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- 2022年10月の新興国株式市場と今後の見通し
10月の新興国株式市場(MSCI新興国株価指数、現地通貨ベース)は月間で下落となりました。主要国別の市場動向、今後の見通しについてご紹介いたします。
※記載内容はすべて海外市場の月末1営業日前ベースでのコメントになります。
2022年10月の新興国株式市場
10月の新興国株式市場(現地通貨ベース)は月間で下落となりました。
新興国株式市場は月初、主要中央銀行による利上げペースが緩やかになるとの期待などから上昇しました。その後、米国が安全保障上の懸念を理由に、中国に対する半導体および関連製造装置の輸出制限を強化したことを受けて、米中対立の激化が懸念されたことなどから下落しました。さらに、米国の好調な雇用統計の発表などから、米金融当局の積極的な金融引き締めは続くとの見方が強まり、米長期金利が上昇したことなどもマイナス材料となりました。月後半には、米金融当局が利上げペースを減速させるとの見方が高まったことはプラス材料となりましたが、中国の新指導部が発足し、習近平国家主席への権力集中が鮮明となり、政治リスクが大きく意識されたことなどが重荷となり、月間でも下落となりました。
主要国別、セクター別の動き(現地通貨ベース)
国別(現地通貨ベース)では、ブラジルは、大統領選が予想以上の接戦になったことに加え、連邦議会選挙の結果、保守派が多数を占めたことなどから、従来の予測より中道寄りの政策になるとの見方がプラス材料となったほか、原油価格の上昇などを背景に上昇しました。南アフリカは、主力の素材や金融セクターの銘柄を中心に上昇しました。韓国は、米国のハイテク株の反発などを受けて、主力の情報技術セクターの銘柄を中心に上昇しました。インドは、銀行やIT銘柄などを中心に好決算の発表が相次いだことなどが追い風となり、上昇しました。一方、台湾は、米国の中国を念頭においた半導体輸出規制を受けて主力の半導体銘柄が大きく下落したほか、中国共産党大会において台湾統一に向けた強硬姿勢が示され、地政学リスクが高まったことなどから、下落しました。中国は、ゼロコロナ政策の継続、ITや不動産などの産業規制が続くとの見方が強まったことや、習近平国家主席への権力集中が鮮明となったことで政治リスクの高まりなどから、下落しました。
セクター別(現地通貨ベース)では、エネルギー、ヘルスケア、素材などが上昇した一方、一般消費財・サービス、コミュニケーション・サービス、不動産などは大きく下落しました。
長期的には、新興国経済は、若い労働人口が豊富であることなどを背景に、中間所得層の持続的な拡大や構造変化に後押しされ、先進国を凌ぐ成長力を有しているとの見方には変更ありません。
今後の見通し
足元では、ウクライナ情勢の長期化や、世界的なインフレ率の高止まり、米国をはじめとした主要中央銀行による金融引き締めの動きなどを背景に、世界経済の先行き不透明感が増しています。こうしたことは、短期的には新興国にもマイナスの影響を与える懸念があります。また、中国などを中心に、新型コロナウイルスの感染再拡大による経済活動への影響に対する懸念も、依然として残っています。しかし、これらのことは、新興国の中長期的な経済成長見通しに大きな影響を及ぼさないと考えています。
アジアを中心に新興国は「デジタル化」や「テクノロジー」の分野をけん引する存在であるとともに、脱炭素など世界的な環境課題においても、CO2(二酸化炭素)排出削減などで重要な役割を担いつつあるとみており、これまで見過ごされてきた、あるいは新たな価値の発掘につながる可能性があると期待しています。
足元では中国株式は低調な動きとなっていますが、低迷を続ける不動産セクターなどに業況改善の兆しや、ゼロコロナ政策による制限措置が解除され、経済活動の本格的な再開の兆しなどがみられはじめた場合には、株価が大きく反発する可能性もあると考えています。
新興国株式のバリュエーション(投資価値評価)については、先進国株式に比べて依然として魅力的な水準にあり、新興国株式市場を下支えする材料になると考えられます。新興国通貨についても、引き続き米ドルに比べて相対的な割安感があるとみています。
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