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- 米国株 利益見通しの霧は晴れるか?
S&P500指数の市場予想PER(株価収益率、12ヵ月先)は7月21日時点で約19.7倍と既に割高感があるため、ここからさらにS&P500指数が上昇するには、主に市場予想EPS(1株当たり利益)が上昇をけん引する必要がある。本レポートでは、その市場予想EPSの見通しを様々な角度から考察する。
米国企業はアーニング・リセッション
S&P500指数は7月21日(金)時点で年初来18.2%高(米ドル建て、配当無し)の4,536.34ポイントとなり、昨年1月3日につけた最高値(4,796.56ポイント)まであとわずか(+5.7%)となった(図表1)。すでに市場予想PER(株価収益率、12ヵ月先)は約19.7倍と割高感があるため、S&P500指数がここからさらに上昇するには、主に市場予想EPS(1株当たり利益)が上昇をけん引する必要があるだろう。
その米国企業(S&P500指数構成企業)のEPS成長率(前年同期比)を四半期ごと比較したものが図表2だ。米国企業のEPS成長率は、22年10-12月期と23年1-3月期が連続してマイナス成長だったことから、「アーニング・リセッション(利益の景気後退=2四半期連続の減益)」と定義づけられるが、7月21日時点の市場予想ではこのマイナス成長がさらに2四半期続く(計4四半期の連続減益)見通しだ。
23年4-6月期から23年10-12月期までの市場予想EPS成長率を時系列で比較したものが図表3になる。好調なS&P500指数の年初来リターンとは対照的に、企業利益の見通しについては緩やかな下方修正が続いていることが分かる。米国企業の市場予想EPS成長率は、絶対比較でも相対(時系列)比較でも芳しくないと言える。
「株式市場は今期よりも来期を重視」に潜む落とし穴
米国企業における通年の市場予想EPS成長率を時系列(年初来)で見ると、23年予想は下方修正傾向となっている一方、24年予想は年初にやや上方修正された後は横ばいとなっている(図表4)。また、7月21日時点における市場予想EPS成長率は、23年予想が前年比マイナス3.2%、24年予想が同プラス11.3%と、来期は今期と違って二桁台の高い伸び率が予想されている。
市場は低調な今期(23年)EPS成長率はすでに織り込み済みで、好調な来期(24年)EPS成長率を重視しているとの見方もあるが、市場予想EPS成長率は当該年度の年初から年末にかけて下方修正されるパターンが多いため、現時点で来期の高成長率を額面通りに受け止めるのはリスクが高いだろう。
今のところ23年4-6月期決算発表は市場予想対比では良好だが・・・
23年4-6月期決算発表を終えた米国企業の決算サプライズ比率(市場予想を上回った企業数÷決算発表済み企業数)は、7月21日時点で78.2%と比較的良好であり、好調だった23年1-3月期の決算サプライズ比率と同程度となっている(図表5)。
直近の決算発表の進捗状況(決算発表済みの企業数÷S&P500指数全体の企業数)は全体の1/5にも満たないため、最終的な決算サプライズ比率が大きく変わる可能性もあるが、23年4-6月期決算は市場予想対比では今のところ良好である。しかし、個別企業の決算まで掘り下げると、手放しで喜べないものもある。
例えば、米国信用調査会社のエキファックスは7月19日の決算発表で、軟調な住宅ローン市場等を理由に利益ガイダンスを引き下げたほか、米国クレジットカード会社のアメックスも7月21日に発表した決算で23年4-6月期の貸倒引当金繰入額が市場予想を上回るなど、マクロ経済の先行きを見通す上でネガティブな材料も散見される。利益見通しの霧はまだ晴れていない可能性がある。
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