Article Title
金:堅調な世界需要
2024/07/24

Share

Line

LinkedIn

URLをコピー


概要

金市場の動向を振り返りつつ、今後の価格の見通しについてピクテの見解をご紹介します。




Article Body Text

概要


・ 金価格は名目上歴史的な高値圏にありますが、価格影響を受けやすい需要が減少したことにより、2024年4月中旬以降、価格上昇の勢いが弱まっています。

・ 短期的には価格上昇が比較的抑えられる可能性があるものの、中期的にはETFの需要と中国の実需の回復が金価格を促すものと予想しています。

・ 短期的には需要が大幅に減少する可能性は限られていると見ています。また、ピクテでは金価格を中期的には依然として、強気に見ています。



金の需要は依然として堅調

金価格は2024年4月中旬以降、歴史的な高水準で安定しています。しかし、価格高騰により需要の勢いが鈍化しています。特に、金の値ごろ感の低下と季節的要因が影響し、2024年8月末頃まで宝飾品需要が弱い状態が続くと予想されます。また、長期的に金の保有比率を増やそうとしている中央銀行も、より魅力的な価格を待つ可能性があります。さらに、国際金価格(ロンドン市場金価格)と上海金取引所の価格との差で示される中国の金現物需要も最近減少しています(図表1)。

しかし、他の金需要は堅調さを維持しています。例えば、米連邦準備制度理事会(FRB)が今年9月に緩和サイクルを開始する可能性が高まったことで、上場投資信託(ETF)での需要は改善していますし、先物市場での需要も依然として堅調です。加えて、中央銀行が発表している数字は公的な需要の一部に過ぎません。現在の購入状況についてはあまり知られていませんが、政府系ファンドのような機関投資家は第1四半期に金を熱心に購入していました。

全体的に見れば、2024年4月中旬以降、比較的緩やかな下落が見られたものの、金価格の高騰が世界的な需要を大きく後退させたという証拠はほとんどなく、金に対する強気の見方を維持できることを意味します。



ETFと中国の需要の増加が予想される

公的セクターからの強い需要が続いていることに加えて、ピクテが中期的な金価格について強気な見方を維持する理由は二つあります。第一に、数ヶ月にわたって金への投資が停滞した後に、ETF需要が改善する余地があると見ています。FRBの緩和サイクルの開始は、金利の低下に伴って金を保有する機会費用が低く抑えられるため、この需要を一部後押しするでしょう(図表2)。第二に、中国で金の実需が再び強まる可能性があります。米国の次期大統領が誰になるかによりますが、中国の対米輸出品に対する関税引き上げの脅威は、人民元の下落圧力につながり、その結果、中国の金需要が強まる可能性があります。米国の大統領選挙に加えて、中国の経済見通しは依然として低調であり、中国国内の金融政策は低いインフレ圧力を考慮すると、すぐには引き締められない見込みです。この政策の組み合わせは人民元を支えるものではありません。さらに、中国の輸出に対する規制を検討している国が増えていることも、人民元に対する下押し圧力につながる可能性があります。総じて、今後数四半期にわたって中国における金需要が再び増加すると予想しています。

米国大統領選は、金価格に様々な影響を与える可能性があります。どちらの大統領候補*も財政健全化を強く訴えていないため、米国の財政持続可能性に対する懸念が高まることで、デフォルトリスクを負わない金が有利になるかもしれません。しかし、トランプ氏の関税引き上げや移民削減の提案は、インフレと金利の大幅な上昇を引き起こす可能性があり、それが厳しい機会費用を通じて金価格に影響を与える可能性があります。



金の中期的な見通しは依然として強気

ピクテでは金の価格を中期的には強気に見ています。しかし、歴史的に見ても高い水準にある名目価格が現在の需要を抑制しており、短期的には金価格の上昇余地が限定されている可能性があります。他の貴金属の価格が現在、金に比べてあまり堅調でないことも注目に値します。最近の米国短期金利の低下と米ドルの下落が金価格を支える一因であると考えられますが、ピクテの中心的なシナリオを考えると、短期的にはこれらの要因から、金がこれ以上の恩恵を受けることはあまり期待できないかもしれません。



金価格が史上最高値を更新することで、更なる値上がりを期待する投資家の需要が高まる可能性はあります。しかし、金価格が急騰した今年3月とは異なり、金への投資金額は既に非常に高い水準にあり、新たな資金流入の余地は限られていると考えられます。とはいえ、FRBの緩和サイクルと米国の大統領選が近づく中で、金の需要が大幅に減少する可能性はますます低くなっていると認めざるを得ません。

*本稿は2024年7月17日時点の情報を元に執筆されています。

●当資料はピクテ・グループの海外拠点からの情報提供に基づき、ピクテ・ジャパン株式会社が翻訳・編集し、作成した資料であり、特定の商品の勧誘や売買の推奨等を目的としたものではなく、また特定の銘柄および市場の推奨やその価格動向を示唆するものでもありません。
●運用による損益は、すべて投資者の皆さまに帰属します。
●当資料に記載された過去の実績は、将来の成果等を示唆あるいは保証するものではありません。
●当資料は信頼できると考えられる情報に基づき作成されていますが、その正確性、完全性、使用目的への適合性を保証するものではありません。
●当資料中に示された情報等は、作成日現在のものであり、事前の連絡なしに変更されることがあります。
●投資信託は預金等ではなく元本および利回りの保証はありません。
●投資信託は、預金や保険契約と異なり、預金保険機構・保険契約者保護機構の保護の対象ではありません。
●登録金融機関でご購入いただいた投資信託は、投資者保護基金の対象とはなりません。
●当資料に掲載されているいかなる情報も、法務、会計、税務、経営、投資その他に係る助言を構成するものではありません。

手数料およびリスクについてはこちら




関連記事


エネルギー・トランジションを過小評価してはいけない理由

新たな世界秩序における新興国市場

GLP-1受容体作動薬はダイエットキラーか?

不透明な市場環境で示される金の強み

地理空間データの活用

グローバル株式市場 - ショック後の状況を整理する