Article Title
ロシアのウクライナ軍事侵攻による、アジア経済への影響は?
2022/04/12

Share

Line

LinkedIn

URLをコピー


概要

ロシアによるウクライナへの軍事侵攻は、中国やその他のアジア諸国にどのような影響を及ぼす可能性があるのか、そして、それが投資家にとって、どのようなインプリケーションがあるのかを考えます。



Article Body Text

アジア経済に与える影響

ロシアによるウクライナへの軍事侵攻は、世界経済に大きな影響を与えると考えられます。アジア経済もその影響を逃れることはできないでしょう。アジアとロシアの直接の経済的な結びつきは、限定的なものですが、エネルギー価格の高騰の影響は懸念されます。アジアには、たとえば、タイ、インド、韓国など、原油の輸入依存度が高い国もあります。しかし、韓国やタイ、そしてベトナムなどは経常黒字国であり、こうした外的ショックの影響を比較的うまく吸収できるものとみています。一方、インドやフィリピンといった、経済のファンダメンタルズ(基礎的条件)が比較的ぜい弱とみられる国については、慎重にみていく必要があるでしょう。

中国に関しては、経済規模が大きいことから、直接的な影響はより限定的とみられます。また、産業構造が多様化していること、政府による統制などによって、外的ショックをよりうまく吸収していくことが可能と考えられます。ロシアにとって、中国は最も重要な貿易相手国です。ロシアの中国への貿易依存は、今後、いっそう高まることが予想されます。しかし、中国にとってみれば、これによっても大きな影響は及ぼさず、貿易関係の非対称性を強めることになるとみられます。このことは、長期的にみると、中国政府が課題としている、人民元の国際化などを進めることに寄与する可能性があると考えられます。

不動産市場の回復は鈍く、また、ゼロ・コロナ政策によって多くの都市でロックダウン状態が続くと、消費へのマイナスの影響が出ることも懸念されます。中国当局による財政・金融両面の政策動向や、それにより景気が下支えされていくかを注視していく必要があると考えます。

投資へのインプリケーション

昨年2021年に比べて、2022年の金融市場は、値動きが大きく、難しい展開に直面しています。しかし、こうした状況がすべてマイナスであるというわけではないと考えます。

米国のイールドカーブの状況をみると、市場は米金融当局による利上げ見通しの引き上げなどを、既に織り込んでいるとみられます。

債券のアクティブ運用を行う運用者にとっては、投資機会をもたらすでしょう。高クオリティの発行体の利回りは低下するものとみられます。それと同時に、ハイ・イールド債券市場については、利回りは上昇し、高水準に達する可能性があります。中国のハイ・イールド債券利回りは、中国当局の意図に反して、上昇を続けるとみられます。

中国株式市場の動向

足元の中国株式市場は低調です。特に、中国のハイテク企業の株価は大きく下落しましたが、これは、企業のファンダメンタルズ(基礎的条件)などによって引き起こされたものではなく、米中対立などの影響を受けた下落であると考えられます。反発の兆しはみられますが、回復は道半ばな状況です。当面は、値動きの大きい展開が続く可能性があることに加えて、インフレの影響などの懸念は残るでしょう。いくつかのセクターの株式については、バリュエーション(投資価値指標)水準が低下しています(たとえば、公益事業セクターなど)。一方で、高バリュエーション水準にとどまっているセクターも存在します。短期的には引き続き、経済状況、クレジット市場の動向、新型コロナウイルスの感染状況とそれに伴うロックダウンによる経済へ影響などには注視していく必要があるとみています。

 


●当資料はピクテ・グループの海外拠点からの情報提供に基づき、ピクテ・ジャパン株式会社が翻訳・編集し、作成した資料であり、特定の商品の勧誘や売買の推奨等を目的としたものではなく、また特定の銘柄および市場の推奨やその価格動向を示唆するものでもありません。
●運用による損益は、すべて投資者の皆さまに帰属します。
●当資料に記載された過去の実績は、将来の成果等を示唆あるいは保証するものではありません。
●当資料は信頼できると考えられる情報に基づき作成されていますが、その正確性、完全性、使用目的への適合性を保証するものではありません。
●当資料中に示された情報等は、作成日現在のものであり、事前の連絡なしに変更されることがあります。
●投資信託は預金等ではなく元本および利回りの保証はありません。
●投資信託は、預金や保険契約と異なり、預金保険機構・保険契約者保護機構の保護の対象ではありません。
●登録金融機関でご購入いただいた投資信託は、投資者保護基金の対象とはなりません。
●当資料に掲載されているいかなる情報も、法務、会計、税務、経営、投資その他に係る助言を構成するものではありません。

手数料およびリスクについてはこちら




関連記事


2024年7月の新興国株式市場

持続可能で再生可能な未来に貢献する建物

中央銀行はなぜ金を保有するのか?

2024年6月の新興国株式市場

新興国市場:メキシコ初の女性大統領~選挙戦の後の株価調整は中長期的な投資機会とみる

イベント・ドリブン戦略に好機を提供するアジアの肥沃な土壌