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- ハリス vs. トランプ
ジョー・バイデン大統領が民主党の候補者指名を辞退、今回の米国大統領選挙は劇的に様相が変化した。新たな候補者はカマラ・ハリス副大統領で決まったと言えよう。次は副大統領候補が1つの焦点になる。ハリス副大統領はバイデン政権で委嘱された不法移民対策で手古摺り、副大統領としての評価が高いわけではない。ただし、若返りを求める有権者の心を掴む可能性がある。
■ 現在の支持率は互角
カリフォルニア州選出の上院議員であった頃、ハリス副大統領は非常に人気のある政治家だったと言える。しかし、2020年の大統領選挙では民主党候補者レースでバイデン大統領に敗れ、副大統領として担当した不法移民対策で成果を挙げることができなかった。就任からわずか6、7ヶ月後の2021年夏頃から、副大統領としての仕事ぶりに対し、不支持率が急増している。ABC系のニュースサイトであるファイブサーティエイトによれば、現時点でも支持率は37.8%であり、不支持率の51.4%を大きく下回った状態だ(図表1)。
ただし、バイデン大統領が選挙戦からの離脱に際し、自らの後継者としてハリス副大統領への支持を打ち出したことで、民主党の新たな大統領候補として急浮上した。チャック・シューマー、ハキーム・ジェフリーズ上下院院内総務、ビル・クリントン元大統領、ヒラリー・クリントン元国務長官、ナンシー・ペロシ元下院議長など、民主党幹部、重鎮が支持を表明、候補者選定で投票権を持つ党大会代議員の過半数の支持を得た模様だ。
バイデン大統領が指名辞退を表明した21日以降の世論調査では、ドナルド・トランプ前大統領と支持率が互角になっている(図表2)。78歳1ヶ月のトランプ前大統領は、米国史上最高齢の大統領候補になり、59歳9ヶ月のハリス副大統領との年齢差が弱点になる可能性は否定できない。少なくともバイデン大統領の高齢を懸念していた民主党支持層は、候補者交代を歓迎するだろう。
■ 選挙結果はまだ流動的
次のポイントは、ハリス氏が副大統領候補に誰を選ぶかだ。大統領選挙は50州とワシントンD.C.でそれぞれ投票が行われるが、既に多くの州は2大政党の支持による色分けが明確になっている(図表3)。そうしたなか、アリゾナ、ジョージア、ネバダ、ミシガン、ペンシルバニア、ウィスコンシンの6州がスウィングステートと呼ばれ、選挙の結果を左右する傾向が強い。ハリス副大統領は、政策や支持層と共に、地盤となる州を意識して、州知事、上院議員などから候補者を選ぶだろう。その成否は、大統領選挙に一定の影響を及ぼすのではないか。
ちなみに、民主党は、8月19日から22日までシカゴにおいて党大会を開催する(図表4)。ただし、11月5日の本選が3ヶ月半後に迫るなかでの候補者交代を受け、8月7日頃までにオンラインで代議員による投票を行い、ハリス副大統領を正式に候補者へ指名する可能性が強まった。従って、ランニングメイトと呼ばれる副大統領候補は、来週中にも決まることが予想される。
超短期決戦となった今回の大統領選挙においては、今後2週間程度が1つの山場となりそうだ。バイデン大統領とトランプ大統領の戦いでは、両候補を嫌う『ダブルヘイター』の有権者が相当な数に及ぶと見られていた。特にバイデン大統領の場合、81歳の高齢が不安視されていたことは間違いない。ハリス副大統領への候補者の若返りが米国の有権者に受け入れられ、それが世論調査に表れると、同副大統領の陣営に勢いがつくだろう。
一方、トランプ前大統領の陣営は、暗殺未遂にも負けずに党大会へ予定通り出席した強さを改めてアピールすると共に、ハリス副大統領による不法移民対策の失敗を攻撃材料にすると見られる。
9月10日に予定されてきた候補者討論会が実現するか否かを含め、この選挙の帰趨はまだ流動的だ。現時点において、選挙結果を見越した投資は時期尚早と言えるのではないか。
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