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- 米FOMC後に金価格下落、今後の注目点は?
2021年6月15、16日に開催された米連邦公開市場委員会(FOMC)後、米国の利上げ時期が前倒しされる可能性が高まり、米ドル指数が上昇する中、金価格は大きく下落しました。今後、米国の利上げの議論が金価格の変動を大きくする可能性がありますが、中長期的には米国の「双子の赤字」などが金価格をサポートする要因になると考えます。
米国の利上げ前倒し懸念から金価格が大きく下落
2021年6月15、16日に開催された米連邦公開市場委員会(FOMC)後、米国の利上げ時期が前倒しされる可能性が高まったことを受けて、金価格は大きく下落しました(図表1参照)。
米国では新型コロナウイルスワクチンの接種拡大を受けて経済が徐々に正常化に近づいており、米FOMCは経済成長の見通しとインフレ見通しを上方修正、利上げ時期の前倒しも示唆されました。
このような状況のもと、これまで金価格に影響を与えてきた米国の実質金利と米ドル指数はどのような動きをしていたでしょうか。
実質金利は横ばい、足元、金価格との連動性が薄れる
昨年3月以降、上昇を続けてきた米国の期待インフレ率は、今年5月半ばに4月の米消費者物価指数(CPI)が前年同月比+4.2%と発表された時期がピークとなりました。4月のCPIの上昇は新型コロナの落ち着きによる経済正常化や前年からのベース効果、そしてサプライチェーンの混乱などによる一過性の要因によるものであったことや、パウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長などの発言を受けて物価上昇は一時的という見方が市場で優勢となり、期待インフレ率は低下傾向となっています(図表2参照)。
米国の長期金利については、今年に入り上昇基調となりましたが、3月末以降は低下に転じました。その後、インフレ懸念の高まりを背景に一時上昇に転じる場面もありましたが、物価上昇が一時的という金融当局者の見方が市場に浸透したことや、各種景気指標の鈍化、米国の増税案などを受けて米国の長期金利は低下傾向となりました。足元では、今後の金融引き締めによる経済成長鈍化の見込みも低下要因となっていると考えられます。
米国の期待インフレ率および長期金利(名目金利)がともに低下したことで、物価上昇を考慮した実質金利(=名目金利-期待インフレ率)は、大きくは変化していません(図表3参照)。
金利を生まない金の価格は、これまで実質金利が上昇する局面では下落、実質金利が低下する局面では上昇する傾向があり、2020年以降の金価格と実質金利の動きをみると、その傾向を反映するように両者が概ね逆の動きをしてきたことが確認できます。しかしながら、足元の動きに着目するとその関係が薄れていることがわかります。
米ドル指数が上昇し、金価格は下落
米国の長期金利が低下している一方、FOMCで利上げ時期の前倒しが示唆されたことを受け、米2年国債利回りがFOMC開催前の0.16%(6月15日)から開催後には0.25%(6月21日)まで上昇するなど、中期ゾーン(1年超~5年以下)の金利が上昇しました。そして中期金利の上昇は、米ドル指数の急速な上昇を引き起こす結果となりました。
金は価値保存手段として米ドルの代替資産とみなされており、米ドルと金価格は逆方向に動く傾向があります。金価格は、2020年8月の最高値から調整局面に入って以降、米ドル指数の連動性は低下していましたが、2020年11月以降、米ドル指数との連動性が再び高まっており、今回の米ドル指数の急上昇に連動するかたちで大きく下落することとなりました(図表4参照)。
今後の見通し、金価格をサポートする要因は
今後、米国ではコロナ禍から経済活動が正常化する過程で、利上げの議論が金融市場に断続的に影響を与えることが予想されます。利上げを織り込むかたちで短・中期の国債利回りが上昇すると、さらなる米ドル指数の上昇につながる可能性はあります。また、期待インフレ率を上回る米国の長期金利の上昇が米国の実質金利の上昇につながる可能性もあり、それぞれに金価格にとってマイナス要因となる点には注意が必要です。
一方、米国では、貿易収支と財政収支の赤字、いわゆる「双子の赤字」拡大のリスクが高まりつつあるとみられます。トランプ前政権、およびバイデン政権の多額な財政出動による財政悪化傾向は加速しており貿易赤字の拡大と併せて、米ドルへの信認の低下、すなわち、米ドル安圧力となる可能性が考えられます(図表5参照)。
米ドル安は金価格をサポートする要因となる可能性があり、その場合、足元のドル高による金価格の調整は、投資家に買いポジションを構築する機会を提供することも想定されます。
また、これまでの過剰ともいえる財政支出や金融緩和は、将来のインフレ圧力になる可能性があり、実物資産である金への注目材料となる点も忘れてはならないでしょう。
金はバリュエーション指標等がない資産であり、その局面局面での事象で市場が着目する変動要因が変化することが多いのも特徴です。米ドルや米国の長期金利の動向、さらに長期的な通貨価値の変動要因等にも注目しながら、引き続き金を取り巻く環境を冷静にみていくことが重要と言えそうです。
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