- Article Title
- 虚をつかれた原油ETF
WTI原油先物価格は、主にコロナショックをきっかけとした原油需給の悪化を背景に一時マイナス40.32ドルをつけるなど、大きく乱高下する展開になった。米国上場のUnited States Oil Fund(世界最大の原油ETF)には押し目買いを狙った資金流入が加速したが、そのETF市場価格は16日(木)から23日(木)までの1週間で39%も下落した。いったい何が問題だったのか?
史上初のマイナス40.32ドルをつけたWTI原油先物価格
12日(日)のOPECプラス臨時会合で合意された減産規模は日量970万バレル、世界の供給量全体の1割に相当する過去最大の協調となった。それ以外のG20加盟国も減産に応じると報じられたが、IEA(国際エネルギー機関)が15日(水)に発表した予測では世界の原油需要は今年4月に前年同期比で日量2,900万バレル減少、4-6月期では日量2,310万バレルの減少と示され、歴史的減産でもコロナショックによる原油需要の急減を相殺することが困難なことが改めて認識された。さらに追い討ちをかけたのが貯蔵施設の不足だ。WTI原油先物は期近限月の取引が終了すると現物で受渡しを行う必要があるため、貯蔵施設が無ければ実質的に無価値となる。これがマイナスの価格を負担してでもWTI原油先物を売却したい誘因につながり、20日(月)には史上初のマイナス40.32ドルをザラ場でつけた(図表1)。
ロールオーバーに伴う損失がETF市場価格の急落を招く
WTI原油先物価格が急落する中で資金流入が加速したのが、WTI原油先物価格に連動する運用成果を目指す米国上場のUnited States Oil Fund(USO)ETFだ。押し目買いを狙った投資マネーが、原油価格が下落するにしたがって同ETFへ殺到していたことが発行済受益権口数(図表2)からわかる。原油先物価格が下落したため、ETFの市場価格も下落したことは容易に想像つくが、ここで問題なのはWTI原油先物価格(第1限月)が23日(木)に16.50ドルまで回復したにもかかわらず、USOのETF市場価格は2.64ドルと16日(木)時点の4.36ドルから39%下落したままだという点だ。これはWTI原油先物価格のロールオーバー(限月乗り換え)に伴う損失が影響していると考えられる。WTI原油先物価格は期近よりも期先のほうが極端に高くなるコンタンゴ状態となっているため、安い期近を売却し高い期先を買付けることでETFの市場価格を極端に押し下げた可能性がある。すでにUSOは複数の限月へ分散化を図るなどの対応行っているようだが、構造的な問題は解決していないため注意が必要だ。
当資料をご利用にあたっての注意事項等
●当資料はピクテ・ジャパン株式会社が作成した資料であり、特定の商品の勧誘や売買の推奨等を目的としたものではなく、また特定の銘柄および市場の推奨やその価格動向を示唆するものでもありません。
●運用による損益は、すべて投資者の皆さまに帰属します。
●当資料に記載された過去の実績は、将来の成果等を示唆あるいは保証するものではありません。
●当資料は信頼できると考えられる情報に基づき作成されていますが、その正確性、完全性、使用目的への適合性を保証するものではありません。
●当資料中に示された情報等は、作成日現在のものであり、事前の連絡なしに変更されることがあります。
●投資信託は預金等ではなく元本および利回りの保証はありません。
●投資信託は、預金や保険契約と異なり、預金保険機構・保険契約者保護機構の保護の対象ではありません。
●登録金融機関でご購入いただいた投資信託は、投資者保護基金の対象とはなりません。
●当資料に掲載されているいかなる情報も、法務、会計、税務、経営、投資その他に係る助言を構成するものではありません。