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「ポスト安倍」へ向けた1年
市川 眞一
2019/09/20

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概要

第4次安倍第2次改造内閣が発足して一週間が経った。小泉進次郎環境相の初入閣が目立っているものの、注目すべきは今回が安倍首相の下での最後の内閣改造となる可能性ではないか。2020年のオリンピック ・パラリンピック終了後 、安倍首相は自ら退任することも考えれ、今後 、「ポスト安倍」レースが本格化するだろう。



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ポイントとなる自民党総裁任期と衆議院の任期満了

安倍首相は、昨年9月の自民党総裁選で3選を果たした。再び党則を改正しない限り、その任期は2021年9月までだ。一方、2017年10月に前回の総選挙が行われているため、衆議院議員の任期満了は2021年10月である。つまり、安倍首相が3期目を全うして退任する場合、後任の首相(自民党総裁)は、バトンを受けてから1ヶ月で選択肢なく総選挙を戦わなければならない。

それは政界の常識から見て考え難く、安倍首相は、3期目の間にもう1回解散・総選挙を行うか、それとも任期途中で退任して後継者の下で国民に信を問うか、二者択一を迫られることになるだろう。

 

政界の鉄則:総選挙のインターバルは3年以内

1955年に自民党が結党されて以降、衆議院総選挙は21回あった。このうち、間隔が3年以内で行われた10回だと、9回、解散時与党が過半数を維持している。

他方、3年を超えた11回では、8回で過半数割れに追い込まれた。2009年に自民党が、2012年に民主党が政権を失った総選挙は、いずれも前回から3年超で行われたものに他ならない。従って、総選挙の間隔は3年以内が政界の鉄則だ。

安倍首相は、2014年に前の総選挙から2年、2017年には2年10ヶ月で国民に信を問い、いずれも圧勝している。この鉄則に則れば、次の総選挙は2020年秋までに行われなければならない。

 

浮上するオリンピック・パラリンピック後の退任と後継指名のシナリオ

今年11月20日、安倍首相の在任期間は憲政史上最長となり、2020年8月24日には連続在任記録も更新する。

オリンピック、パラリンピックを成功させ、二つの在任期間を塗り替えれた場合、安倍首相にとって十分なレガシーと言えるのではないか。そこで自ら退任し、指名した後継首相を自民党最大派閥の領袖として後見すれば、極めて強い政治力を維持する可能性が強い。

後継首相は、就任後、日を置かずに衆議院を解散、総選挙を行うことにより、間隔3年の鉄則を守ることができる上、2022年7月の参議院選挙まで大きな国政選挙を戦う必要がない。その間、安倍(前)首相に支えられ、政権基盤を固めることが期待できるだろう。

安倍首相の後継者については、岸田文雄自民党政調会長が最有力であり、日米通商交渉に尽力した茂木敏充新外相がそれに次ぐのではないか。いずれにせよ、7年間、日本の政治に安定をもたらしてきた政権が交代期を迎える可能性があるわけだ。世界景気に減速の兆しが台頭していることを含め、日本の政治・経済は、大きな転換点の入り口にあると言えるのではないか。


市川 眞一
ピクテ・ジャパン株式会社
シニア・フェロー

日系証券の系列投信会社でファンドマネージャーなどを経て、1994年以降、フランス系、スイス系2つの証券にてストラテジスト。この間、内閣官房構造改革特区評価委員、規制・制度改革推進委員会委員、行政刷新会議事業仕分け評価者など公職を多数歴任。著書に『政策論争のデタラメ』、『中国のジレンマ 日米のリスク』(いずれも新潮社)、『あなたはアベノミクスで幸せになれるか?』(日本経済新聞出版社)など。


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