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- 対中関係波高し
7月23日、外国為替及び外国貿易法(外為法)に基づく半導体製造装置に関する新たな輸出管理策が施行された。米国の対中半導体戦略に基づくものであり、実質的に中国を狙い撃ちしている。関連産業が直ぐに大きな打撃を受けることはなさそうだ。ただし、中国は他の分野で報復的な措置を採る可能性がある。外交的対話が滞るなかで、日中関係に改善の兆しは見られない。
■ 米国の戦略に沿う日本の輸出管理
新たな輸出管理は、最先端の半導体を製造するための装置に関連する23品目について、安全保障上の観点から、輸出の際の手続きを強化するものだ(図表1)。
日本の半導体製造装置の輸出先は、中国、韓国、台湾、米国で全体の98%程度を占めている(図表2) 。
韓国、台湾、米国は対象外となっているため、名指しこそしていないものの、実質的に中国がターゲットであることは明らかだ。
米国のジョー・バイデン政権は、次世代のIT技術で中国に対する優位性を確保するため、基盤となる半導体を極めて重視してきた。その戦略は、中国による最先端半導体の製造能力獲得を阻止することが中核と言える。一方、人口知能(AI)、スーパーコンピューターなど軍事技術を高める可能性のある特定用途を除き、半導体自体の対中輸出は最先端品も含めて強化する意向のようだ。
半導体製造装置は、EUV露光装置で市場を独占するASLMの母国オランダ、米国、そして日本の3か国によりほぼ寡占化している。米国は日蘭両国に協調を求めたが、今回の日本の輸出管理強化は、それに沿った措置と言えるだろう。
ちなみに、今年1~5月、日本の半導体製造装置の輸出は前年同期比5.0%減だった。もっとも、中国向けは同5.4%増加している。日本製品の代替品を探すのは難しく、今のところ汎用半導体向けの製造装置を淡々と調達しているのだろう。
■ 多方面のビジネスに影響の可能性
米国の対中半導体輸出額を見ると、2022年に入って減少に転じ、今年1~5月は前年同期比65.9%減の大きな落ち込みになった(図表3)。
半導体需要が低迷していることに加え、米国に対する中国企業の警戒感を示しているのではないか。メモリに特化しているものの、今年1~5月、日本の対中半導体輸出は前年同期比6.1%増加した(図表4) 。
貿易不均衡の是正に的を絞ったドナルド・トランプ前大統領の時代、中国は半導体の対米輸入を増やし、日本からの調達を絞り込んだ。一方、人権、安全保障を重視するバイデン政権の下では、何等かの理由による制裁で輸入が滞るリスクを懸念、米国への依存度を低下させているのだろう。
また、今回の日本政府による半導体製造装置の輸出管理強化は、対象品目が最先端の半導体を製造する前工程の装置に限られている。米国はレガシー半導体向けについては問題視しておらず、従来の手続きで輸出可能だ。そうしたなか、中国はボリュームゾーンである汎用半導体の製造能力強化を重視しており、寡占市場の一翼を担う日本製品を排除することはできないだろう。従って、半導体製造装置については、当面、大きな影響が及ぶシナリオは避けられるのではないか。
他方、日本政府の新たな措置が実質的に中国を狙い撃ちしたものである以上、何等かの報復措置は不可避と考えられる。7月3日、中国政府はガリウム、ゲルマニウムについて輸出管理の強化を発表した。また、福島第一原子力発電所の処理水海洋放出についても、科学的に明確な根拠を示すことなく、反対の姿勢を強めている。
米国はブリンケン国務長官、イエレン財務長官などが相次いで訪中、中国との直接対話を再開した。日本の場合、閣僚クラスによる交流は限られており、外交関係の悪化が、今後、日本企業の対中ビジネスに影響を及ぼす可能性は否定できない。
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