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日本銀行と金融政策⑫ ~金融政策による経済効果③~
2025/03/13

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概要


近年、日本銀行の金融政策と株価の関係性は相対的に強まってきており、今後も金融政策の動向を把握することが投資を考えるうえで重要だといえます。  


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■2009年~現在の金融政策と株価

今回は前回に引き続き、金融政策の変遷が経済や株価にもたらした影響について、2009年以降の期間に焦点を当ててご説明いたします。2008年、米国発のリーマン・ショックをきっかけに世界経済は深刻な景気後退に直面し、世界の株式市場は大きく落ち込みました。日本銀行は2006年に緩和政策を止め、同年7月にはゼロ金利政策を解除したものの、先述のリーマン・ショックを受けた景気低迷への対応策として2008年10月、再び無担保コール翌日物(以下、オーバーナイト金利)の誘導目標を引き下げました。2009年には量的緩和、2010年に包括的金融緩和政策が導入され、長期国債やETF、J-REITの購入が本格化しました。このように、ゼロ金利政策に加え、日本銀行による資産購入の効果が市場心理の改善に寄与し、リーマン・ショックの際に一時7,000円台まで割り込んだ日経平均株価は2012年末時点で10,000円台に回復しました(図表1)。もちろん、日本銀行の一連の政策はあくまで経済刺激策であり、デフレから脱却し、物価と経済を安定させることですが、結果的に株価上昇の要因となったことは否めません。また、2013年にはさらに規模を拡大させた異次元の金融緩和が導入されたことで、日本は長期にわたる低金利、金融緩和環境が続くこととなり、これがさらなる日本の株式市場を押し上げる効果を生みました。


図表1:無担保コールレート翌日物と日経平均株価の推移
(月次、2009年1月~2024年12月)



出所:日本銀行、ブルームバームのデータを基にピクテ・ジャパン作成

2013年、日本銀行の黒田総裁(当時)が導入した異次元の金融緩和政策では、金融市場調節の操作目標がマネタリーベースに変更され、長期国債やETF、J-REITの資産買入れ額が大幅に引き上げられました。この政策により、円安が急速に進行しましたが(図表2)、これは日本の輸出企業の収益改善につながり、日経平均株価の上昇を促すこととなりました。

その後、2016年にマイナス金利政策やイールドカーブ・コントロール等が導入され、日本銀行はインフレ目標が達成されるまで長期的に粘り強く緩和を続けていくという姿勢を改めて示しました。この結果、円安トレンドの継続や将来的な景気回復等の期待が高まり、日経平均株価は上昇を続けました。

2024年にはマイナス金利が解除され、同年7月以降、現在(2025年2月末時点)まで複数回の利上げが行われました。リーマン・ショック以降、非常に長い期間にわたって進められてきた大規模な金融緩和政策は大きな転嫁点を迎えているといえますが、ここ数年続く生成AIブームによる株式市場への資金流入といった良好な外部環境もあり、日経平均株価はバブル時の高値を超え、40,000円台に突入しました。

このように前々回、前回で振り返った期間と比べると、2009年以降の金融政策と日経平均株価の関係は相対的に強かったといえます。日本銀行による異次元の金融緩和はかつてないほどの流動性を市場に供給し、非常に低い金利環境が多くの資金を投資に向かわせました。日本銀行によるETF等の購入も投資家に一定の安心感を与えていたといえます。繰り返しになりますが、日本銀行は株価を維持、引上げることを目的として金融政策のかじ取りを行っているわけではありません。しかし、結果として株式市場に大きな影響を与えたことは否めません。投資家は日本銀行による金融緩和に期待して、株式市場へ投資をするという流れも確かに存在したといえます。このことから、今後も日本銀行の金融政策が株式市場に与える影響は大きいと考えられるため、引き続きその動向をしっかり追い続けることが重要です。    


図表2:マネタリーベースと米ドル/円の推移
(月次、2009年1月~2024年12月、マネタリーベースは月末残高)


出所:日本銀行、ブルームバームのデータを基にピクテ・ジャパン作成

 

 




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