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酪農業界の動き

持続可能な世界に向かう「微生物の道」

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微生物は食料生産に不可欠な存在であるだけでなく、環境に優しい食料生産の実現に寄与することが出来ると考えます。



世界の酪農業界は、デンマークの小さな町から大きな恩恵を受けています。この町には、およそ5万株の微生物菌株を集めた世界最大級の「培養物コレクション」があるからです。このコレクションは、バイオ・サイエンス企業クリスチャン・ハンセンが所有するものですが、毎日10億人以上が消費する市販のチーズやヨーグルトの製造工程で、ほぼ1秒ごとに使われる培養物の元となっています。
 

クリスチャン・ハンセンのコレクションは、重要さをさらに増す可能性を秘めています。同社の研究開発活動の多くは、特定のニーズを満たすために微生物菌株の特性を改良することや、新しい方法で微生物菌株を組み合わせ、次世代型の優良微生物を作ることに関連するものですが、その一環として、食品の中に悪玉菌が作られるのを防ぎ、食品の賞味期限を延ばす効果のある天然の培養物「生物(生体)保護培養物」を製造する等、世界で最も困難で厄介な課題のいくつかに取り組んでいます。

クリスチャン・ハンセンの最高経営責任者(CEO)を務めるモーリシオ・グレーバー(Mauricio Graber)氏は、「植物分野では、農薬の使用を減らして植物の健康に寄与する自然由来のソリューションを、一方、動物分野では、抗生物質の使用を減らし、抗生物質の過剰投与に起因する人間の健康への影響を回避するためのプロバイオティクスを提供しています」と説明しています。

クリスチャン・ハンセンは、食品、栄養、製薬、農業などの分野で使われる培養物、酵素およびプロバイオティクスの生産では世界最大手の一角を占めています。コペンハーゲンの北25キロメートルに位置するヘルスホルムに本社を置く同社の歴史は、クリスチャン・ハンセン氏がコペンハーゲン市内の金属作業場跡に工場を建てた1874年に遡ります。当時は、チーズの製造工程で使われるレンネット(動物性液体凝乳酵素)が同社の唯一の製品でした。

クリスチャン・ハンセンは、腸の健康維持と改善のために数多くのプロバイオティクス菌を開発し、この分野への投資をさらに拡大しています。グレーバー氏は、「ヒト・マイクロバイオームは、将来のために極めて重要な機会を提供しています」と述べています。同社の中核事業は乳業関連事業ですが、植物由来食品の登場からも新しい機会が生まれています。グレーバー氏によれば、「消費者需要はあるのですが、味の特性に欠けるため、消費者がリピーターとなって市場の成長に寄与するような状況に至っていない」のです。同氏は、クリスチャン・ハンセンの微生物発酵技術が、乳製品で実現したように、植物由来食品にも風味やコクを添えることが出来ると確信しています。



穴のあいたチーズ

クリスチャン・ハンセンのビジョンは個々の消費者に留まりません。グレーバー氏や社員の試算によると、クリスチャン・ハンセンの製品の80%が国連の持続可能な開発目標(SDGs)に寄与する一方で、残りの20%はSDGsと関連があるわけではありません。例えば、チーズの穴です。クリスチャン・ハンセンは、あるのが当然だと思われている穴をチーズにあける細菌を作っています。「好物のチーズに穴があいていないことなど、想像出来ないでしょう。」と同氏は続けます。「でも、それは持続可能な地球には貢献しませんよね?ですから、私達はそれをカウントしないのです。」社外コンサルティング会社のPwCがこれを監査し、認証しています。

クリスチャン・ハンセンは、気候変動への取り組みも誓約しています。売上高10億米ドル以上の、世界の上場企業約6,000社を対象に、持続可能性の評価に基づいて年間ランキングを付与している、カナダのメディア・投資調査会社コーポレート・ナイツ(Corporate Knights)は、2023年、クリスチャン・ハンセンを2022年における最も持続可能なバイオテクノロジー企業に選出しています。

SDGsに明確に配慮した売上と、科学的根拠に裏付けられた温室効果ガス排出量の削減目標が、受賞の決め手となりました。クリスチャン・ハンセンは、同社が自ら排出する直接排出量(スコープ1)およびエネルギーの使用に伴う間接排出量(スコープ2)に留まらず、バリューチェーン上のすべての活動に係る他社の排出量(スコープ3)についても目標を策定しており、2030年までに、スコープ1およびスコープ2排出量を42%、スコープ3排出量を20%削減するとの目標を掲げています。

