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- 縮小する「首相プレミアム」の意味
菅義偉内閣への逆風が強まっているようだ。最近の世論調査の結果を見ると、今のところは短命政権のコースをたどっている。特に「首相プレミアム」の縮小は菅首相のリーダーシップに影響するだろう。野党への支持が高まっていないため、政権交代の確率は極めて低く、政治による市場への影響は限定的と言える。ただ、菅政権による構造改革策を期待するのは難しい。
菅内閣の支持率:短命政権のコースをたどる
最新の世論調査を見ると、菅首相への逆風が強まっているようだ。NHKが2月5〜7日の3日間に行った調査によれば、内閣支持率は3ヶ月連続低下して38%となり、不支持率の44%を下回った。昨年9月の発足直後における62%から、5ヶ月で24ポイントの急低下である。
小渕内閣から第2次安倍内閣まで、過去10内閣の発足時の支持率は平均59.0%だった。菅内閣はその水準を超える好調な滑り出しだったわけだ。もっとも、重要なのは歩留まりに他ならない。5年を超える長期政権になった小泉純一郎、第2次安倍晋三内閣以外、例外なく12ヶ月以内に支持率は30%を割り込んでいる(図表1)。そして、発足から16ヶ月以内に退陣を余儀なくされた。
一方、小泉、第2次安倍内閣は、当初12ヶ月は1度も40%を切っていない。憲政史上最長記録を更新した第2次安倍内閣の支持率がNHKの調査で初めて50%を割ったのは、発足から18ヶ月目だった。これは、新政権にとり、如何にスタートダッシュが重要であるかを示しているだろう。菅首相の場合、既にこの点において政権長期化の条件を満たさなくなったわけだ。
さらに、東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会を率いてきた森喜朗会長の辞任が明らかになった。理由は同会長自身の失言だが、政府、与党共に当初は状況を楽観視していた感は否めない。この件も菅政権のダメージとなる可能性がある。
市場への影響:政権交代の確率は低いが・・・
衆議院の任期満了を8ヶ月後に控え、自民党内にまだ余裕が見られるのは、同党の支持率が35.1%と高水準で安定、野党第1党である立憲民主党の6.8%を大きく上回っているからだろう。自民党が政権を失った2009年8月30日の総選挙の際は、7月の世論調査で旧民主党の支持率が26.4%に達し、自民党の24.9%を逆転していた。
ただし、菅首相の求心力が低下しているのは、「首相プレミアム」が急速に縮小しているからではないか(図表2)。首相プレミアムは、内閣支持率から与党第1党の支持率を引いた値だ。内閣支持率は首相への支持率であり、この数字が大きければ、与党は首相人気の恩恵を受けていると言える。
逆に首相プレミアムがマイナスになると、歴代の政権は末期を迎えた。第2次安倍政権も、安倍首相による退任表明直前の2020年8月の調査において、発足後、初めて首相プレミアムがマイナスとなっている。
菅政権の先行きには不透明感が漂うものの、野党の支持低迷は、政権交代の確率が低いことを示し、足下の市場に大きな影響は与えていないようだ。もっとも、この政治状況だと、菅首相には、強い政治力を要する大胆な規制緩和など構造改革策に取り組む余裕はないと考えるべきだろう。
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