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- AI(人工知能)の普及に伴い、その将来性を精査する時が来ている
AI(人工知能)投資の普及に伴って商機が広がっていますが、一部の企業群は特に有利な立場にあると考えます。
この1年で、AIに対する関心が急速に強まり、このテクノロジーが雇用やビジネス、ひいては人類の未来に何を意味するかを巡って、期待と不安が交錯する年となりました。私達は、生成AIが知識の習得や生産性の向上に寄与し、新たな成長への道を開く可能性があると確信しており、先行きを楽観視しています。「生成AI」という用語が使われているのは、このモデルが文書や画像や音楽の生成に使われるためです。2023年はAI喧伝の年となりましたが、2024年は商機が広がる年になり得ると考えます。また、その恩恵を享受する態勢を整えた二つの企業群が、特に有利な立場にあると考えます。一つはヘルスケア企業、もう一つは、オープンユースの対極にあり、知的財産の収益化が見込まれるハイテク企業です。
複雑なタスクを遂行させるためにコンピューターを訓練することの出来る「AIモデル(機械学習モデル)」は、過去5年間、飛躍的な発展を遂げています。大量のデータを使用する、データ集約的な企業の間では、様々な領域で急速にAIモデルに対する関心が強まり、投資が拡大しています。実際に、保険、金融サービス、一部の製造業等のデータ集約型企業は、最も早い段階で生成AIを導入し、その恩恵を享受しています。
近い将来、AIの進化から最も大きな恩恵を受ける可能性が高いのは、医療技術ならびにライフサイエンス(生命科学)関連企業であると考えます。また、生成AIは、バイオ医薬品企業やマネージド・ケア関連企業が競争力を維持するために必要とするイノベーション(技術革新)にも寄与すると考えます。一方、ハイテク・セクターでは、一部の企業がAIの恩恵の収益化に成功するように思われます。以下は、ヘルスケア、ハイテク両セクターにおけるAIの展望についてのピクテの見解です。
「生成AIは、すでに診断、手術結果ならびに医療画像の改善に寄与しています。」
ヘルスケア・セクター
中国では、生成AIが考案した新薬候補が、すでにヒトを治験者とする段階に進んだことが報告されています。同様に欧米でも、新薬の発見や、様々なAI対応型医療機器の開発に生成AIが使われています。もっとも、生成AIは、当面のところ、革命を起こすというよりは「進化」を続け、段階的な発展を遂げるものとみており、恐らく、以下の3つの分野でAIの応用が進んでいくと考えます。
最初に挙げられるのは、初期のうちにAIを導入した医療技術やライフサイエンス関連企業が、AIのデータ活用能力が増すに連れて、市場の拡大を牽引していく可能性があるということです。生成AIは、すでに診断、手術結果や医療画像の改善に寄与しています。また、ロボット手術にも使われており、今後一段のイノベーションが期待されます。一方、画像診断需要が放射線科の医師数の伸びを遥かに上回っていることから、生成AIを使った画像診断や放射線医学の分野にも拡大の可能性があるとみています。AIを使った医療用画像処理は、速度と精度を増しつつ、収集する情報の範囲を広げています。
次にあげられるのが、AIの導入に因る価格設定モデルの改善が、マネージド・ケア事業のデジタル化を促す可能性があるということです。AIがその役割を広げるに連れて、管理医療の効率性が向上し、自動化が進展、個々の患者のニーズに合わせたサービスが提供されることとなり、その結果、マネージド・ケア事業の収益性が改善される可能性があると思われるからです。
最後に挙げられるのが、新薬の開発プロセスです。新薬の開発プロセスでは、治験による検証が最も重要で時間がかかりますが、生成AIは創薬にも寄与する可能性があると考えます。実際にAIを導入した場合には、従来型のプロセスに比べて創薬期間が70%短縮されたことが、2024年に入り、確認されています*。新薬の開発分野での生成AI投資は、今のところ限定的ではあるものの、今後の拡大が期待されます。
以上を要約すると、医療技術は、ライフサイエンスツール、診断法と共に、近い将来において、AIの導入から恩恵を受ける公算が大きいということです。生成AIは、バイオ医薬品企業やマネージド・ケア関連企業が競争力を維持するために必要とするイノベーションにも寄与することが予想されます。
「IDCは、ハードウェア、ソフトウェア、サービスを含む世界のAI市場が年率約19%の成長を遂げ、2026年には9,000億米ドル規模に拡大するものと予測しています。」
テクノロジー
近年、生成AIに対する関心が急速に増しているのは、AIが既存のビジネスモデルの破壊や生産性の向上を促すことに加えて、受け入れ態勢を整えた企業に戦略的優位性をもたらす可能性があるためだと考えます。テクノロジー関連調査大手のIDC(International Data Corporation)は、ハードウェア、ソフトウェア、サービスを含む世界のAI市場が、年率約19%の成長を遂げ、2026年には9,000億米ドル規模に拡大するものと予測しています。もっとも、AI銘柄はバリュエーションが高水準にあることから、AI関連投資の手法を検討する際には、慎重な姿勢で臨むことが重要です。
大量のデータを使用する生成AI事業は、「ハイパー・スケーラー」と呼ばれるクラウド基盤を必要とすることから、クラウド・インフラ分野で積極的な事業を展開し、事業基盤を確立した有名企業は、生成AI市場の拡大から最も大きな恩恵を受ける可能性があると考えます。半導体関連企業は、AI対応型ソフトウェアやアプリケーション・プロバイダーと同様、生成AIの発展に明らかに重要な役割を果たしており、市場での地位を確立したプラットフォーム・ベンダーも、利益を確保出来る有利な立場にあると考えます。GPUアクセラレーター・カード等のAI対応半導体の導入は今のところ限定的ですが、モデル学習を原動力に、今後5年については300億米ドル規模の需要増が見込まれます。生成AIはサイバーセキュリティー需要も増すことになるとみています。
AIのどこに最大の可能性があるかという観点からすると、半導体、ニッチな業界や特定用途のために設計された垂直ソフトウェア、垂直クラウド等のオープンユースの対極にある、知的財産の収益化が見込まれる企業が注目されます。
生成AIの発展は経済全体に広く浸透し、様々な産業やそこで働く人々に影響を及ぼすものと考えます。ピクテは、生成AIが知識の習得や生産性の向上に寄与し、成長への新しい道を開く可能性があると確信し、先行きを楽観視しています。
*出所: Exscientia, Corporate Presentation , 2024年1月時点
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