Article Title
債券市場の大転換に備えたポジションを構築する
2024/02/29

Share

Line

LinkedIn

URLをコピー


概要

国債や社債の市場は、ボラティリティ(変動率)の大幅な上昇に見舞われる公算が大きいように思われます。もっとも、慎重な投資家には、リスクの対価を手にする機会が提供されると考えます。



Article Body Text

債券投資の新しい時代が到来しています。投資家は、世界金融危機後の10年間に渡るゼロ金利時代から、市場がいかに大きな転換を遂げたかを、徐々に理解し始めています。換言すると、投資家は、再び、債券やクレジット商品を保有することで報われる可能性があるということです。しかし、落とし穴には留意が必要です。1980年代以降、約30年続いた強気相場とは違い、今回の相場では、恐らく「上げ潮が全ての船を持ち上げる」ように、全ての債券が上昇することは予想出来ず、難しい局面を乗り切るために、巧みな舵取りが要求されるからです。

債券利回りが、何年間も目にすることのなかった高水準に留まる環境では、ゼロ金利が長期間に渡って続いた時代とは異なり、投資リターンを得るために優良株式を探し出す必要はありません。債券市場や社債市場を、高いインカムゲインの源泉として頼ることが可能であり、しかも、インカムゲインが、ボラティリティの影響を軽減する緩衝材ともなり得るからです。

しかし、このような金融商品から得られるリターンの源泉は、利回りだけではありません。金利が低下に転じ始める局面では、大幅なキャピタルゲインが得られる可能性があるからです。もっとも、市場のボラティリティの上昇が予想されることから、慎重かつ積極的な姿勢で投資に臨むことが必要です。賢明な投資家は、今後数年間、債券から1桁台後半のリターンを得られる可能性があると考えます。


バーベル戦略からベリー戦略へ*

2023年はバーベル戦略が奏功しました。低リスクの短期債の利回りが数十年ぶりの高水準で推移する状況に乗じて、マネーマーケット商品の大きなポジションを構築する一方で、プライベート・クレジット等の、流動性は低くても高いリターンが見込まれる商品にリスクを配分したからです。

一方、政策金利が頭打ちとなり、先進国経済の減速を受けて市場金利が低下し始める足元の局面では、スプレッドが最も魅力的な投資の機会を提供しており、社債、新興国債券を中心とした国債、マネーマーケット商品、プライベート市場等、リスクレベルを問わず、あらゆるセクターが注目されます(図表1)。



もっとも、機敏な投資が求められることには留意が必要です。過去のサイクルとは異なり、購入した債券を保有するだけでよいというわけではないからです。金融政策の行方は、市場が予想しているほど平担なものではないと考えます。

例えば、米連邦準備制度理事会(FRB)による年内の利下げのペースと幅について、市場は期待し過ぎてきたように思われます。米国のインフレ率、特に、サービス価格の上昇率は、市場が予想していた以上に、根強いものであることが明らかになっています。また、政府債務が積み上がる状況下では、巨額の財政赤字が債券利回りに上昇圧力をかけ続けることが予想されます。

緩やかな利下げが予想される金融政策の道筋と、相対的に高水準のターミナルレート(到達金利)が相まって、金利ボラティリティの大幅な上昇をもたらす公算が大きいように思われます。ボラティリティが上昇する局面では、資産クラス間や金融商品間のリターン格差が、市場の動向を把握し、分析力と洞察力を駆使して超過収益を獲得することの出来る投資家が報われる状況を生み出します。


*バーベル戦略:短期債と長期債を組み合わせる戦略、ベリー戦略:中期債に投資する戦略



新興国債券の魅力

足元、見過ごされがちだった新興国債券市場は、向こう数年間を通じて、超過収益の重要な源泉となる態勢を整えています。先進国債券利回りの乱高下と中国の脆弱な景気回復を受けて、新興国債券の2023年の通年リターンは低調でしたが、以下の理由から、2024年の見通しは明るいと考えます。

先ず、最も安全なソブリン債でさえも乱高下していることから、「先進国市場は安全と同義であり、新興国市場は乱高下する」といった思い込みは払拭されるはずだということです。

次に、中国市場の重要性が薄れたことです。新興国市場は、中国を先導役とみなす傾向が強かったものの、中国が大きな需要源であり、また観光収入の主要な供給源でもあった東南アジア諸国では、国内経済が成熟するにつれて、国内需要が経済成長の一層大きな原動力となっており、その結果、海外からの直接投資を惹きつけています。



最後に、国によってばらつきはあるものの、新興国の中央銀行が、総じて、コロナ禍後のインフレ急騰に対して、迅速かつ積極的な対策を講じてきたということです。その結果、先進国中銀が未だに利下げに踏み切れないのに対して、新興国では金融政策が緩和に転じています。こうした状況が、国内の投資意欲の回復と相まって、現地通貨建て新興国債券の魅力を一層増しています。


パッシブ運用のリスク

量的金融緩和とゼロ金利の時代には、債券市場のリターンのばらつきが小さく、総じて、利回りに欠ける状況に投資家が慣れ切ってしまったことから、指数に連動する成果を目指すパッシブ運用の魅力が一段と増す結果になりました。超過収益が得にくい局面でコスト削減に注力することは理に適っていたからです。

ところが、状況は変わっています。相対的に高い利回りとリターンのばらつきがアクティブ運用の優位性を増しているからです。リターン格差が、一桁台半ばまたは後半、あるいは二桁の場合には、パッシブ運用とアクティブ運用のコスト差の重要性は薄れます。

 

「投資家には新しい世界が開けています。インフレのボラティリティが大幅に上昇し、従って、金利のボラティリティも上昇する世界です。」

 

投資家には新しい世界が開けています。インフレのボラティリティが大幅に上昇し、従って、金利変動のボラティリティも上昇する世界です。債券資産クラス間のリターン格差は大幅に広がることが予想されます。債券投資に際して、詳細な分析、デュー・デリジェンス、ならびに、慎重なリスク評価が実行されるならば、投資家は、何十年も目にすることのなかったような高いリターンを実現することが可能だと考えます。

 


●当資料はピクテ・グループの海外拠点からの情報提供に基づき、ピクテ・ジャパン株式会社が翻訳・編集し、作成した資料であり、特定の商品の勧誘や売買の推奨等を目的としたものではなく、また特定の銘柄および市場の推奨やその価格動向を示唆するものでもありません。
●運用による損益は、すべて投資者の皆さまに帰属します。
●当資料に記載された過去の実績は、将来の成果等を示唆あるいは保証するものではありません。
●当資料は信頼できると考えられる情報に基づき作成されていますが、その正確性、完全性、使用目的への適合性を保証するものではありません。
●当資料中に示された情報等は、作成日現在のものであり、事前の連絡なしに変更されることがあります。
●投資信託は預金等ではなく元本および利回りの保証はありません。
●投資信託は、預金や保険契約と異なり、預金保険機構・保険契約者保護機構の保護の対象ではありません。
●登録金融機関でご購入いただいた投資信託は、投資者保護基金の対象とはなりません。
●当資料に掲載されているいかなる情報も、法務、会計、税務、経営、投資その他に係る助言を構成するものではありません。

手数料およびリスクについてはこちら

個別の銘柄・企業については、あくまでも参考であり、その銘柄・企業の売買を推奨するものではありません。




関連記事


ディープフェイクを見破る技術

人工知能(AI)の真の可能性

米大統領選を終えて新興国債券市場を展望する

データセンター:AIのインパクトを活用する

2024年11月の新興国株式市場

Climate crunch 気候危機 ~ネットゼロの移行リスクに迫る