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日本銀行と金融政策⑩~金融政策による経済効果①~
2025/02/13

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概要


日本銀行の金融政策はバブル景気の形成とその後の崩壊に深く関与していたといえ、金融政策の変遷が経済や株価に大きな影響を及ぼしたことがわかります。


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■1980年から1998年の金融政策と経済環境

今回はこれまでご説明してきた日本銀行の金融政策の変遷をふまえて、実際にそれらがどのように経済や株価に影響をもたらしたのかについてご説明いたします。まず、1980年から1998年の期間に焦点を当てます。この期間、日本銀行の金融市場調節の主たる操作目標注1は公定歩合でした。1985年、ドル安誘導を図ったプラザ合意により、急激に進行した円高不況に対処すべく日本銀行は公定歩合を5%から2.5%に引き下げました(図表1)。法人税や個人所得税の減税も行われ、金融政策と財政政策の両面からの景気刺激策はバブル景気を生み出しました。好調な経済と低金利環境を背景に、民間金融機関の貸出や民間企業の設備投資金額は急増しました(図表2、3)。一方で過剰流動性注2が問題となり、金余り現象が「財務テクノロジー(財テク)」の拡大につながり、株式市場や不動産市場を膨らませました。財テクとは、企業が調達した資金を本業につかうのではなく、投資につかうことを指します。具体的な運用スキームについては割愛しますが、こうした企業の行動などにより、株式市場は異常な上昇を見せ、日経平均株価が1989年12月に38,915円87銭という、その後30年以上破られなかった高値を記録した要因の1つとなりました。また、不動産市場において、同じく資金が過剰に流入し、東京都の商業地の地価が1985年から1990年の間に数倍に上昇しました。

しかしながら、景気の過熱感を解消すべく、日本銀行は1989年5月から1990年8月にかけて公定歩合を2.5%から6%に引き上げました。金利の引き上げは個人や企業の借入コスト増加につながるため、投資意欲を大きく減退させました。また、金利上昇に加えて、過熱していた不動産向け融資を制限する総量規制により、銀行の貸出は総じて減退していったこともわかります(図表2)。こうして金融引き締めが株式市場と不動産市場の下落につながり、バブルの崩壊がはじまりました。

このように金融政策による金利の調節はバブル形成とその後の崩壊に深く関与していたといえ、金融政策の変遷が経済や株価に対し大きな影響を及ぼしたことがわかります。

注1:日本銀行が金融政策を行うにあたり、その基本的な方針(金融市場調節方針)でターゲットにしている対象および目指す具体的な水準
注2:通貨(流動性)の供給量が正常な経済活動の規模を大きく上回っている状態

図表1:公定歩合および無担保コール翌日物と日経平均株価の推移(月次、1980年1月~1998年12月)



図表2:国内銀行の総貸出額と前年比の推移(年次、1980年~1998年)




図表3:民間企業設備投資額(GDPベース)と前年比の推移(年次、1980年~1998年)



出所:日本銀行(図表1、2)、ブルームバーグ(図表1)、内閣府(図表3)のデータを基にピクテ・ジャパン作成


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