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- 2023年5月の新興国株式市場と今後の見通し
5月の新興国株式市場(現地通貨ベース)は月間で小幅上昇となりました。主要国別の市場動向、今後の見通しについてご紹介いたします。
※記載内容はすべて海外市場の月末1営業日前ベースでのコメントになります。
2023年5月の新興国株式市場
新興国株式市場は月初、米国の債務上限問題や米地銀の破綻懸念などを受けて、上値の重い展開となりました。その後、米国の利上げサイクルが終了に近づいているとの観測を受けて上昇する局面もありましたが、中国の4月の経済指標が事前予想より低調であったことから、中国景気に対する先行き不透明感が高まり、再び下落基調となりました。さらに、米国の債務上限協議の長期化懸念も、投資家のリスク回避の動きを後押しするかたちとなりました。一方、月末にかけては、半導体市況の回復期待やAI(人工知能)関連株ブームなどを受けて世界的にハイテク関連株高となり、ハイテク関連銘柄を主力とする台湾や韓国の株式市場の追い風となりました。
主要国別、セクター別の動き(現地通貨ベース)
国別(現地通貨ベース)では、台湾は、主力の半導体関連銘柄の急騰を受けて大幅上昇となりました。インドは、インフレ率の低下を受けてインド準備銀行(中銀)による利上げ観測が後退したことに加えて、良好な企業決算発表などが追い風となり、上昇しました。加えて、インド最高裁判所が任命した委員会が、米調査会社が主張した新興財閥グループ企業による株価操作疑惑について、決定的な証拠はないとする報告書を公表したことを受けて、投資家心理が改善したこともプラス材料となりました。ブラジルは、良好な決算を発表した企業や、金融セクターの銘柄を中心に上昇しました。韓国は、情報技術セクターの銘柄を中心に上昇しました。一方、中国は、景気に対する先行き不透明感が高まったことなどから下落し、下落率も相対的に大きくなりました。南アフリカは、主力のインターネット関連企業などを中心に全般的に下落となりました。
セクター別(現地通貨ベース)では、情報技術が大幅に上昇したほかは低調でした。特に、不動産は大きく下落したほか、素材、コミュニケーション・サービス、一般消費財・サービスなども相対的に下落率が大きくなりました。
今後の見通し
長期的には、新興国経済は、若い労働人口が豊富であることなどを背景に、中間所得層の持続的な拡大や構造変化に後押しされ、先進国を凌ぐ成長力を有しているとの見方には変更ありません。
米国のインフレ率の伸びはピークを迎えつつあるとみられます。米国の利上げサイクルの終了も視野に入りつつあり、米ドルの一段高の可能性は後退すると考えられます。こうした流れは新興国株式市場の追い風になると考えられます。
新興国株式のバリュエーション(投資価値評価)は、先進国株式に比べて依然として魅力的な水準にあります。ゼロコロナ政策の終了による中国の経済再開により、企業業績の回復や周辺国・地域経済へのプラスの恩恵などが期待されますが、これらのプラス材料は依然として株価に十分には織り込まれていないとみています。
アジアを中心に新興国は「デジタル化」や「テクノロジー」の分野をけん引する存在であるとともに、脱炭素など世界的な環境課題においても、CO2(二酸化炭素)排出削減などで重要な役割を担いつつあるとみており、これまで見過ごされてきた、あるいは新たな価値の発掘につながる可能性があると期待しています。
(※将来の市場環境の変動等により、上記の内容が変更される場合があります。)
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