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- 暴落しても退場すべきではない ~ 中国株式がグローバル株式ポートフォリオの組入資産であり続けるべき理由
中国の経済と株式市場は苦戦を強いられてきましたが、どこに注目すればよいかを知っていれば、投資の好機には事欠かないと考えます。
中国株式に資金を投じてきた投資家は、ここ数年、厳しい状況に晒されています。期待外れの経済成長、複数の業界を標的とした規制当局の締め付け、米中間の緊張等が市場の下押し要因となってきたからですが、懸念される状況は未だに解決されていません。
不動産不況が経済成長を下押す中、デフレ圧力は払拭されない可能性があり、輸出も伸び悩みが予想されます。再生可能エネルギーやクリーン・エネルギー関連の巨額の投資によって持ち堪えてきたインフラ投資の拡大局面も、この2年で発電容量が急増したことを考えると、減速の公算が大きいように思われます。また、国営企業で働く社員は、2割から3割の賃金カットの影響を未だに感じているように思われます。
政策支援が無ければ、状況の改善は見込めそうにありませんが、幸いにも朗報が伝えられています。
当局は、預金準備率(RRR)や最優遇貸出金利(LPR)等、金利の引き下げを行うと同時に、住宅購入規制(HPR)の緩和を通じて、不動産セクターに対する金融支援策を講じ、テクノロジーや自動車等、主要産業への投資を促しています。
こうした施策は、経済を即刻、好転させるには足りないとしても、持続可能な景気回復の基盤を築いています。高水準に積み上がった債務や過剰な不動産投資を取り巻く環境を悪化させることの無いよう、意図的に控えめな施策が講じられています。
また、年内に、大方の予想通り、米連邦準備制度理事会(FRB)が利下げを開始した場合は、中国政府が追加の支援策を講じることが予想されます。FRBが利下げに転じれば、中国にとっては資本の流出や、もう一段の通貨安を引き起こすリスクを回避しつつ、利下げを行う余地が広がるからです。
ピクテのエコノミスト・チームは、2024年の中国のGDP(国内総生産)成長率が、市場のコンセンサス予想を上回って潜在成長率にほぼ等しく、先進国の予想成長率のほぼ5倍にあたる4.8%に達するものと見ています。
要はバランス
そのようなシナリオが実現した場合、株式市場はどうなるでしょうか?この規模の成長では、株式市場の強い上昇を促すことは出来ないにしても、市場の足を引っ張る可能性も低いと思われます。
事実、市場の流動性は低く、株価の変動は激しさを増しています。例えば、2023年12月下旬には、ビデオゲーム・セクターに対する規制強化の報道を受けて、当セクター大手の網易(ネットイーズ)の株価が、一日で約25%、テンセント1株は約12%、下落しました。とはいえ、中国には投資出来ないとの見方には同意出来ません。オンラインゲーム銘柄が急落したことは事実ですが、政府は企業を支援する姿勢を強めると同時に、安定的かつ友好的な政策環境の整備を提唱しており、規制は、総じて緩和の方向に向かっているように思われるからです。
また、バリュエーションは、極めて魅力的な水準にあります。ピクテのマルチアセット戦略モデルは、中国の株式市場が過去20年との比較でも、世界の主要株式市場との比較でも、最も割安な水準にあることを示唆しています。このこと自体が買いの理由にはならなくとも、先行きが極めて有望な市場の買い場が提供されていることは確かです。
海外投資家動向も、中国市場の反発が近い、という可能性を示唆しています。中国人民銀行(中央銀行)のデータによると、海外投資家は、中国株式を過去2年間、売却し続けており、買いに転じる余地は十分に残されているように思われます。また、外国人投資家の買いが始まりつつあることを示唆するデータも散見されます。EPFRによれば、2024年年初来、500億米ドルの資金が株式市場に流入しており、ブルームバーグによると、ここ数週間の海外投資家の株式購入額は売却額を上回っています。
中国株式投資の鍵となるのは、セクターと銘柄の選別です。中国経済のけん引役が、過去の時代にそうであった不動産や建設セクター等から、新しい時代をけん引する電気自動車(EV)、産業オートメーション(インダストリアル・オートメーション)、人工知能(AI)、国産技術等に移行しつつあるのは明らかです。
投資家心理が好転するには時間がかかるかもしれません。また、経済の減速、政策の不透明性、人口の高齢化、地政学的緊張の継続等の構造要因に係る懸念を勘案すると、株式市場が過去の水準を遥かに下回って推移する可能性も否めません。
とはいえ、中国市場には数千社の企業が上場しています。ピクテは、成長性が高く、バリュエーションが魅力的な優良銘柄に焦点を当てた運用を続けています。
中国株式市場を取り巻く環境は、2023年を通じて厳しいものでしたが、中長期的なファンダメンタルズが良好な企業と、先行きが思わしくない企業が乖離する動きを見せ始めていることには勇気付けられます。また、特定のトレンドに注目することからも、投資の対価が期待されると考えます。消費傾向の変化が一例です。例えば、消費者は相対的に低価格の商品を買い始めていることから、格安eコマースアプリを運営するPDDの株価が堅調に推移する一方で、高額商品関連銘柄は苦戦を強いられています(図表1)。
分散の効果
勿論、リスクは残ります。2024年年初の台湾総統選挙の他、米国にトランプ新政権が誕生する可能性等、地政学リスクは、特に、懸念されます。米国では、民主、共和両党の候補者とも、人気が増し、票につながるよう、中国に対して強気の発言をする公算が大きいと考えます。
このような環境では、ポートフォリオの分散を維持することが重要ですが、特に、以下の二つの分野に投資の好機があると考えます。一つは、構造変化によって長期的な成長が見込まれる電気自動車(EV)、インダストリアル・オートメーション、人工知能(AI)、輸出型の産業等が有望だということです。勿論、短期的な観点では、需給の変動の影響を免れることが困難であり、脆弱性を抱える産業もあることから、トップダウン型のセクターや銘柄選択の重要性が増すと考えます。(消費セクターが典型例です。eコマース企業は厳しい競争と売上の伸び悩みに直面していますが、前述のPDD等は、相対的に大きなトレンドに抵抗する力を有していると考えます)。
もう一つは、需要が回復しつつあるセクターが散見されるということです。テクノロジー分野では、コンピューターやスマートフォン(ならびにそれぞれの部品)市場が、買い換えサイクル、在庫の積み増し、AIの登場等を背景に好調です。また、当局の締め付けからの回復途上にあり、以前よりも友好的な政策スタンスの恩恵を受けているセクターもあります。例えば、教育業界は、2021年以降、学習塾に対する規制強化の打撃を受けたものの、現在は落ち着きを取り戻しているように思われます。個別銘柄では、旺盛な需要を背景に、ニュー・オリエンタル・エデュケーション等が好調です。
経済情勢の安定化と地政学リスクの後退を確認するまでは、ある程度の警戒が必要だと考えますが、中国がポートフォリオの戦略要素であり、今後もそうあり続けるべきであることには疑いの余地がありません。成功の鍵はセクターや銘柄を厳選し、ポートフォリオの分散と長期投資を心がけること、また、中国政府の経済政策に整合する投資を行って、堅固なファンダメンタルズと世界のリーダーとなる素質を備えた企業の発掘に励むことです。
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