Article Title
金価格、今後の注目ポイントは?
2025/04/25

Share

Line

LinkedIn

URLをコピー


概要

・金融市場における米国に対する信頼低下が2025年4月以降の金価格の上昇を牽引してきた
・トランプ政権の掲げる政策のいくつかは、先行きの金市場にとってプラス要因に
・2025年に入っても継続する中央銀行の金購入が金市場の下支え役として注目される



Article Body Text

 ■2025年4月以降は、米国に対する信頼の低下が金価格の上昇を牽引

米ドルベースの金価格は2024年に年間で25%を超える上昇率を記録し、2025年に入っても騰勢を強めています。足元では、これまでの急ピッチな上昇に対する金相場の過熱感が意識されやすく、株式市場が反発していく中で、やや調整する局面もあるとみられますが、米国のトランプ政権の政策への不信感や金融政策の先行き不透明感の高まりを背景に、先行きの金価格については明るい見通しを見込む向きは増えています。

金はそのもの自体に価値がある(国や企業の信用の上に価値が成り立っているわけではない)資産であるため比較的安全な資産として注目されています。また、金は一般に、米ドルの代替資産とみなされています。金価格の変動要因は様々なものがありますが、2025年4月以降は特に、金融市場の不安定化や、米国の資産および米ドルの信用力低下への懸念から、金の比較的安全な資産という側面と米ドルの代替としての側面が注目されたとみられます。



■トランプ政権の掲げるいくつかの政策は、金市場にとってプラス材料に

トランプ大統領の発言等によるところも大きいものの、トランプ政権が進めようとしている政策は、金市場にとってプラスに働く可能性があると考えられます。

実際、通商部分では、相互関税が発動されたことで、米国のみならず世界経済の減速やインフレ率の上昇への懸念が高まりました。また、移民規制も同様に、労働市場のひっ迫をもたらし、サービス価格の上昇を通じてインフレ率を上昇させるほか、移民の急減によって労働力の供給が弱まる一方、生産性の伸びは鈍化する可能性があります。減税については景気の下支え要因となるものの、財政赤字の拡大や債務負担能力の悪化が一段と進み、米ドルの信用力低下で米ドル安を招く懸念もあります。

不確実性の高い状況が継続する中、景気減速やインフレ高進リスクのある環境において、相対的に、1)インフレに強い資産、2)米ドル安に強い資産、3)景気減速に強い資産、といった金の特性が一段と注目されると考えられます。



■物価上昇を伴った景気減速局面で、金のパフォーマンスは好調だった

実際に、過去の金価格のパフォーマンスを検証すると、景気減速やインフレ高進リスクのある環境(物価上昇を伴う景気減速局面)で、金は好調なパフォーマンスとなっていました。


■中央銀行の金購入

近年、金が歴史的な高水準となった背景には、各国中央銀行による記録的な金買いも挙げられます。

中央銀行は、「外貨準備」の安全性と分散を確保するため、「通貨」として金を保有しており、過去3年では、年間で1,000トン規模で金を買い増しました。近年、注目される動きは新興国の中央銀行による金買いの拡大です。リーマン・ショックやユーロ・ソブリン危機の発生をきっかけに、米ドルやユーロなどの主要通貨に対する信頼が揺らいでおり、特定の通貨への依存度を下げ、外貨準備の多様化を図っているとみられます。特に、2022年のロシアのウクライナ侵攻以降、制裁リスクのある米ドルから金に資金を移す動きが目立ったほか、2025年に入ってからも、中央銀行による旺盛な金需要が継続しています。



ワールド・ゴールド・カウンシルの調査(2024年度)によると、各国の中央銀行は「長期的な価値の保存」「政治的リスクのなさ」「地政学的な多様化」などを金保有の理由として挙げています。また、「今後5年で世界の中銀の購入量が増える※」との回答が69%と、2022年(46%)と2023年(62%)から増加しており、引き続き、中央銀行による金需要は強く、金価格の上昇を支える要因として期待されます。

※「かなり増える」、「増える」の合計



 



●当資料はピクテ・ジャパン株式会社が作成した資料であり、特定の商品の勧誘や売買の推奨等を目的としたものではなく、また特定の銘柄および市場の推奨やその価格動向を示唆するものでもありません。
●運用による損益は、すべて投資者の皆さまに帰属します。
●当資料に記載された過去の実績は、将来の成果等を示唆あるいは保証するものではありません。
●当資料は信頼できると考えられる情報に基づき作成されていますが、その正確性、完全性、使用目的への適合性を保証するものではありません。
●当資料中に示された情報等は、作成日現在のものであり、事前の連絡なしに変更されることがあります。
●投資信託は預金等ではなく元本および利回りの保証はありません。
●投資信託は、預金や保険契約と異なり、預金保険機構・保険契約者保護機構の保護の対象ではありません。
●登録金融機関でご購入いただいた投資信託は、投資者保護基金の対象とはなりません。
●当資料に掲載されているいかなる情報も、法務、会計、税務、経営、投資その他に係る助言を構成するものではありません。

手数料およびリスクについてはこちら




関連記事


過去との決別を示す~米国債と米ドルの同時下落が投資家に警告を鳴らす理由

エネルギー転換を追跡する

米ドル下落の中で過去最高値を更新した金価格

米国経済史の分岐点か

今、ヨーロッパのディフェンシブ・クオリティ銘柄に注目する理由