財政収支悪化に伴い、国債発行量が増えると引受け役を担っていた銀行による市中売却規制を緩和する要望が高まり、既発国債が流通する市場が誕生しました。一方、規制金利が適用される預貯金から、自由金利市場への資金流出を恐れた銀行側への配慮として1979年、発行条件を自由に決めることができ、また自由に譲渡可能なCD(またはNCD、譲渡性預金)の取扱いが始まると余剰資金からの資金移動が進みました。その後、大口預金金利の自由化を皮切りに、預金金利の自由化が段階的に進み、既述の通り、1994年に当座預金を除くすべての預金金利の自由化が進みました。

この金利の完全自由化をもって、臨時金利調整法は事実上の機能停止状態となり、また公定歩合が各種金利と連動することはなくなりました。また、現在は公定歩合ではなく基準貸付利率と名称も変わりました。


図表1:公定歩合の推移(1945年1月~1994年9月)


出所:日本銀行のデータを基にピクテ・ジャパン作成

   

 



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