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- 2021年12月のバイオ医薬品市場
バイオ医薬品関連企業の株価動向
12月のナスダック・バイオテック指数(ドルベース、配当含まず)は下落しました。
2021年12月のバイオ医薬品市場は、株式市場全体に対して出遅れ低調な推移となりました。マクロ経済要因が市場を左右する展開で、損失を膨らませた多数のヘッジファンドの閉鎖が噂されました。バイオ医薬品市場の低迷は新規株式公開(IPO)動向などにも影響しています。新株発行(増資)は漸く下火になったものの、2022年上期には再び増加が予想されます。月内は、治験の失敗や規制当局の承認申請却下が相次いだ一方で、M&A(合併・買収)活動は活況のうちに年末を迎えました。またワクチン製造関連銘柄は低調な推移が続きました。新型コロナウイルスのオミクロン株の感染拡大が続く中、投資家は、新型コロナウイルスの終息は当分見込めず、世界的流行(パンデミック)から(特定地域に一定の割合で発生する)エンデミックに転じつつあること、および新型コロナウイルス感染症の治療薬候補の製品化が必要であることを理解し始めています。バイオ医薬品銘柄は、規模を問わず、バリュエーションが極めて魅力的な水準にあることから、M&A活動が続くものと考えられ、さらにM&Aを促すような規制環境の改善も期待されます。
株価が大きく上昇した銘柄としては、アリーナ・ファーマシューティカルズ(米国)等が挙げられます。アリーナ・ファーマシューティカルズは、潰瘍性大腸炎の治験に先立ちファイザー(米国)により67億ドルで買収されることが発表され、株価が大きく上昇しました。
株価が大きく下落した銘柄としては、IGMバイオサイエンシズ(米国)、アラコス(米国)等が挙げられます。IGMバイオサイエンシズは、米国血液学会総会で悪性リンパ腫の二重特異性プログラムに関連する発表を行った後、株価が大きく下落しました。安全性は極めて優れており、フェーズ2治験結果は2回以上の服用の場合の有効性が競合プログラムと同等であることを示唆するものとなりましたが、服用量を増やした場合の有効性は確認されませんでした。アラコスは、好酸球性胃炎(EG)および十二指腸炎(EoD)治療薬候補の治験に失敗したことが影響しました。
今後のバイオ医薬品市場見通し
バイオ医薬品セクターについては、2022年には米食品医薬品局(FDA)への信頼が高まり、状況が好転するものと考えます。また大手医薬品企業や大手バイオ医薬品企業はM&Aの原資となる多額の現金を有していることも注目されます。他方、バイオ医薬品株式市場は、このところ米国株式市場を下回るパフォーマンスとなっていますが、バリュエーションが再び魅力的な水準となり、センチメントも弱気であることから、長期的な価値を見出す機会となっている可能性があると考えます。
長期的には、医薬品に関連する医療費についての議論が大きく変化していることがわかります。いくつかの国では治療の有効性に応じて医療費を支払う制度(価値に基づく医療)が利用されていますが、処方薬で最大のマーケットである米国においても、従来の出来高払い方式ではなく、同様の制度を求める声は、ますます大きくなっています。医薬品企業と同様に政府、規制当局、保険業者は、医薬品の開発においてイノベーションを抑制することなく、医薬品の費用を効率的に管理することができる妥協案を見つけることを必要としています。最も重要な利害関係者である患者は、破産のリスクにさらされることなく、高品質の治療を受けたいと考えています。これは、治療薬の開発といった科学的側面だけでなく、ビジネスモデルや先進的な思考、価値に基づいた契約といった側面においてもイノベーションを生む最高の機会となると考えます。
バイオ医薬品関連企業の売上高は相対的に高い伸びが見込まれる
バイオ医薬品関連企業の売上高は、新興国の企業を上回って堅調に成長してきました。(図表6参照)
バイオ医薬品関連企業については、①有望な治療薬候補の良好な治験結果の発表、②大型の新薬の承認、③新薬販売開始後の業績寄与の拡大などを背景に、米国企業や日本企業よりも相対的に高い売上高の伸びが見込まれています。(図表7参照)
売上高の伸びに沿って株価も上昇
過去の実績では、バイオ医薬品関連企業の株価は、売上高の伸びとともに上昇してきたことがわかります。(図表8参照)
バリュエーション
新薬の開発動向が順調に推移していることやバイオ医薬品企業の業績が景気動向に左右されにくい特性などが注目されて株価が上昇しており、PSR(株価売上高倍率)で見たバリュエーション(投資価値評価)の水準も上昇しています。(図表9参照)
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