Article Title
2025年に注目すべき7つのトレンド
2025/02/20

Share

Line

LinkedIn

URLをコピー


概要

メガトレンドの観点から、科学、技術、サステナビリティにおける主要な動向について、2025年以降の見通しをまとめました。



目次

1. AI(人工知能)だけではない注目の技術トレンド

2. 3Dチップ

3. CDMO― 製薬業界における新参者

4. 木の再創造

5. グリッドロックの解決

6. 洪水との闘い

7. スマート栄養


Article Body Text

1. AI(人工知能)だけではない注目の技術トレンド

AIは過去2年間、ニュースの中心になってきましたが、注目に値する技術トレンドはそれだけではありません。ロボット工学や自動化の進歩により、さまざまな産業で効率性、生産性、安全性が向上しています。自動運転車から業務プロセスの自動化まで、これらの技術は製造、医療、物流などの分野を変革しつつあります。例えば、先駆的なスタートアップのトラックメーカーが2025年にテキサス州で無人運転による貨物輸送サービスを開始する予定です。一方でテスラは2025年末までに1,000体の人型ロボットを工場に導入する計画があります1。AIも進化を続け、バイオテクノロジー分野では創薬、データ・画像解析、薬剤の再利用、さらには生産性向上のための消費者サービスや職場での活用など、有望な成長分野があります。


2. 3Dチップ

スマートフォン、コンピューター、自動車、さらには国の軍事装備まで、これらすべてが半導体に依存しています。世界中の企業が、コンピューティング・パワーとエネルギー効率を高めながら、半導体チップの小型化に躍起になっています。シリコンウエハー上のトランジスタの積層が物理的限界に達しつつあるため、2次元実装から3次元実装への移行が続けられると予想されます。チップの設計者は3次元的に考えるようになり、チップレットと呼ばれる通常1つのチップを形成する小さな正方形を、ハイブリッドボンドを使ってベースのシリコン層の上に積層するようになっています。HBM(広帯域メモリー)は、高性能なメモリー技術で、先進的なDRAM(ダイナミック・ランダム・アクセス・メモリー)の積層から構築されています。すべてのチップレットが同等の高度な技術を必要としないため、一部は安価な製造技術で生産できるというコスト面でのメリットがあります。サムスン電子は2025年に新しい3Dチップの導入を計画している企業のうちの一社です2


3. CDMO― 製薬業界における新参者

新薬や新しい治療法の複雑さが高まるにつれ、CDMO(医薬品開発製造受託機関)と呼ばれる企業グループへの需要が高まっています。これらの専門サービス企業は、医薬品開発や製造の特定分野に特化しています。製薬企業がCDMOに事業のいくつかを外部委託することで、リスクを分散し、最終的に新しい治療薬の提供を加速できます。CDMOはAIを含む新技術の先駆けとなることが多く、研究・製造プロセスを合理化することで製薬業界全体に付加価値をもたらしています。個別化治療や細胞療法の開発など、現代医療においてCDMOが果たす役割は、ますます重要になっています。



4. 木の再創造

世界で最も古い素材のひとつである木材が再び注目を集めています。グリーンコンシューマリズム(緑の消費者運動)やeコマースの台頭により、包装材料としての木材の人気が高まっていますが、建築資材としても注目されています。さらに、クロス・ラミネーテッド・ティンバー注1などの新しい技術の進歩や、さまざまな環境建築規制により、建設プロジェクトにおいても木材が重要な構成要素となっています。しかし、木材は新素材の重要な原料でもあり、コカ・コーラの透明ペットボトルに使用される木材由来のPETや、トラックや自動車に使用される従来のディーゼル燃料の希釈、代替品であるバイオディーゼルの原料にもなっています。また、木材は風力発電のタワーや、太陽光パネルを設置する台など、再生可能エネルギーのインフラとしても使用されることが増えてきています。最近では、炭素クレジットやBECCS注2などの技術によって、木材が世界的課題に対して、より直接的に働きかけできることが認識され始めています。

注1)クロス・ラミネーテッド・ティンバー:直行集成板、ひき板を並べた後、繊維方向が直行するように積層接着した板。
注2) BECCS(Bioenergy with Carbon Capture and Storage):バイオマス発電による炭素の回収や貯蔵。