スコープ3排出量は、比較的少量を削減するだけでも大きな効果をもたらします。クリスチャン・ハンセンは、同社の温室効果ガス排出量の約87%がスコープ3排出量であると試算しています。「サプライヤーとのエンゲージメントが鍵になるのです。サプライヤーは、原材料の調達から世界各国への輸送の提携先や物流の管理に至る、私達の取り組みの効果を何倍にも増してくれるからです」とグレーバー氏は説明しています。

大企業のサプライヤーは、クリスチャン・ハンセンのサプライヤーでいるためには、脱炭素化に取り組む必要があることを伝えられています。一方、大規模のサプライヤーと同等の資金力や人材を持っていない可能性のある、中小規模のサプライヤーには、器具等の提供を含めた支援がなされています。

クリスチャン・ハンセンは、酵素メーカーのノボザイム(Novozymes)との合併手続きを進めており、規制当局の承認が得られれば、デンマーク企業間の合併では史上最大規模の合併が実現します。グレーバー氏によれば、「2つの極めて相互補完的な製造基盤が統合される」ことになります。微生物ソリューション大手のクリスチャン・ハンセンと酵素ソリューション大手のノボザイムの合併により、「異色のバイオ・サイエンス企業」が誕生するのです。」

気候危機対策に係る両社に共通のコミットメントにも相乗効果が得られると考えるグレーバー氏は、「私達は歴史上の転換点にいます。持続可能性の観点からすると、将来のためのソリューションを開発する必要があります。世界の人口を養うための食料増産を可能にする、持続可能な「農場から食卓まで」の食料生産システムに対応するためです。これを、持続可能で自然に負荷をかけない方法で行い、地球から取り出す資源の量を減らさなければならないのです」と話しています。

※グレーバー氏とのインタビューは、(2023年7月20日発行)「ミクロの微生物は世界最大の難題解決にどう寄与するか?」に掲載されたものです。


投資家のためのインサイト

  • 2050年に100億人分の食料を確保するには、農業セクターの効率性を70%高める必要があります。また、殺虫剤、除草剤、感染症の予防や治療のための抗菌剤の使用を減らすと同時に、収穫量を増やさなければなりません。国連(UN)によれば、抗生物質耐性に起因する死亡者数は、2050年までに1,000万人に達する可能性があります。バイオネマチサイド(生物殺線虫剤)、バイオスティミュラント(生物刺激剤)、バイオ殺菌剤等、自然農作物保護のための微生物ソリューションは、農薬の使用を減らすと同時に生産性を高め、収穫量を増やす、持続可能で環境に優しいソリューションです。サトウキビ、トウモロコシ、大豆の生産に効果があり、収穫量を10%以上増やす可能性のある製品も流通しています。

  • 国連は、食料の3分の1が廃棄され、それが世界の温室効果ガスの8%を占めていると試算しています。欧州連合(EU)は、2030年までに一人当たりの食品廃棄量を半減させることを誓約しています。バイオプロテクション(生物による保護)は、発酵によって腐敗を遅らせ、乳製品やその他の食品の廃棄を減らす特殊な培養物に係る技術です。クリスチャン・ハンセンは、バイオプロテクションの市場機会を長期的には10億ユーロ、2025年単年では2億ユーロと試算しています。

  • 母乳オリゴ糖は、人間の母乳のみに含まれる重要な乳糖群を含むプレバイオティクスであり、健康な消化器官の発達や免疫系および脳の発達を支える効果が評価されて、乳児用粉ミルクの原料として認可されています。

Mega
執筆者

Megaは、より機能する経済社会を創造する方法について、議論を活性化し、豊かにすることを目指しています。

メガトレンドとは、私たちの地球を形作る強力な社会経済的、環境的、技術的な力です。経済のデジタル化、都市の急速な拡大、地球の天然資源の枯渇は、国の統治、企業の経営、人々の生活様式を変革する構造的トレンドのほんの一部に過ぎません。



本ページは2023年11月にピクテ・アセット・マネジメントが作成した記事をピクテ・ジャパン株式会社が翻訳・編集したものです。



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  • 円高局面は基準価額の下落要因、円安局面は基準価額の上昇要因となります。


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投資信託に係る費用について

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