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- スイス株式市場の見通しについて
スイス市場を取り巻く環境とその見通しについてピクテが考察します。
スイスは、その規模や人口の観点から、ヨーロッパで最も小さな国の一つです。しかし、株式時価総額で見ると、違う側面が見えてきます。スイスの上場企業は、時価総額でStoxx欧州600指数の15%を占め、この割合はドイツ企業よりも多く、フランス企業よりもわずかに少ない水準です。この背景は、ネスレ、ロシュ、ノバルティスという3大メガキャップの存在によるもので、3社合計でスイス・パフォーマンス指数(SPI:スイス証券取引所の上場銘柄のうち約300社で構成される指数)のほぼ半分を占めています(チャート1)。また、スイス・マーケット指数(SMI:スイス証券取引所の上場銘柄のうち大手企業20社で構成される指数)に採用されている企業の国際性は強く、米国での売上が30%であるのに対し、スイス国内での売上はわずか6%です。このため、SMIは米国以外の先進国市場の指数の中で、最も米国へのエクスポージャーが高い指数となっています。
図1:スイス・パフォーマンス指数 企業別ウェイト
出所:Pictet WM-CIO Office & Macro Research, Factset(2022年8月25日時点)
図2:MSCIスイス(時価総額上位3社)とS&P500
出所:Pictet WM-CIO Office & Macro Research, Factset(2022年8月25日時点)
コンセンサス予想では、2022年のSPIの1株当たり利益(EPS)は、金融セクターのEPSが28%減少すると予想されている(Stoxx欧州600指数とS&P 500指数でも同様に金融セクターはマイナスの成長率が予想されている)ことが主要因となり、4.5%減少することが見込まれています。その一方、2023年に関しては、金融セクターの前年比効果がプラスに働き、さらにディフェンシブセクターのEPS成長率が上昇するため、SPIの利益は13.5%程度回復すると予想されています。このことから、今年のスイス株の業績モメンタムの弱さは、長期投資家に懸念を抱かせるものではないと考えています。スイス株式市場の魅力は、ディフェンシブ特性を有することです。ディフェンシブセクター(食品・飲料やヘルスケア、パーソナルグッズ、公益事業等)はSMIの時価総額の70%以上を占めています(チャート3)。一見すると、スイス市場は他の欧州諸国と比較して割高に見え、SPIの12ヶ月先予想に基づくPER(株価収益率)は現在15.5倍で、Stoxx欧州600指数(11.8倍)よりもS&P 500指数(17.9倍)に近い水準となっています。一方、ディフェンシブ・セクターのみに着目すると、SPIとStoxx欧州600指数とでは同様の倍率で取引されていることが分かります(チャート4)。つまり、セクター調整後では、スイス株式市場は欧州の広範な指数と同様のバリュエーションで取引されており、割高な水準となっておりません。今年に入ってから、先進国市場の殆どの株式指数が現地通貨建てでマイナスのリターンを記録しており、スイス株式も例外ではありませんが、スイス株のディフェンシブな特性は、足元のような市場の不透明感が強い時期には、他の先進国株式市場と比較して、特に魅力的な投資対象であると考えています。
図3:スイス・マーケット指数 セクター別ウェイト
出所:Pictet WM-CIO Office & Macro Research, Factset(2022年8月25日時点)
図4:12ヶ月先予想に基づくディフェンシブセクター株価収益率
出所:Pictet WM-CIO Office & Macro Research, Factset(2022年8月25日時点)
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