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東京都知事選挙と岸田政権
市川 眞一
2024/06/28

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概要

東京都知事選挙は7月7日に投票日を迎える。56名の立候補者が知事の座を争うが、報道各社の世論調査の結果などから、事実上、小池百合子知事と蓮舫前参議院議員の一騎打ちと言えよう。現時点では現職の強みを発揮、小池知事がリードを保っている模様だ。自民党は側面から小池知事を支援しており、この選挙の結果は岸田文雄首相の指導力に一定の影響を与えるだろう。



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■ 小池知事が先行の模様

都知事選挙の最有力候補と見られる小池知事、蓮舫前参議院議員は、共にいずれの政党からも推薦を受けていない。ただし、小池知事に対しては、自ら特別顧問を務める地域政党、都民ファーストの会に加え、自民党、公明党、国民民主党が自主的に支援している模様だ。一方、蓮舫氏の選挙運動は、立憲民主党、共産党、社民党が支えていると言えるだろう。

立憲民主党の参議院議員であった蓮舫氏が、今回、共産党の支援を受けたのは、東京都における同党の組織力に期待したのではないか。都議会議員の数を見ると、共産党は立憲民主党を上回る都政第4党だ(図表1)。ただし、結果として、立憲民主党の最大の支援組織である連合は、蓮舫氏への支援を見送り、連合東京都連合会が小池知事への支持を打ち出している。



一方、最近5回の総選挙での東京比例代表区の得票を見ると、2012年以降の4回で、小池知事を自主的に支持する自民党、公明党、国民民主党などが、蓮舫氏を支持する政党の合計を上回っていた(図表2)。さらに、自民党政権で防衛相、環境相を歴任しながら、2016年7月の東京都知事選挙で自民党の推薦する増田寛也元総務相を破った同知事は、再選された2020年の知事選挙で圧倒的な強さを見せている(図表3)。


そうした状況から、今回の都知事選は、小池知事が先行、蓮舫氏が追っていると言えるだろう。

■  岸田政権には大きな影響の可能性

4月28日に行われた衆議院東京15区の補選では、小池知事の推した乙武洋匡氏の得票率が11.5%に止まり、当選どころか次点にもなれなかった(図表4)。政治とカネの問題で自民党に対する世論の厳しい視線が向けられるなか、自主的にせよ同党の支援を受けたことが背景だろう。

ただし、この補選で当選した立憲民主党の酒井菜摘氏の得票率も29.0%に過ぎない。候補者の乱立により票が分散、当選に必要な票数のハードルが大きく下がったことが要因だ。今回の都知事選挙と同様の構図であり、蓮舫氏にも勝つ可能性は残されていると考えられる。都政を重視するか、それとも国政における不透明な政治資金問題を判断基準とするか、その辺りに関する都民の判断が、結果を大きく左右するのではないか。

6月21日、通常国会の実質的な閉会に伴って会見に臨んだ岸田首相は、今秋以降も政策課題に取り組む姿勢を強調することで、9月の自民党総裁選において再選を目指す姿勢を滲ませた。しかしながら、衆議院の任期満了まで残り16ヶ月となるなか、内閣支持率は低迷しており、自民党内ではポスト岸田を模索する動きが活発化しつつあるようだ。6月16日に行われた沖縄県議会議員選挙を除けば、このところの主要な選挙で自民党は負けるケースが目立っている。小池知事側の事情で明確な支持を打ち出していないとは言え、都知事選挙で同知事が負けることがあれば、自民党内における岸田降ろしに拍車が掛かるだろう。

政権を決める国政選挙と異なって、想定外の大きな番狂わせがない限り、都知事選挙の結果で都政が大きく変化することは考え難い。ただし、その後の自民党総裁選、衆議院総選挙、さらには2025年7月の参議院選挙を視野に入れれば、この知事選が国政に与える影響は小さくないと言える。特に岸田首相にとって、自ら動くことは出来ないものの、結果の責任は重く圧し掛かるだろう。


市川 眞一
ピクテ・ジャパン株式会社
シニア・フェロー

日系証券の系列投信会社でファンドマネージャーなどを経て、1994年以降、フランス系、スイス系2つの証券にてストラテジスト。この間、内閣官房構造改革特区評価委員、規制・制度改革推進委員会委員、行政刷新会議事業仕分け評価者など公職を多数歴任。著書に『政策論争のデタラメ』、『中国のジレンマ 日米のリスク』(いずれも新潮社)、『あなたはアベノミクスで幸せになれるか?』(日本経済新聞出版社)など。


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