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米中が第一段階の通商合意に署名、新興国株式投資へのインプリケーション
2020/01/16

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概要


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2020年1月15日、米国と中国の両国は、第一段階の通商合意に署名し、長らく続いた貿易戦争は一時休戦のかたちとなりました。

今回の合意の中で、中国側が示したコミットメントは、(1)金融サービス市場の開放、(2)知的財産権の保護、(3)技術移転強要の禁止、(4)米国からの農産物購入の拡大、(5)中国の外国為替市場の透明化、(6)合意の履行を確実にするための相互評価・紛争解決の枠組み・・・などが主な柱です。

これに対して、米国側は、(1)2019年12月に新たに発動予定だった中国からの輸入品約1,600億ドル分に対する15%の追加関税の見送り、(2)既に15%に引き上げられていた中国からの輸入品約1,200億ドル分に対する制裁関税率の7.5%への引き下げ、(3)ただし、2018年に発効された中国からの輸入品約2,500億ドル分に対する制裁関税率は25%のまま据え置き・・・などが示されています。

今後の交渉の行方について言及するのは時期尚早ではありますが、第二弾の合意に向けた交渉では、より技術関連の分野に踏み込んだ問題解決が求められる可能性があると考えます。

2019年12月に米国から発表されたファクトシートによると、米国企業が中国市場に進出する際に求められる技術移転の強要の是正に中国が合意したことに言及していましたが、一方の中国側からはこの点に関しての発表は一切ありませんでした。こうした点からみても、第一段階の合意にこぎつける際にも技術関連の問題は大きなハードルで、今後も争点となることは間違いないと考えられます。

今後も長期的に、米中の貿易摩擦問題は、今後どのような合意がなされようとも、市場にとって「ニューノーマル」となる可能性が高いとみられます。こうした状況からの影響として、中国側では、情報技術セクターにおいて米国などの海外勢に替わる国内ハイテク企業の育成を推進する動きが活発化する可能性が高いとみています。これは実際に、中国が、第一段階の合意における文章の中で言及していた国内産業における改革の推進と成長の質の向上という点と一致しています。

こうした中国政府の方針で恩恵を受けるであろう分野としては、企業向けアプリケーションなどのソフトウェアや、半導体、電子部品などのハードウェアに係わる分野などがあるとみています。




今回の第一段階合意の署名で、新興国株式をはじめ世界の株式市場にとってはひとまず、安心材料を得たかたちとはなりましたが、今後の交渉の行方には引き続き注視していく必要があるでしょう。


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