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- 2023年3月の新興国株式市場と今後の見通し
3月の新興国株式市場(現地通貨ベース)は月間で上昇となりました。主要国別の市場動向、今後の見通しについてご紹介いたします。
※記載内容はすべて海外市場の月末1営業日前ベースでのコメントになります。
2023年3月の新興国株式市場
新興国株式市場は月初、中国の製造業購買担当者景気指数(PMI)が力強い回復をみせたことなどを受けて上昇して始まりましたが、その後、中国の第14期全国人民代表大会(全人代)で、2023年の経済成長率目標が5%前後と昨年の目標より低い水準に設定されたことが投資家の失望を誘ったほか、米金融当局者のタカ派的な発言などを受けて下落に転じました。さらに、シリコンバレーバンク(SVB)をはじめ米銀の相次ぐ経営破綻や、その余波を受けて欧州の金融機関の経営不安が高まったことなどから、世界的な株安となりました。しかし、当局の迅速な対応などにより、こうした金融不安は後退し、月後半にかけて新興国株式市場も回復基調となり、月間でも上昇となりました。
主要国別、セクター別の動き(現地通貨ベース)
国別(現地通貨ベース)では、中国は景気回復を示唆する経済指標の発表に加えて、政府がデジタル分野の強化方針を示したことなどを受けて、情報技術やコミュニケーション・サービスの銘柄などを中心に上昇しました。台湾は、月半ば以降、米連邦準備制度理事会(FRB)が金融引き締めペースを緩めるとの見方から米長期金利が低下し、米ハイテク株高となった流れを受けて、半導体など主力の情報技術の銘柄を中心に上昇しました。韓国は、月後半にかけての米ハイテク株高の流れや、日韓関係改善への取り組みが経済にプラス寄与するとの見方などを受けて、主力の情報技術セクターを中心に上昇しました。南アフリカでは、欧米の金融機関から広がった金融不安を受けて金価格が急上昇し、その恩恵を受けるとみられる素材セクターの銘柄が大幅上昇となりました。一方、インドは、月前半は景気回復期待や、不正会計疑惑に揺れる新興財閥グループに出資する米投資会社が同グループ株の買い増しの可能性を示唆したことなどが支援材料となり上昇しましたが、その後は欧米発の金融不安の高まりや、そうした中でも月後半にFRBが利上げを実施したことなどから、資金流出懸念が根強く残り、月間では下落となりました。ブラジルは、主力のエネルギーセクターなどを中心に下落しました。ルラ政権が燃料課税を復活させた一方で、課税によるインフレを抑えるため、ブラジル石油公社(ペトロブラス)がガソリン卸売価格を値下げすることとなり、同社業績へのマイナスの影響が懸念されました。
セクター別(現地通貨ベース)では、コミュニケーション・サービスや情報技術、資本財・サービスなどが上昇しました。一方、不動産、エネルギー、金融などは下落しました。
今後の見通し
長期的には、新興国経済は、若い労働人口が豊富であることなどを背景に、中間所得層の持続的な拡大や構造変化に後押しされ、先進国を凌ぐ成長力を有しているとの見方には変更ありません。
米国のインフレの伸びはピークを迎えつつあるとみられます。米国の利上げサイクルの終了も視野に入りつつあり、米ドルの一段高の可能性も後退すると考えられます。こうした流れは新興国株式市場の追い風になると考えられます。
新興国株式のバリュエーション(投資価値評価)は、先進国株式に比べて依然として魅力的な水準にあります。ゼロコロナ政策の終了による中国の経済再開により、企業業績の回復や周辺国・地域経済へのプラスの恩恵などが期待されますが、これらのプラス材料は株価に十分には織り込まれていないとみています。
中国の経済正常化の道のりは平坦なものではないとみられますが、多くの投資家は中国経済に対して、より明るい見通しを持ち始めています。こうした状況を踏まえると、引き続き今後数ヵ月の株価下落局面は、新たな投資の機会となる可能性もあると考えます。
アジアを中心に新興国は「デジタル化」や「テクノロジー」の分野をけん引する存在であるとともに、脱炭素など世界的な環境課題においても、CO2(二酸化炭素)排出削減などで重要な役割を担いつつあるとみており、これまで見過ごされてきた、あるいは新たな価値の発掘につながる可能性があると期待しています。
(※将来の市場環境の変動等により、上記の内容が変更される場合があります。)
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