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新興国社債市場の振り返りと見通し(2024年2月)
2024/03/21

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概要

2024年2月の新興国社債市場の振り返りと今後の展望について、ピクテの新興国債券投資チームがまとめました。



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市場概況

2024年2月の金融市場では、株式などのリスク資産にとって好調な地合いが続きました。世界の経済指標も概ね堅調で、米国の1月の雇用統計は、非農業部門雇用者数が前月比35.3万人増と事前予想を大幅に上回ったことに加えて、前月(2023年12月)および前々月(同11月)の速報値が上方修正されました。

また、同じく1月の米ISM製造業景況指数が15ヶ月ぶりの水準を回復する中、米消費者物価指数(CPI)は、前月比+0.4%と事前予想を上回り、年内の積極的な利下げ観測が後退しました。

米国とは対照的に、新興国では利下げ局面が続きました。中南米(ラテンアメリカ)域内の中央銀行はこれまで通りのペースで利下げを継続し、中欧・東欧、中東、アフリカ(CEEMEA)域内では、ハンガリーが100ベーシスポイント(1.0%)の利下げに踏み切りました。

米国国債は1.1%下落しましたが、スプレッドが縮小したため、JPモルガンEMBIグローバル・ディバーシファイド指数のリターンは+0.71%となりました。

ハイイールド社債の月間リターンは+1.6%と好調で、投資適格社債の+0.1%を、前月同様に上回りました。ハイイールド社債は全年限を通じて、総じて好調でした。

新興国債券の2月の発行市場は活況が続いたものの、旧正月(春節)以降は、勢いが衰えました。新規発行額は、2月が301億米ドル、年初来で835億米ドルとなり、中国債券を除いたベースでは、294億米ドルと過去平均の211億米ドルを大きく上回りました。地域別では均衡の取れた発行となり、中東およびアフリカ(ME&A)が121億米ドルと、他地域を上回りました。なお、例年、3月には、発行が減少する傾向が認められます。

*データ出所:JPモルガン


市場展望

2024年年初時点の新興国社債のスプレッドは、過去のレンジの中では割高な水準にあったものの、ハイイールド社債を中心に縮小傾向が続いています。年初の市場に織り込まれていた、米連邦準備制度理事会(FRB)が年内に積極的な利下げを実施するという市場の観測は、幾分、後退したものの、良好なマクロ経済環境は、ほぼ継続しています。

JPモルガンEMBIグローバル・ディバーシファイド指数のスプレッドは245ベーシスポイント(2.45%)と、2018年2月に付けた約200ベーシスポイント(2%)から僅か約40ベーシスポイント(0.40%)の水準に迫っています。

2018年当時と比べて、指数に占める相対的に格付けの高い債券の比率が高いこと、先進国(とりわけ米国)社債や安定的な企業ファンダメンタルズが、スプレッド縮小の裏付けとなっています。新規社債発行件数は回復しています。

新興国社債の信用力を示す指標は、強弱が入り混じる状況ですが、概ね底堅く推移していると言え、債務不履行(デフォルト)率は正常な水準に向かい始めています。収益性の改善は小幅に留まる公算が大きいように思われますが、純負債比率は、過去のレンジの下限で推移するものと見ています。デフォルト率は、年内に、3%近辺にまで低下することが予想されます。

 


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