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- Q.需要減による収益見通しへの影響?~需要減は限定的
公益企業の収益やキャッシュフロー、配当は、1)原燃料などの変動を公共料金に価格転嫁、収益確保できる収益構造であること、2)工業・商業用需要減を住宅用需要増(家庭向け)がオフセットすることなどから、公益事業全体では、新型コロナウイルス感染拡大による景気後退の影響を相対的に受けにくいと考えます。
Q.需要減少による収益見通しへの影響は?~需要減は限定的、相対的にマイナスの影響少ない
【公益企業の業績は感染拡大と景気後退の影響を受けにくい】
公益企業の収益やキャッシュフロー、配当は新型コロナウイルス感染拡大による景気後退の影響を他業種より相対的に受けにくいと考えます。
【理由1:価格転嫁、収益確保できる収益構造】
その理由のひとつは、公益企業の収益の多くが規制下事業で構成されていることです。規制下事業は需要の変化が小さく、燃料価格をはじめとした費用の変動は価格転嫁ができる事業形態であるため、燃料価格や電力価格、景気後退の影響を受けにくい収益構造となっています。
【理由2:工業・商業用需要減を住宅用需要増が相殺】
理由の2つ目は、工業用や商業用の電力需要は減少が予想される一方、住宅用の需要増が予想されるため、需要全体が大きく減少しないと考えられるからです。現在、当ファンドの国別構成の約7割を占める米国の電力の工業用需要は量ベースで約25%(2019年)、商業用は約38%です(図表1左図参照)。価格も、ともに住宅用より低いことから(図表2参照) 、金額ベースにすると影響は更に小さく(図表1右図参照) 、景気後退の影響を最も受けやすい工業用は約16%となります。このため需要の変化による公益企業の収益全体へのマイナスの影響はそれほど大きくないと考えられます。
なお、米国エネルギー情報局(EIA)は2020年4月7日に新型コロナウイルス感染拡大により、必要不可欠ではないビジネスが一時閉鎖され、多くの人が在宅勤務を行っている状況が数カ月続くとして、2020年年間で電力消費量は3%減少するとの見通しを発表しました。特に影響の大きい商業用では4.7%、工業用では4.2%の減少を見込んでおり、住宅用需要は在宅勤務により増加するものの、温暖な冬場の需要減によりほぼ相殺されるため0.8%減になるとしています。
【過去の大不況期の需要減は全体では最大でもー3.7%】
1950年以降、2度のオイルショック、ブラックマンデー後の米国不況、ITバブル崩壊、リーマンショック後などの不況期には電力需要は工業需要中心に減少しています。ただ、工業需要でもこの間の最大の需要減少は前年比で-9.8%(単体で1982年)、全体では最大同-3.7%(2009年)に留まっています(図表3、4参照)。
このため、過去の事例からも、今回のコロナショックで需要が極端に大幅減少するとは考えにくいでしょう。
こうした理由から、公益企業の収益や配当見通しは、他の業種より安定しており、実現の確実性が相対的に高いと見られます。
公益企業の収益は長期投資の観点で考えると、設備投資の拡大を反映します。規制下の電力料金は、設備投資負担を加味して、公益企業が利益確保できる水準に設定されるからです。このため、公益企業の収益基盤は、短期的なマクロ経済の影響を受けにくい構造となっています。
Q具体的な収益予想は?~相対的に底堅い
世界の公益企業の利益成長率は足元の実績で前年比約6%、予想(12ヵ月先)で同約4%(2020年4月6日時点)となっており、原油価格の下落や景気後退の影響が大きいエネルギーや一般消費財サービスなどの実績が2桁のマイナスとなり、今期も減益が予想されるなか、公益をはじめとするディフェンシェブ性(景気の変動に左右されにくい特性)の高い業種やテレワークの拡大の恩恵を受ける情報技術(IT)セクターなどが底堅く推移しています(図表5参照)。
ピクテでは米国の公益株式では、今後6%の増益、配当利回りで4%、トータルリターンでおよそ10%が期待できるとみています。米国の公益事業の規制の仕組みでは、今後の再生可能エネルギーや送配電網の設備投資拡大とその必要性を勘案すると、この増益予想が下振れするリスクは少ないと考えます。
欧州の公益株式も、同水準で、今後5%の増益、配当利回りで5%、トータルリターンでおよそ10%が期待できるとみています。ただし、政治リスクの大きい英国やイタリア、規制リスクが懸念されるスペイン、フランスに関しては不透明感が高いことから、注意が必要と考えます。 (ピクテ・アセット・マネジメント予想、2020年4月10日時点)
Q減配リスクは?~収益見通しが底堅いことから、業績面からみた、減配リスクは限定的
公益企業の事業形態にもよりますが、規制下事業の公益企業中心に全体では収益見通しが底堅いことから、現時点では業績面からみた、減配リスクは限定的と考えられます。
ただし、懸念材料としては、ポピュリスト政権による配当を先延ばしするよう要請する政治的圧力が高まっていることです。特に過去の経験からすると、このリスクは欧州で高いとみています。このため、いくつかの欧州の公益銘柄には、注意が必要とみています。現在保有のドイツ、イタリア、スペインの銘柄に関しては相対的に政治リスクは小さいと判断しています。一方、組入れているフランスおよび英国の公益銘柄に関しては政治リスクが高いと見ています。
現在、当ファンドの国別構成比の約7割を構成する米国の公益銘柄に関しては、欧州と異なり、市場優先であることから政治リスクはそれほど高くはないと判断しています。
今後も市場環境を注視し、状況に応じてポートフォリオを変更していく方針です。
また、現時点では業績面から減配リスクは小さいと見られますが、感染拡大により景気後退が深刻化した場合には減配するリスクは高まります。
長期的なデータが入手可能な米国の公益株式の1950年から2020年3月現在までの過去の実績でみると、過去配当のピークから最低値までで大きな減配を経験したケースは世界大恐慌、世界大戦、オイルショックなどの不況期、電力自由化後などがありました。最大で、世界大恐慌時には70%近くの減配となりました。
仮に、最悪の事態を想定し、70%近くの減配になったとすると、配当利回りは、現在の配当利回り水準の3.3%から1%程度に低下することになります。(図表6参照)
一方、安全資産とされる米国国債をはじめとした主要先進国国債の利回りは、景気下支えのための流動性の供給拡大で利回り水準が過去最低水準で推移しています。このため、米国の公益株式の配当利回りは、過去最低の減配率となった場合でも、依然相対的に魅力的な水準となり、今後の株価下支え要因になると考えられます。
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