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- 2025年2月のバイオ医薬品市場
■バイオ医薬品関連企業の株価動向
2月のナスダック・バイオテクノロジー指数(ドルベース、配当含まず)は下落しました。
米国のトランプ政権による欧州連合(EU)や中国などに対する関税政策への懸念が広がり、世界の株式市場が下落する中、バイオ医薬品株式市場も下落しました。バイオ医薬品株式の中では、大型銘柄は好調な業績や新薬候補(パイプライン)への期待などから上昇した一方、中小型銘柄は厳しい株価推移となりました。またM&A(合併・買収)関連では、大手医薬品企業ノバルティス(スイス)がアンソス・セラピューティクス(米国)を最大で総額30億ドル超(前払金9億2,500万ドル、特定の承認審査および売上高のマイルストーン達成に応じて最大で21億5,000万ドル)で買収することを発表しました。
株価が上昇した銘柄としては、スプリングワークス・セラピューティクス(米国)、ギリアド・サイエンシズ(米国)、ベローナ・ファーマ(英国)などが挙げられます。スプリングワークス・セラピューティクスは、ドイツの医薬品企業メルクによる買収の交渉が行われているとの報道などが好感され、株価が大きく上昇しました。(2025年2月11日)ギリアド・サイエンシズは、2024年通期の決算が好調で、2025年の見通しについても市場でポジティブに受け取られたことなどを受けて株価が上昇しました。また市場では、同社のHIV予防薬のパイプラインに対する期待が高まっています。ベローナ・ファーマは、2024年に米食品医薬品局( FDA)から承認された慢性閉塞性肺疾患( COPD)治療薬の立ち上げが順調に推移していることが2024年10-12月期決算で示されたことなどが好感され、株価の上昇基調が継続しています。
株価が下落した銘柄としては、バクサイト(米国)、デイ・ワン・バイオファーマシューティカルズ(米国)、イルミナ(米国)などが挙げられます。バクサイトは、株価は下落したものの、小児向け肺炎球菌ワクチンの重要なデータが今後数週間のうちに発表される予定となっており、注目されます。デイ・ワン・バイオファーマシューティカルズは、2024年10-12月期の決算で売上高は市場予想を上回ったものの、一株あたり利益(EPS)が市場予想を上回る赤字であったことが嫌気され株価の下落が大きくなりました。イルミナは、トランプ政権による関税措置の報復として中国が同社を制裁の対象に加えたことなどを背景に株価が大きく下落しました。
■今後のバイオ医薬品市場見通し
バイオ医薬品株式市場は、米国金利の変動や景気見通しの不透明感などの影響を受けて、変動が大きくなっています。2023年に大型案件が多くみられたM&Aの動きは、大手の医薬品企業や大手のバイオ医薬品企業が大型治療薬の特許問題に直面していることもあり、今後も継続するものとみられ、2025年半ばまでには、再び案件の増加が期待されます。特にフェーズ2で良好な治験結果が示された治療薬候補を有するなど買収後のリスクの低い銘柄が注目されます。新薬の開発では、画期的な新薬の開発が続いており、AI(人工知能)の進化が、さらに開発を加速するとみています。またFDAが、医療ニーズが満たされていない適応症の治験については柔軟な姿勢を示していることも治療薬の開発を支援するものと考えます。さらに、資金調達については、新薬の開発が順調な企業では引き続きスムーズに進められています。一方、IPOは依然として低調な状況が続いています。引き続き米国の金融政策、マクロ経済の動向、トランプ新政権の政策動向には注視が必要と考えます。
長期的には、医薬品に関連する医療費についての議論が大きく変化していることがわかります。いくつかの国では治療の有効性に応じて医療費を支払う制度(価値に基づく医療)が利用されていますが、処方薬で最大のマーケットである米国においても、従来の出来高払い方式ではなく、同様の制度を求める声は、ますます大きくなっています。
医薬品企業と同様に政府、規制当局、保険業者は、医薬品の開発においてイノベーションを抑制することなく、医薬品の費用を効率的に管理することができる妥協案を見つけることを必要としています。最も重要な利害関係者である患者は、破産のリスクにさらされることなく、高品質の治療を受けたいと考えています。これは、治療薬の開発といった科学的側面だけでなく、ビジネスモデルや先進的な思考、価値に基づいた契約といった側面においてもイノベーションを生む良い機会となると考えます。さらにAIの進化はバイオ医薬品業界のイノベーションに大きな役割を果たすことが期待されます。
■バイオ医薬品関連企業の売上高は新薬承認後の業績寄与などにより相対的に高い伸びに
バイオ医薬品関連企業の売上高は、堅調に成長してきました。(図表6参照)バイオ医薬品関連企業については、引き続き多くの有望な治療薬候補を有しており、新薬承認後の業績寄与が期待されていることから、今後3年間で年率+11.2%の相対的に高い売上高の伸びが予想されています。(図表7参照)
■売上高の伸びに沿って株価も上昇
過去の実績では、バイオ医薬品関連企業の株価 は、売上高の伸びとともに上昇してきたことがわかります。(図表8参照)
■バリュエーション
バイオ医薬品企業の業績が景気動向に左右されにくい特性などが注目されて2021年夏頃までは株価が上昇し、PSR(株価売上高倍率)で見たバリュエーション(投資価値評価)の水準も上昇していましたが、2021年秋以降は新薬承認申請に対するFDAの予想外の決定などがマイナス要因となったことに加え、2022年半ばにかけてナスダック市場の下落が大きくなる中、ナスダック・バイオテクノロジー指数も下落したことからPSRも低下し、その後、低水準で推移しています。(図表9参照)
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