Article Title
長期投資でハマりやすい投資バイアスとは?
田中 純平
2020/08/14

Share

Line

LinkedIn

URLをコピー


概要

株式を中心とした投資信託で長期投資を行う個人投資家にとっての「悩みの種」は、どの国や地域にどれだけ配分すれば良いのかという「地域別配分」の問題ではないだろうか?この「地域別配分」を巡っては、自国の株式(日本株)の投資比率を高めにする「ホーム・カントリー(自国)バイアス」という、自国偏重の投資バイアスがあるため注意が必要だ。



Article Body Text

日本株比率が突出して高い個人投資家

確定拠出年金の運用商品選択状況を見ると、投資信託(株式型)に占める国内株式型の投資比率は企業型で59%、個人型で54%と、外国株式型よりも投資比率が高いことが分かる(図表1)。この状況は、「感覚的」には理解できるが、「理論的」には正しくない。日本に居住する個人投資家にとって、土地勘があり為替リスクが低い日本株の投資比率を高くすることは一見すると合理的であり、むしろ自然な投資行動のようにも感じられる。しかし、ファイナンスの世界では明らかに「過剰投資」になる。

MSCI全世界株指数(先進国+新興国)における日本株の構成比率は2020年7月末時点でわずか7%であり、これは世界の名目GDPに占める日本の名目GDPの割合(6%)とほぼ同水準だ(図表2)。つまり、時価総額や経済規模で見れば、世界における日本のプレゼンスは10%にも満たないことになる。それにかかわらず、個人投資家における日本株の投資比率が過半数を占めているのだから、「過剰投資」と言わざるをえない。

 

 

過去10年間のリスク・リターン特性は全世界株に軍配が上がる

このように自国の投資比率が外国よりも高くなる傾向は、「ホーム・カントリー(自国)バイアス」と呼ばれており、実は日本だけでなく世界的に見られる現象だ。しかし、この投資バイアスによって、特に日本における個人投資家のポートフォリオが、(目に見えないかたちで)毀損してしまっている可能性があるので注意が必要だ。

過去10年間のリスク・リターンを計測すると、全世界株のリスクは日本株と大差ないものの、リターン(年率)は長期にわたって日本株を上回っていることが分かる(図表3)。確定拠出年金にかかわらず、日本株を中心に運用してきた個人投資家にとっては、(本来得られたであろう)全世界株における相対的に良好なリスク・リターンを十分享受できなかったことを意味するため、大きな機会損失を被ったことになる。ご自身がホーム・カントリー・バイアスに陥っていないか、いま一度点検してみてはいかがだろうか?


田中 純平
ピクテ・ジャパン株式会社
ストラテジスト

日系運用会社に入社後、主に世界株式を対象としたファンドのアクティブ・ファンドマネージャーとして約14年間運用に従事。北米株式部門でリッパー・ファンド・アワードの受賞経験を誇る。ピクテ入社後はストラテジストとして主に世界株式市場の投資戦略等を担う。ピクテのハウス・ビューを策定するピクテ・ストラテジー・ユニット(PSU)の参加メンバー。2019年より日経CNBC「朝エクスプレス」に出演、2023年よりテレビ東京「Newsモーニングサテライト」に出演。さらに、2023年からは週刊エコノミスト「THE MARKET」で連載。日本経済新聞やブルームバーグではコメントが多数引用されるなど、メディアでの情報発信も積極的に行う。日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)


●当資料はピクテ・ジャパン株式会社が作成した資料であり、特定の商品の勧誘や売買の推奨等を目的としたものではなく、また特定の銘柄および市場の推奨やその価格動向を示唆するものでもありません。
●運用による損益は、すべて投資者の皆さまに帰属します。
●当資料に記載された過去の実績は、将来の成果等を示唆あるいは保証するものではありません。
●当資料は信頼できると考えられる情報に基づき作成されていますが、その正確性、完全性、使用目的への適合性を保証するものではありません。
●当資料中に示された情報等は、作成日現在のものであり、事前の連絡なしに変更されることがあります。
●投資信託は預金等ではなく元本および利回りの保証はありません。
●投資信託は、預金や保険契約と異なり、預金保険機構・保険契約者保護機構の保護の対象ではありません。
●登録金融機関でご購入いただいた投資信託は、投資者保護基金の対象とはなりません。
●当資料に掲載されているいかなる情報も、法務、会計、税務、経営、投資その他に係る助言を構成するものではありません。

手数料およびリスクについてはこちら



関連記事


米半導体株に忍び寄る「米中貿易戦争」の影

「103万円」は本当に壁なのか?

第二次トランプ政権下の金融規制緩和の現実味

「トランプ大統領」の経済政策

米国株「トランプ・トレード」が爆騰

2025年衆参同日選の可能性