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- 環境変化確認編(8)<ボラティリティの低さが示すもの>
過去を振り返ると、継続的な金融引き締めによって金利が高水準に達すると、市場が大きく調整する場面がありましたが、利上げ開始後しばらくはボラティリティが低い状態にありました。
ボラティリティの低さが示すもの
価格変動率であるボラティリティが低いことは何を示すのでしょうか。差し迫った危機がないこと、大きな調整が起こる可能性が低いことを示すのでしょうか。それとも投資家の慢心や油断を示すのでしょうか。過去を振り返ると、継続的な金融引き締めによって金利が高水準に達すると、市場が大きく調整する場面がありましたが、利上げ開始後しばらくはボラティリティが低い状態にありました(図表1)。
図表1:米国の政策金利と米国株式株価、ボラティリティの推移
(期間:1999年9月〜2018年12月)
増加する企業債務
リーマンショック以降、世界的な金融緩和によって低格付けの企業においても資金調達がしやすい環境が続いていました。先進国の企業債務増加への懸念がIMFによって示されています。
「米国とユーロ圏では危機以降、投資適格でも下位(BBB)の社債残高は4倍となり、投機的格付債の残高もほぼ倍増している。そのため、大幅な景気後退や金融市場の急速なタイト化が起こると、信用リスクのプライシングが大幅に上昇し、多額の債務を抱えた企業の債務返済能力に問題が生じるかもしれない。他方で、金融政策や金融市場の緩和的な状態が続けば、債務の増加はさらに続き、将来的に大きな後退局面につながることも心配される。」(2019年4月「IMF国際金融安定性報告書」)
増加する企業債務(続き)
過去を振返ると、リーマンショック前の2004年の利上げ開始後、すぐには商工業ローンの延滞率は上昇せず、ハイイールド債のスプレッドも縮小していました。その後、金融引き締めが終了し金融緩和に転じ始める頃から商工業ローンの延滞率が上昇し始め、スプレッドも拡大していきました(図表2) 。
図表2:米国の政策金利と商工業ローン延滞率、HY債スプレッドの推移
(期間:1999年9月〜2018年12月)
IMFの指摘によると世界の経済成長は低迷しており、さらに米中の貿易摩擦など下振れリスクがあります。今後、景気減速で負債を抱えている企業の業績が悪化した場合、金利負担が重くのしかかります。
金融緩和で低金利の状態が続いていても、もし市場の懸念が高まればスプレッドの拡大により負債を抱える企業の調達金利は上昇し、資金繰り破綻が続く恐れがあります。
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