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- 大転換期を迎えたエネルギー政策
岸田政権は第7次エネルギー基本計画策定に着手した。2021年の第6次基本計画は、2030年度へ向け電力需要が減少する見通しとなっている。しかし、生成AIの基盤となるデータセンターや温暖化対策の主役であるEVには、安定した電力供給が必須だ。政府は、新たな基本計画で目標年次を2040年度とし、電力需要の拡大とカーボンニュートラルの両立を目指すことになるだろう。
■ 電力需要は縮小から拡大へ
5月13日、5ヶ月ぶりに第11回トランスフォーメーション実行会議(GX実行会議)が開催された。出席した岸田文雄首相(GX会議議長)は、「経済社会全体の大変革と脱炭素への取り組みを一体的に検討し、2040年を見据えたGX国家戦略」を年内にまとめるよう指示している。これは、第7次エネルギー基本計画の策定に当たり、2021年10月22日に閣議決定された第6次基本計画を大きく見直す意図を含んだものだろう。
2021年10月22日に閣議決定された第6次基本計画では、2030年度の電力需要が2019年度に比べて減少するとの見通しになっていた(図表1)。人口減少と省エネ化が要因と説明されていたものの、社会・経済のデジタル化を推進するとすれば、電力消費の拡大は避けられないだろう。従って、この計画は、日本の成長戦略との整合性において疑問視する声が少なくない。
電力公益的運営推進機関が一般送電事業者から提出された電力需要のとりまとめを行い、今年1月に公表した最新の想定だと、電力需要は2023年度を底に増加する見通しが示されている(図表2)。背景には、データセンター及び半導体関連工場の新設があるだろう。
第7次基本計画では、デジタル化時代に対応可能な電力供給が検討されると想定される。畢竟、2040年度へ向けた電力需要は、拡大方向へと大きく見直されるのではないか。
■ 拡大が見込まれるインフラへの投資
4月29、30日にトリノで開催されたG7気候・エネルギー・環境大臣会合では、共同コミュニケに「排出削減対策のない既存の石炭火力の廃止とを約束する」と明記された。日本政府は、「排出削減対策のない」設備とすることで、日本の石炭火力が対象となるのを避けられたとの認識のようだ。
もっとも、2050年にカーボンニュートラルを達成するとの公約を後ろ倒しにできるわけではない。従って、第7次エネルギー基本計画は、電力需要の増加と温室効果ガスの排出削減・・・本来は矛盾する二兎を追わなければならなくなった。
当然、再生可能エネルギーの最大の柱であることは間違いない。ただし、平地面積の少ない日本の場合、太陽光に関しては、適地へのパネルの設置は比率としてはドイツの2倍になった(図表3)。均等化発電原価(LCOE)から見ても、太陽光に多くを期待するのは難しいだろう。再エネの主力は、洋上風力となることが想定される。
また、原子力の活用も重要課題だ。9電力会社の家庭向けの標準的な電力料金を比べると、九州電力、関西電力、四国電力が安価に設定されている(図表4)。この3電力会社に共通しているのは、原子力発電所を稼働させていることだ。福島第一の事故後、原子力は割高との見方もあったが、少なくとも既存の原発は低料金に貢献している。
第7次エネルギー基本計画は、電力需要の拡大とカーボンニュートラルを前提に策定されるだろう。電力供給の主力は、洋上風力と原子力になり、長期的には水素の活用を視野に入れると見られる。また、再エネの利用拡大へ向け、送電網の強化、バッテリーの設置も重要な課題となりそうだ。
デジタル化時代において、安定した電力供給の確保は、日本のみならず世界共通の課題と言える。気候変動抑止との調和を図る上で、インフラへの投資は大きく拡大することになりそうだ。
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