Article Title
米国株式投資戦略 ~短期的な過熱感に警戒~
田中 純平
2019/02/18

Share

Line

LinkedIn

URLをコピー


概要

昨年12月24日にS&P500指数が底値(終値ベース)を打って以降、米国株式市場は直近まで急速に値を戻しています。その背景は、パウエルFRB議長発言や後退する政治リスクにあります。しかし、マクロ経済指標や企業業績の見通しが下方修正される中、米国株式市場の急騰にはテクニカル面で過熱感が出始めており、反動安を警戒すべき局面に入りつつあります。



Article Body Text

米国株式市場が急反発した背景は?

米国株式市場が大きく調整した昨年12月から一変、今年に入ってから急速に下落幅を縮小させた背景は、第一義的にパウエルFRB(米国連邦準備制度理事会)議長の心変わりであり、その後に続いた米中貿易協議や米国政府の一部閉鎖に関連した政治リスクの後退だと考えられます。パウエルFRB議長は昨年12月の段階で、金融引締政策を堅持する方針を明らかにしましたが、その翌月には一転して利上げについては当面様子見とし、FRBのバランスシート縮小についても早期終了を示唆する発言を行いました。さらに、メディア報道等によって米中貿易協議の進展に対する期待感が高まったことや、米国政府の一部閉鎖の解除と再閉鎖の回避が決まったことなども、投資家心理の好転に寄与したと考えられます。

 

マクロ経済指標や企業業績の見通しは下方修正が続く

しかし、マクロ経済指標や企業業績の見通しは下方修正が続いています。アトランタ連銀が算出する2018年10-12月期の米国実質GDP予想値(GDPNow、前期比年率)は、 12月小売売上高の下振れによって、2月6日時点の+2.7%から2月14日時点は+1.5%へ大幅な下方修正となりました。 また、S&P500企業の2019年度予想EPS成長率も昨年12月末時点の+7.6%から、直近2月15日時点の+4.6%へ下方修正されました。つまり、足元の株価上昇は、投資家心理の好転によるバリュエーションの上昇が主因であり、企業業績見通しなどのファンダメンタルズの改善では無いというこ とです。

 

短期的な過熱感も見られる米国株式市場

S&P500指数のRSIは2月15日時点で69%と、一般的に「買われ過ぎ」と判断される70%以上の目前です。また、 MACDは昨年12月24日の-77から、2月15日時点で+39と、近年稀に見る急激なモメンタムの回復を示しており、反動安が警戒される局面に入りつつあります。ファンダメンタルズが悪化する中、米中貿易協議や米債務上限問題、ブレグジットなどの政治リスクは依然として残るため、過度な楽観は禁物です。


田中 純平
ピクテ・ジャパン株式会社
ストラテジスト

日系運用会社に入社後、主に世界株式を対象としたファンドのアクティブ・ファンドマネージャーとして約14年間運用に従事。北米株式部門でリッパー・ファンド・アワードの受賞歴を誇る。ピクテ入社後はストラテジストとして、主に世界株式市場の投資戦略などを担当。ピクテのハウス・ビューを策定するピクテ・ストラテジー・ユニット(PSU)の参加メンバー。2019年より日経CNBC「朝エクスプレス」に出演。2023年より週刊エコノミスト「THE MARKET」に連載。日本経済新聞ではコメントが多数引用されるなど、メディアでの情報発信も積極的に行う。日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)


●当資料はピクテ・ジャパン株式会社が作成した資料であり、特定の商品の勧誘や売買の推奨等を目的としたものではなく、また特定の銘柄および市場の推奨やその価格動向を示唆するものでもありません。
●運用による損益は、すべて投資者の皆さまに帰属します。
●当資料に記載された過去の実績は、将来の成果等を示唆あるいは保証するものではありません。
●当資料は信頼できると考えられる情報に基づき作成されていますが、その正確性、完全性、使用目的への適合性を保証するものではありません。
●当資料中に示された情報等は、作成日現在のものであり、事前の連絡なしに変更されることがあります。
●投資信託は預金等ではなく元本および利回りの保証はありません。
●投資信託は、預金や保険契約と異なり、預金保険機構・保険契約者保護機構の保護の対象ではありません。
●登録金融機関でご購入いただいた投資信託は、投資者保護基金の対象とはなりません。
●当資料に掲載されているいかなる情報も、法務、会計、税務、経営、投資その他に係る助言を構成するものではありません。

手数料およびリスクについてはこちら



関連記事


東京都知事選挙と岸田政権

フランス混乱の背景:極右政権で大丈夫なのか?

邦銀の今後の見通し:サイクルと構造変革

政策金利5%台でも軟着陸する米国経済

フランス総選挙 極右優勢で金融市場は警戒ムード

少子化対策としての資産所得