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- 解散・総選挙へ向けた陣容か?内閣改造
岸田文雄首相は、9月13日、内閣改造と自民党役員人事を行い、第2次岸田第2次改造内閣が発足した。自民党幹事長、政調会長、内閣では財務相、経産相、官房長官が留任する一方、初入閣が11名、女性閣僚が5名となり、安定感と清新なイメージを意識した布陣と言える。10月に召集される臨時国会で2023年度補正予算が成立すれば、解散の可能性があるのではないか。
■ バランス、安定感、新鮮さ
衆議院の任期は2025年10月30日までだが、その約1年前の来年9月に岸田首相は自民党総裁としての任期を迎える(図表1)。
同首相が総裁選で再選され、長期政権を手に入れるには、1年以内に衆議院を解散、総選挙を行って勝つことが必須の条件と言えるだろう。つまり、今回の内閣及び自民党幹部は、総選挙を戦うための布陣だ。
党4役及び閣僚の顔ぶれを見ると、派閥のバランス、安定感、そして新鮮味の何れにも配慮した苦心の形跡が窺われる。例えば、岸田政権を支える安倍派、麻生派、茂木派からは党4役、閣僚が5人ずつが登用された(図表2)。
麻生派は正確には4人だが、党4役に含まれない麻生太郎副総裁を含めれば5人だ。これは、岸田首相が、主流3派閥の結束に配慮した結果だろう。
全体の構成を考えると、党で最も重用な役職である茂木幹事長、萩生田光一政調会長、そして最重要閣僚の松野博一官房長官、鈴木俊一財務大臣、西村康稔経産大臣、公明党出身の斎藤鉄夫国交大臣を留任させ、外務大臣には評価の高い川上陽子元法相を起用した。派閥の力学と共に、政権の安定感を重視したと見られる。
今回、19名の閣僚のなかに初入閣が11名、女性が5名となったのは、停滞しつつあった岸田内閣の空気を変え、解散・総選挙へ向け新鮮なイメージを演出する意図があるだろう。もっとも、初入閣の閣僚は何等かの隠れた問題が表面化する可性性がある上、国会での答弁、会見での受け答えの力量への不安が払拭できない。第2次岸田改造内閣では4人の閣僚が実質的に更迭されたが、うち3人は初入閣の閣僚だった。さらに、福島第一原子力発電所の処理水を「汚染水」と失言した野村哲郎農相も初入閣組だ。そうした苦い経験がありながら、岸田首相が敢えて2桁の初入閣を迎え入れたのは、時間を置かずに解散するシナリオが視野にあるのかもしれない。
同首相は、9月10日、訪問先のニューデリーで会見を行い、「必要な予算にしっかりと裏打ちされた思い切った内容の経済対策」を大至急実行するため、「新しい体制の発足直後からスタートダッシュして行きたい」と語った。これは、10月中に臨時国会を召集し、2023年度補正予算案を早期に成立させるとの意味ではないか。
■ 再び解散風が吹く可能性
NHKが9月8~10日に行った世論調査では、岸田内閣の支持率は8月を3%ポイント上回る36%になった(図表3)。
日本経済新聞、読売新聞の8月の調査でも、内閣支持率は下げ止まりの気配を示している。また、NHKの世論調査を見る限り、自民党の支持率は安定しており、野党への期待が盛り上がっているわけではないようだ(図表4)。国民に信を問う上で、悪いタイミングではないだろう。
いずれにせよ、岸田首相は大型補正予算の編成を考えていると見られ、今回の人事を機に再び解散風が吹く可能性は否定できない。ただし、短い期間を除けば、財政で株式市場を押し上げることは難しく、むしろ新規財源債の発行増加観測により、長期金利には上昇圧力が生じると想定される。
また、少なくとも総選挙が終わるまで、日銀が金融政策を修正することは難しいだろう。逆に言えば、今秋中に解散・総選挙を終えた場合、政治的な観点から、来年前半は出口戦略へ移行するチャンスとなる可能性があるのではないか。
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