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- 2021年10月のバイオ医薬品市場
バイオ医薬品関連企業の株価動向
10月のナスダック・バイオテック指数(ドルベース、配当含まず)は下落しました。
2021年10月のバイオ医薬品市場は、株式市場全体に比べ出遅れる展開となりました。ワクチン製造関連銘柄がその他のバイオ医薬品銘柄と比べて突出して買われる状況は収束していますが、これは、長期的な収益拡大の見通しに欠ける状況がバリュエーション(投資価値評価)を下押し始めたためだと考えます。M&A(合併・買収)は、9月末のメルク(米国)によるアクセレロン・ファーマ(米国)の買収以降、低調な状況が続いていましたが、ブリストル・マイヤーズ・スクイブ(米国)によるオーリニア・ファーマシューティカルズ(カナダ)の買収観測が強まりました。一方で新規株式公開(IPO)については低調でした。また米国議会では、薬価引き下げを巡る議論が続いていますが、実現は難しいことを示唆する状況が相次いでいるように思われます。こうした状況下、小型のバイオ医薬品銘柄は、1年程続いた下落局面から反転底打ちしたように思われます。
株価が大きく上昇した銘柄としては、ホライゾン・セラピューティクス(米国)、シージェン(米国)、インスメッド(米国)などが挙げられます。ホライゾン・セラピューティクスは、魅力的なパイプラインへの長期的な期待を背景に株価が上昇しました。シージェンは、7~9月期決算が好調だったことに加え、今後、開発初期段階の新薬候補の詳細発表が期待されています。インスメッドは、コロナ禍の厳しい環境にありながら、難治性呼吸器疾患治療薬アリケイスの販売が好調だったことが好感されました。
株価が大きく下落した銘柄としては、ターニングポイント・セラピューティクス(米国)、ザイムワークス(カナダ)、ノババックス(米国)等が挙げられます。ターニングポイント・セラピューティクスは、ROS1融合遺伝子陽性非小細胞肺がんおよびMET増幅を呈する非小細胞肺がん(NSCLC)の治療薬候補について行った治験の中間発表が期待外れだったことが影響しました。ザイムワークスは期待の高い同社のヒト上皮成長因子受容体2(HER2+)を標的とする二重特異性抗体ザニダタマブと競合する他社の治療薬候補が9月下旬に良好な治験結果を発表したことを受けて、10月も株価は下落基調となりました。ノババックスは、許可申請の遅れなど同社の新型コロナウイルス・ワクチンを巡る懸念を背景に株価が軟調な動きとなりました。
今後のバイオ医薬品市場見通し
バイオ医薬品セクターについては、今後、米食品医薬品局(FDA)長官の指名、薬価についての協議の内容が最終的に明らかになること、M&Aの継続などが想定されています。他方、バイオ医薬品株式市場は、このところ米国株式市場を下回るパフォーマンスとなっていますが、バリュエーションが再び魅力的な水準となり、センチメントも弱気であることから、長期的な価値を見出す機会となっている可能性があると考えます。
長期的には、医薬品に関連する医療費についての議論が大きく変化していることがわかります。いくつかの国では治療の有効性に応じて医療費を支払う制度(価値に基づく医療)が利用されていますが、処方薬で最大のマーケットである米国においても、従来の出来高払い方式ではなく、同様の制度を求める声は、ますます大きくなっています。医薬品企業と同様に政府、規制当局、保険業者は、医薬品の開発においてイノベーションを抑制することなく、医薬品の費用を効率的に管理することができる妥協案を見つけることを必要としています。最も重要な利害関係者である患者は、破産のリスクにさらされることなく、高品質の治療を受けたいと考えています。これは、治療薬の開発といった科学的側面だけでなく、ビジネスモデルや先進的な思考、価値に基づいた契約といった側面においてもイノベーションを生む最高の機会となると考えます。
バイオ医薬品関連企業の売上高は相対的に高い伸びが見込まれる
バイオ医薬品関連企業の売上高は、新興国の企業を上回って堅調に成長してきました。(図表6参照)
バイオ医薬品関連企業については、①有望な治療薬候補の良好な治験結果の発表、②大型の新薬の承認、③新薬販売開始後の業績寄与の拡大などを背景に、米国企業や日本企業よりも相対的に高い売上高の伸びが見込まれています。(図表7参照)
売上高の伸びに沿って株価も上昇
過去の実績では、バイオ医薬品関連企業の株価は、売上高の伸びとともに上昇してきたことがわかります。(図表8参照)
バリュエーション
新薬の開発動向が順調に推移していることやバイオ医薬品企業の業績が景気動向に左右されにくい特性などが注目されて株価が上昇しており、PSR(株価売上高倍率)で見たバリュエーション(投資価値評価)の水準も上昇しています。(図表9参照)
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