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- クリーンエネルギーへのシフトは公益業界に追い風か?
世界的にクリーンエネルギーを推進する動きが加速しています。欧州ではグリーンディール、米国では米大統領選の民主党候補指名を確実にしているバイデン前副大統領がクリーンエネルギー経済を実現するために2兆ドルの投資計画を発表するなど注目が集まっています。既に太陽光や風力などのクリーンエネルギーによる発電コストは大幅に低下し、コスト面でも優位性が高まっており、クリーンエネルギーへの移行は公益企業にとって利益増要因となります。これに政治的な後押しが更に加われば、クリーンエネルギーを拡大する公益企業に大きくプラス寄与するものと注目されます。
世界的にクリーンエネルギーを推進する動きが加速
世界的に太陽光や風力などのクリーンエネルギーを推進する動きが加速しています。
【米国:バイデン大統領候補のクリーンエネルギー関連政策】
米国では、2020年11月の米大統領選の民主党候補指名を確実にしているバイデン前副大統領は7月14日に、クリーンエネルギー経済を実現するために2兆ドル(約214兆円)の投資計画を発表しました。風力タービンや持続可能な住宅、電気自動車の製造などが対象となっており、これらの投資を通じて、労働者の雇用創出を促進することも目指すとしています。バイデン氏はクリーンエネルギーとインフラへの投資を通じて経済成長を促進する計画について説明し、「2035年までに二酸化炭素を排出しない電力業界の実現」という目標についても言及しました。これには原子力の利用を継続しながら、再生可能な風力や太陽光発電、電力貯蔵施設などの迅速な設置が必要となるとしています。
【欧州:グリーンディールの推進】
欧州では、欧州連合(EU)として2050年に、温室効果ガス排出が実質ゼロとなる「気候中立」を達成するという目標を掲げ、2030 年排出削減目標を、現行の1990 年比40%削減から、少なくとも50%ないしは55%まで引き上げるための影響評価を2020年9月までに実施する計画です。2020年1月14日には、欧州委員会は「欧州グリーンディール投資計画(The European Green Deal Investment Plan)」を発表し、今後10年間に欧州投資銀行を主軸として官民合わせて少なくとも1兆ユーロの投資を目指すこと発表しています。
【日本:脱炭素の流れ】
日本では、2030年度に、2013年度比26%のCO2排出量削減を掲げ、2050年には排出量を概ね80%削減する目標が設定されています。
技術革新の進展で、太陽光、風力発電のコストが大幅低下
地球温暖化対策など環境重視の政策や技術革新・設備の大規模化により、クリーンエネルギーである太陽光や風力などの再生可能エネルギーの発電コストは設備投資コストや運営コストでみても大幅に低下しています。石油や天然ガス、石炭などの化石燃料による発電コストと同等かそれ以下に低下するほど競争優位性を増しています。このため公益企業が太陽光や風力発電を拡大する際には、補助金や政府の支援にもはや頼る必要がなくなってきています。
発電源は従来型の発電から太陽光や風力などにシフトする流れ
太陽光、風力などのクリーンエネルギーによる発電は、石油、天然ガス、石炭などの化石燃料や原子力と比べて経済的に優位な発電手段になっていくと考えられます。実際に米国ではここ10年余りで従来型の石炭や原子力が閉鎖され、太陽光や風力などの発電設備が増設されてきています。また、今後もこのトレンドが継続することが予想されています(下図参照)。米国でクリーンエネルギーが増加するというこの傾向は、世界規模でも見られており、主たる発電源がクリーンエネルギーにシフトしていく流れが継続すると見ています。次頁で米国でクリーンエネルギーによる発電を積極的に進める電力会社をご紹介します。
投資対象企業例:ネクステラ・エナジー(米国、電力)
【会社概要】
再生可能エネルギーの世界的なリーダー。 傘下の事業会社を通じ米国フロリダ州を中心とする規制下事業とフロリダ州外での風力・太陽光発電を中心とした再生可能エネルギー事業に注力。
【注目ポイント】
風力や太陽光発電コストの大幅低下の恩恵を受け増益・増配を達成。
一株あたり利益2021-2022年 年率+6-8%、増配2020年12%、2012-2022年年率10% を目指す。
同社のおよそ30%の利益は、再生可能エネルギー開発事業から成り立っています。同事業に関してはネクステラ・エナジーは強気な見通しを示しています。ネクステラ・エナジーは再生可能エネルギー事業の最先端を行くリーディング企業なので、風力タービンや、ソーラーパネルなどの資材調達などには競合よりも優位性があります。また堅固な財務体質を武器に、資金調達面でも、競合よりも優位性が高く、低コストでの資金調達が可能です。
こうした高い競争力を背景に、同社は市場でのシェアを拡大し、多くの再生可能エネルギープロジェクトを受注しており、設備投資の拡大は当初計画よりも前倒しで進んでいます。
投資対象企業例: アメリカン・エレクトリック・パワー(米国、電力)
【会社概要】
1906年に設立。オハイオ州コロンバスに本社を置き、同州および隣接州、米中南部で発電、送配電、電力販売事業を展開。
【注目ポイント】
足元は予想を下回るが通期目標継続:年率 +5~+7%の利益成長率、利益成長並の増配。
石炭による発電を減らし、再生可能エネルギーによる発電の構成比を2020年現在の17%から37%へ引き上げ目指す。これによる設置・運営コストの低下が利益増に寄与。
(ご参考)クリーンエネルギーへのシフトは増益要因?~もっと詳しく知る
クリーンエネルギーシフトは公益企業の利益増要因に
一般的に世界の規制下の電力事業では、どれだけ利益をあげていいかは各国・地域の規制当局によって決められています。
規制下の電力料金をはじめとした公共料金の計算方法は複雑で国や地域によって異なりますが、単純化すると、料金は発電施設の資産価値(レートベース)に対して一定の利益を確保する算定レート(ROEなどが元になる)を掛けて、燃料費などのコストをプラスして設定されます。このため、設備投資を拡大し、発電施設の資産価値が増加すればするほど、増益要因となる仕組みになっています。
一般的な家庭の電力料金100ドルを例に具体的な例を簡略化して示してみると、
一般的家庭が電力料金を現在100ドル払っているとします。 その内訳をみると、①燃料費の45ドルをはじめとした費用部分が85ドルです。この85ドル部分はそのまま価格転嫁で電力会社の儲けになりません。これに、②レートベースつまり電力の料金算定の基礎となる資産価値に利益率、ROEを掛けて算出される15ドルが会社の利益です。これを上乗せしたものが現在の電力料金の100ドルとなります。電力の料金算定の基礎となる資産価値は新しい施設が増えるほど増加し、古い施設が増えると、原価償却が進むことで資産価値が減少します。
もし、再生可能エネルギーに20%移行した場合には、燃料費はかからないので、全体の燃料費は36ドルに低下するとします。一方、新しい設備、資産が増えるので、利益が3割近く増える19ドルになります。一方、主に燃料費が減るので、合計の電力料金は96ドルに低下します。更に50%まで拡大すると全体の電力料金は1割減り90ドルになり、一方、利益は6割増加し23ドルとなります。
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