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- ETFによる投資需要が支える金
米国金利の上昇やリスク回避姿勢が後退する中でも、金はETFによる投資需要などに支えらえ、底堅く推移しています。
米国の実質金利が上昇する中でも底堅く推移する金
2022年3月8日に米国10年国債の実質金利が底を打って以来、金の価格は4%弱下落(米ドルベース、2022年4月19日時点)しました。これは一見、残念なパフォーマンスのように見受けられますが、その後の米国10年国債の実質金利の大幅上昇と世界的なリスク回避姿勢の後退を考慮すると、実際は金価格は比較的堅調に推移しています。過去の米国 10 年国債の実質金利に対する感応度のパターンを考慮すると、このような金利上昇の際には、金価格は330ドル以上下落していてもおかしくない状況です。
金価格が比較的堅調なのは、投資需要、特にETFによる需要の増加が主な理由であるといえます。2022年3月以降、ETFは約100トンの金を購入しており、投資需要が堅調であることを示しています。
高インフレに支えられる金
今回の金の投資需要の高まりの背景には、インフレやリスクなどに対するヘッジ先として金が注目を集めていることがあると思われます。
ロシアのウクライナ侵攻や中国における新型コロナウイルス感染拡大を受けた都市封鎖(ロックダウン)などの厳しい対策は、エネルギーなどの商品や世界のサプライチェーンの混乱を長引かせ、インフレ圧力が続くことから、金をサポートする可能性があります。長期的には、サプライチェーンの一部を「リショア(海外から国内に戻す動き)」する取り組みもインフレを誘発する可能性があります。インフレ率はすぐにピークに達する可能性もありますが、比較的高い水準で推移する可能性があるとみられます。全体として、インフレのヘッジ先とされる金の価格は、特に短期的にはインフレにより支えられる可能性があります。
投機的な需要に代わる戦略的な需要
2022年3月8日以降、世界的なリスク回避姿勢の低下にかかわらず、米国の実質金利が意味する金の価格プレミアムの低下にはつながっていません。これは、ロシアに対する国際的な制裁措置の影響や商品価格の上昇など、地政学的な不確実性が持続していることと関連していると思われます。とはいえ、世界的なリスク選好の強さと金の価格が急速に上昇したことは、先物市場での金需要の減少につながりました。こうした需要は特に変動が激しく、短期的な思惑で動く傾向があります。しかし、2022年3月に金(先物)に対する投機的な関心が低下した一方で、それを補うように、ETFのような戦略的な投資家からの関心も高く、短期的なセンチメントの変化に対して金がより抵抗力を持つ可能性があります。持続的な高インフレと米連邦準備制度理事会(FRB)の政策ミスへの懸念の高まりが、金に対する戦略的関心を高め、金利上昇下でも金価格が底堅く推移していることに繋がっています。
2022年2月の中央銀行需要は低調
ワールド・ゴールド・カウンシルのデータによると、2022年2月の世界の中央銀行の金純売却量は6トンとなりました。高インフレを受けて中央銀行の金への関心は継続するとみられますが、ロシア中銀の外貨準備高が一部凍結された後でも、米ドルの代替として各国中央銀行が金に殺到することはないと思われます。
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