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- マッカーシー議長解任のインパクト
米国連邦下院では、10月3日、マット・ゲーツ議員の提出したケビン・マッカーシー議長の解任動議が可決された。新議長の選出は難渋すると見られ、2024会見年度予算の成立も見通せない。経済のファンダメンタルズは悪くないものの、それ故に長期金利が上昇している。政治からの逆風、早期利下げ観測の後退により、目先、市場がリスクオフ的な動きとなる可能性は否定できない。
■ 政策が仮死状態に陥る可能性
マッカーシー議長の解任動議は、採決時に出席していた民主党の議員208名全員に加え、同議長の所属する共和党から8名が賛成に回り、賛成216票、反対210票で可決された(図表1)。
大統領継承順位第2位の下院議長が解任されるのは、米国の連邦議会史上で初めてのことだ。本来、議長を支えるはずの共和党議員が解任動議を提出、同党議員の造反で可決されたわけで、事実上、下院共和党は分裂状態にあると言えよう。
9月30日、マッカーシー議長と民主党が妥協して2024会計年度のつなぎ予算を可決させたが、その期間は45日に限られる。当然、2024年度予算を決めることが前提だった。しかし、連邦下院はこれから議長を選出しなければならない。マッカーシー議長を選ぶに当たり、共和党内の不一致から15回の投票を要した。解任動議を提出したゲーツ議員周辺に明確なシナリオがあるとは思えず、まずは入口で混迷が深まるだろう 。
さらに、上院は民主党が過半数を握っており、予算法案の可決には下院共和党の妥協が必要だ。しかし、今回の解任劇を見る限り、次期議長が民主党と一致点を見出すのは難しい作業となろう。
ゲーツ議員を中心とするフリーダムコーカスは45名程度と見られ、下院全体の10%程度に過ぎない。それでも、数以上に大きな力を持つことにり、ウクライナへの軍事支援を含め、米国の政策が仮死状態に陥る可能性が否定できなくなった(図表2) 。
■ 慣れが必要
足元、米国の経済指標はまだら模様だが、基本的に景気の底堅さを示すものが多い。代表例は米国供給管理協会(ISM)が算出している製造業景況感指数(PMI)だ。6月の46.0を底として反転し、9月は49.0になった(図表3)。
また、OECDが集計する米国の景気先行指標(CLI)も、4月から5か月連続で前月の水準を上回っている。この2つの指標は連動性が高く、これまでは米国の景気サイクルをかなり忠実に反映してきた。さらに、9月3日に発表された8月の求人及び労働移動統計(JOLT)では、求人数が961万人であり、市場予想の881万5千人を大きく上回った。労働市場は逼迫しており、賃上げによって消費も底堅い。
そうしたマクロ面でのデータを踏まえて、市場の景況感が修正されたことで、早期の利下げ論が後退、政策金利の高止まり観測が強まっている。結果として、長期金利は上昇基調だ。イールドカーブもフラット化しつつある(図表4)。
米国の株式市場は、長期金利の上昇に不意打ちを食らった感があるのではないか。もっとも、PMIが示している通り、今後、高金利にも関わらず堅調な景気が続くのであれば、株価も業績の改善を織り込む形でリバウンドに転じる可能性がある。
市場にとって5%台の米国10年国債利回りに対し慣れが必要なのだろう。その上で、政策金利の引き上げに打ち止め感が台頭すれば、長短金利が5%台でも株価への影響は低下が予想される。ただし、高いレバレッジに対して投資するリスクは採れない。従って、高金利下においては、グロースよりもバリューに優位性があると見られる。
また、米国連邦下院において、新議長の選出、その後の2024年度予算の協議がどのように進むのか、その動向にも注意すべきことは言うまでもない。
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