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- 2024年7月のバイオ医薬品市場
■バイオ医薬品関連企業の株価動向
7月のナスダック・バイオテクノロジー指数(ドルベース、配当含まず)は上昇しました。
7月のバイオ医薬品株式市場は、世界の株式市場が下落する中でも堅調な推移となり、上昇しました。
また小型株が大型株を上回って推移しました。米雇用統計などの主要経済指標が弱含んだことを受けて米連邦準備制度理事会(FRB)が金融緩和に転じるとの見方が強まり、さらに景気減速懸念から米国の長期金利が低下したことが、金利感応度の高いバイオ医薬品株式市場にとってプラス寄与となりました。M&A関連では、米医薬品大手イーライ・リリー(米国)が米国のバイオ医薬品企業モーフィック・ホールディング(米国)を32億ドルで買収することを発表しました。
株価が上昇した銘柄としては、ギリアド・サイエンシズ(米国)、アルジェニクス(オランダ)、キニクサ・ファーマシューティカルズ・インターナショナル(米国)、イデアヤ・バイオサイエンシズ(米国)などが挙げられます。ギリアド・サイエンシズは、HIV予防薬レナカパビルの年2回注射の治験でHIV感染を完全に予防した結果を発表し、株価が大きく上昇しました。アルジェニクスは、主力の重症筋無力症治療薬ビブガルトの適応拡大への期待の高まりや2024年4-6月期の良好な決算発表が好感され株価が上昇しました。
また、キニクサ・ファーマシューティカルズ・インターナショナルも2024年4-6月の良好な決算と通期見通しの引き上げなどが好感されました。イデアヤ・バイオサイエンシズは、がん治療におけるMAT2A阻害剤IDE397の良好な治験結果を発表したことなどが株価の上昇要因となりました。
一方、株価が下落した銘柄としては、バイオジェン(米国)、アルナイラム・ファーマシューティカルズ(米国)、サレプタ・セラピューティクス(米国)などが挙げられます。バイオジェンは、欧州医薬品庁(EMA)の欧州医薬品委員会がアルツハイマー病治療薬レカネマブについて否定的な見解を採択したことを受けて株価が下落しました。アルナイラム・ファーマシューティカルズは、6月にアミロイド心筋症の治療薬候補について良好な治験結果を発表し株価が急騰した反動で株価が下落しました。またサレプタ・セラピューティクスは、6 月にデュシェンヌ型筋ジストロフィー治療薬エレビディスの用途拡大が承認されたことで株価が大きく上昇した反動から下落しました。
■今後のバイオ医薬品市場見通し
足元、バイオ医薬品株式市場では、良い兆候が見られています。2023年に大型案件が多く見られたM&A(合併・買収)の動きは、今後も継続するものと期待されます。特にフェーズ2で良好な治験結果が示された治療薬候補を有するなど買収後のリスクの低い銘柄が注目されます。新薬の開発では、遺伝子治療や免疫学系、循環器系、中枢神経系、がん領域などが注目されます。一方、2024年は米大統領選挙が控えており、その影響については注意深く見ていく必要があると考えます。長期的には、医薬品に関連する医療費についての議論が大きく変化していることがわかります。
いくつかの国では治療の有効性に応じて医療費を支払う制度(価値に基づく医療)が利用されていますが、処方薬で最大のマーケットである米国においても、従来の出来高払い方式ではなく、同様の制度を求める声は、ますます大きくなっています。医薬品企業と同様に政府、規制当局、保険業者は、医薬品の開発においてイノベーションを抑制することなく、医薬品の費用を効率的に管理することができる妥協案を見つけることを必要としています。最も重要な利害関係者である患者は、破産のリスクにさらされることなく、高品質の治療を受けたいと考えています。これは、治療薬の開発といった科学的側面だけでなく、ビジネスモデルや先進的な思考、価値に基づいた契約といった側面においてもイノベーションを生む良い機会となると考えます。
■バイオ医薬品関連企業の売上高は新薬承認後の業績寄与などにより相対的に高い伸びに
バイオ医薬品関連企業の売上高は、堅調に成長してきました。(図表6参照)バイオ医薬品関連企業については、引き続き多くの有望な治療薬候補を有しており、新薬承認後の業績寄与が期待されていることから、今後3年間で年率+10.8%の相対的に高い売上高の伸びが予想されています。(図表7参照)
■売上高の伸びに沿って株価も上昇
過去の実績では、バイオ医薬品関連企業の株価は、売上高の伸びとともに上昇してきたことがわかります。(図表8参照)
■バリュエーション
バイオ医薬品企業の業績が景気動向に左右されにくい特性などが注目されて2021年夏頃までは株価が上昇し、PSR(株価売上高倍率)で見たバリュエーション(投資価値評価)の水準も上昇していましたが、2021年秋以降は新薬承認申請に対するFDAの予想外の決定などがマイナス要因となったことに加え、2022年半ばにかけてナスダック市場の下落が大きくなる中、ナスダック・バイオテクノロジー指数も下落したことから、PSR も低下しました。( 図表9 参照)
足元は、良好な治験結果の発表や、再びバイオ医薬品企業の業績が景気動向に左右されにくい特性などが注目され、PSRは上昇に転じつつあります。
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