5. グリッドロック注3の解決

環境に優しい地球を実現するためには、クリーンな電源から大量の電力供給が不可欠です。そのためには、より優れた送電網が必要になります。国際エネルギー機関(IEA)は、2050年にネットゼロ目標を達成するためには、今後5年間で2,500万kmの送電網を新設または近代化する必要があると推計しています3。まず、再生可能エネルギーの利用拡大には、太陽光発電や風力発電に適した遠隔地から需要集中地へ電力を輸送し、送電網に接続するためのネットワーク整備への投資が必要です。次に、電気自動車やヒートポンプの普及など電気を使う分野が増え、電力需要が増加するため、送電網の強化と近代化が求められます。そして、気候変動に伴う極端な気象現象に備え、厳しい条件下であっても停電を回避できるように対策を講じる必要があります。

注3)グリッドロック:電力網が負荷や障害により機能しなくなる状態

6. 洪水との闘い

洪水による被害は毎年400億米ドルに上り、何百万人もの人々に影響を及ぼしています4。気候変動だけでなく、多様な気象現象と洪水多発地域の都市化によって、より災害に強い構造物を建設し景観を整備することが不可欠となっています。例えば2024年、ヨーロッパでは過去20年で最悪の大洪水に見舞われました。

洪水に強い都市づくりは気候変動への適応の重要な柱であり、防潮堤の建設や洪水による水の管理が含まれます。都市ではより強靭なインフラを整備し、現実空間で収集したデータを仮想空間に再現するデジタルツインを利用して潜在的な洪水の影響をモデル化するなど、技術を活用してより適切な防御計画を立てています。ニューヨーク市では、病院や発電所などの重要インフラに対して厳しい基準を設け、新しい建築規制を施行し洪水への強靭性を確保するとともに、沿岸部の洪水防御強化プロジェクトに着手しています。


7.スマート栄養

食べ物は体の燃料であり、私たちは摂取する物に対してより賢くなっています。450億米ドルの市場規模が見込まれるスポーツ栄養補助食品市場は、2030年までに年率7.5%の成長が予想されています5。 これは、パフォーマンス、フィットネス、運動後の回復力向上、怪我のリスク低減を目的とした補助食品への強い需要に後押しされています。健康志向の高まりにより、ビタミンや乳酸菌を強化した機能性食品の需要も高まっています。さらに、GLP-1(グルカゴン様ペプチド-1)減量薬の使用が広がったことで、筋肉量の維持、消化器系のトラブル管理、カロリー制限下での微量栄養素摂取確保を助ける関連製品の市場も生まれています。ネスレ(Nestlé)やハーバライフ(Herbalife)はすでにGLP-1関連製品を発売しており、2025年にはGLP-1ユーザー向けの製品シリーズがさらに増えると予想されます。


●当資料はピクテ・グループの海外拠点からの情報提供に基づき、ピクテ・ジャパン株式会社が翻訳・編集し、作成した資料であり、特定の商品の勧誘や売買の推奨等を目的としたものではなく、また特定の銘柄および市場の推奨やその価格動向を示唆するものでもありません。
●運用による損益は、すべて投資者の皆さまに帰属します。
●当資料に記載された過去の実績は、将来の成果等を示唆あるいは保証するものではありません。
●当資料は信頼できると考えられる情報に基づき作成されていますが、その正確性、完全性、使用目的への適合性を保証するものではありません。
●当資料中に示された情報等は、作成日現在のものであり、事前の連絡なしに変更されることがあります。
●投資信託は預金等ではなく元本および利回りの保証はありません。
●投資信託は、預金や保険契約と異なり、預金保険機構・保険契約者保護機構の保護の対象ではありません。
●登録金融機関でご購入いただいた投資信託は、投資者保護基金の対象とはなりません。
●当資料に掲載されているいかなる情報も、法務、会計、税務、経営、投資その他に係る助言を構成するものではありません。

手数料およびリスクについてはこちら

個別の銘柄・企業については、あくまでも参考であり、その銘柄・企業の売買を推奨するものではありません。




関連記事


避難先としての社債

ジェットゼロ(Jet zero)を目指して

2025年2月の新興国株式市場

中国は日本化しない

グローバル株式ポートフォリオにおけるアクティブ運用としてのテーマ株式

2025年1月の新興国株式市場