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- 不安定さを増す石破政権
10月9日、石破茂内閣は衆議院を解散、27日が総選挙の投開票日となる。政権発足から超短期決戦となるなか、石破首相(自民党総裁)は、派閥のパーティー券売上還流問題で同党の処分を受けた議員に関し、総選挙で公認しないなど新たな措置を行った。結果として自民党全体にとり、現有議席を維持へのハードルはかなり高まったと見られる。総選挙後の政局は不透明感が強い。
■ 鍵を握る公明党票の行方
前回の総選挙で、自民党は絶対安定多数の261議席を獲得、8日の解散時点でも過半数を22議席上回る255議席を擁している(図表1)。一方、石破首相は、派閥主催のパーティー券売上高還流問題で同党により処分を受けた所属議員及び総選挙立候補者計49名に関し、現職11名、元職1名の計12名を公認せず、残り37名は比例代表区名簿への登載見送りを決めた(図表2)。つまり、小選挙区で勝たない限り、当該候補が衆議院で議席を持つことは不可能だ。
石破首相が総選挙に際して追加の措置を講じたのは、政治とカネの問題に関する世論の厳しい視線を意識してのことだろう。ただし、それは同首相の政権基盤に影響する可能性がある。
比例代表名簿への不搭載は、自民党が獲得する比例代表区の議席数とは連動しないため、議席数への直接的なインパクトはない。影響が想定され得るのは、小選挙区単独立候補となった34名の自民党公認候補のうち、現時点で25名が公明党の推薦を得られていないことだ。
前回の総選挙、公明党は比例で711万票を獲得したが、小選挙での候補者擁立は9区であり、得票は計87万票に止まった。一方、277名の小選挙区における自民党候補のうち263名を推薦、1名当たり平均2万票以上の上積みがあったと推定される。小選挙区での自民党候補者の平均得票は約10万票なので、公明党の推薦が勝利の決め手となった自民党の議員は少なくないだろう。
公明党の支持層は政治とカネの問題に敏感と言われる。同党が自民党候補者の推薦を絞る場合、もしくは推薦しても公明党支持層が自民党候補への投票を躊躇う場合、自民党の受ける打撃は小さくない可能性があるのではないか。
■ 立憲民主党の照準は参議院選挙?
自民党には逆風が吹きつつあるものの、最近の世論調査を見る限り、野党への支持が盛り上がっているわけではない。野党第一党の立憲民主党代表に就任した野田佳彦元首相にとり、今回の総選挙での政権奪取は極めて難しいと見られる。
ただし、来年7月には参議院選挙がある。まずは足下の総選挙で衆議院において立憲民主党が3桁の議席を回復すれば、野田代表への党内の求心力高まるだろう。そこで、同代表は、総選挙後の特別国会、年明けの通常国会の論戦で石破政権に論戦を挑み、参院選で与党を過半数割れに追い込むシナリオを想定しているのではないか。
首班指名、予算、条約は衆議院の議決が優越する。一方、一般法案に関しては、衆参両院の権限は原則として同じだ(図表3)。2007年7月の参議院選挙で自民党は改選64議席が37議席へ激減、非改選議員と公明党所属議員を合わせても105議席で、当時の過半数であった122議席を割り込んだ。その結果、重要法案であった『テロ対策特別措置法延長法案』を成立させることが出来ず、第1次安倍晋三内閣は総辞職に追い込まれている。さらに、2009年8月の総選挙において旧民主党が圧勝し、政権が15年ぶりに交代した。
つまり、総選挙が終われば、参院選へ向けた与野党の攻防が始まる。今回の厳しい措置に関する自民党内の批判をかわし、石破首相が参院選へ向け挙党一致の体制を作るには、最低でも今回の総選挙において自民党が単独過半数を維持する必要があると見られる。逆に言えば、仮に過半数へ届かない場合、9ヶ月後の参院選を理由に自民党内で「石破降ろし」の動きが加速するだろう。
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