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VIX先物カーブが物語る米国大統領選挙の大波乱
田中 純平
2020/09/29

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概要

米国大統領選挙まで残りわずかとなる中、VIX先物カーブは大統領選挙にかけてボラティリティ(変動性)が上昇することを織り込んでいる。このようなVIX先物カーブの形状は、4年前の大統領選挙時には見られなかった現象であり、市場関係者は今回の大統領選挙を重大なリスクイベントとして認識していることがうかがえる。



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コロナ禍の郵便投票増加で新大統領がすぐに判明しない可能性

今回の米国大統領選挙はコロナ禍ということもあり、郵便投票の増加が予想されている。郵便投票が増加するということは、それだけ集計作業に時間がかかることを意味する。米国の場合、集計方法は州によって異なり、投票日前から集計を行うことができるのは17州のみで、それ以外は投票日又は投票締切後でないと集計ができない。このため、大統領選挙の勝敗を分ける「激戦州」を含め、選挙結果が判明するまで数日から数週間かかる州が続出する可能性がある。

どちらの政党を支持するかによって、新型コロナウイルスに対する意識も変わってくる。民主党の支持者は新型コロナウイルスの感染リスクをより強く意識しており、「密」を避けるため、共和党支持者よりも郵便投票を選択する割合が高くなると言われている。そのため、開票の初期段階ではトランプ氏が優勢となりやすく、開票が進むにつれて徐々にバイデンシ氏の票が伸びてくることが想定される。

 

 

再集計を巡って訴訟になるリスクも

トランプ氏は以前から郵便投票は不正選挙になると主張していることから、開票結果を不服として再集計の訴訟を起こす可能性がある。そうなれば、選挙結果が正式に判明するまで、さらに時間を要することになるため、大統領選挙は混迷を極めることになるだろう。

実際、マーケットはこの状況を織り込んでおり、VIX(CBOEボラティリティ)指数の先物カーブは、大統領選挙にかけて大きく上昇しているだけでなく、大統領選挙後の12月限でも高止まりしていることがわかる。このことから、市場関係者は大統領選挙の「大波乱」を想定していることが読み取れる。

2000年の大統領選挙ではフロリダ州の集計を巡って訴訟合戦になったものの、当時は米連邦最高裁が大統領選挙日から35日後に再集計中止の判決を下しブッシュ氏が勝利した。今回もそれが適用されれば12月8日がおおよその目安となる。大統領選挙が一筋縄ではいかないことは、肝に銘じるべきだろう。


田中 純平
ピクテ・ジャパン株式会社
ストラテジスト

日系運用会社に入社後、主に世界株式を対象としたファンドのアクティブ・ファンドマネージャーとして約14年間運用に従事。北米株式部門でリッパー・ファンド・アワードの受賞経験を誇る。ピクテ入社後はストラテジストとして主に世界株式市場の投資戦略等を担う。ピクテのハウス・ビューを策定するピクテ・ストラテジー・ユニット(PSU)の参加メンバー。2019年より日経CNBC「朝エクスプレス」に出演、2023年よりテレビ東京「Newsモーニングサテライト」に出演。さらに、2023年からは週刊エコノミスト「THE MARKET」で連載。日本経済新聞やブルームバーグではコメントが多数引用されるなど、メディアでの情報発信も積極的に行う。日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)


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