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2024年8月のバイオ医薬品市場
2024/09/11

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概要




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■バイオ医薬品関連企業の株価動向

8月のナスダック・バイオテクノロジー指数(ドルベース、配当含まず)は上昇しました。

月初、米国の主要経済指標が市場予想を下回ったことで景気後退懸念が高まり、世界的にリスク回避の動きが強まる中、世界の株式市場は急落しました。しかし、その後は、景気後退懸念が緩和されたことや、インフレ指標の安定化を受けて米国が9月にも利下げに転換するとの見方が強まったことなどから世界の株式市場は反発し、月間では上昇となりました。このような中、バイオ医薬品株式市場についても世界の株式市場と同様な動きとなりました。月中に米国のメディケア・メディケイド・サービスセンター(CMS)がインフレ抑制法(IRA)に基づく対象医薬品10品目の交渉薬価を発表しましたが、事前の想定よりも影響は軽微であるとの見方が優勢でした。

株価が上昇した銘柄としては、リジェネロン・ファーマシューティカルズ(米国)、アストラゼネカ(英国)、アルナイラム・ファーマシューティカルズ(米国)などが挙げられます。リジェネロン・ファーマシューティカルズは、ぜんそく、アトピー性皮膚炎などの治療薬デュピクセントが好調なことに加え、加齢黄斑変性治療薬アイリーアが引き続き競争力を持つことが四半期決算で示されたことを受けて、株価が上昇しました。アストラゼネカは、7月下旬に良好な四半期決算を発表したことに加え、欧州や米国での新薬の承認などが好感され株価が上昇しました、アルナイラム・ファーマシューティカルズは四半期決算で売上高、利益が市場予想を上回ったことに加え、2024年通期の業績見通しを引き上げたことなどが株価の上昇要因となりました。

株価が下落した銘柄としては、モデルナ(米国)、バイオジェン(米国)などが挙げられます。モデルナは、ワクチンの競争激化などを背景に通期の業績見通しを引き下げたことが嫌気され株価が大きく下落しました。バイオジェンは、欧州医薬品庁(EMA)の欧州医薬品委員会がアルツハイマー病治療薬レカネマブについて否定的な見解を採択したことを受けて株価が下落しました。



■今後のバイオ医薬品市場見通し

足元、バイオ医薬品株式市場では、良い兆候が見られています。2023年に大型案件が多く見られたM&A(合併・買収)の動きは、今後も継続するものとみられ、米国大統領選挙後に案件の増加が期待されます。特にフェーズ2で良好な治験結果が示された治療薬候補を有するなど買収後のリスクの低い銘柄が注目されます。新薬の開発では、遺伝子治療や免疫学系、循環器系、中枢神経系、がん領域などが注目されます。また資金調達については、新薬の開発が順調な企業はスムーズに進められています。なお、引き続き米国大統領選挙や米国の金融政策、マクロ経済の動向には注視が必要と考えます。
長期的には、医薬品に関連する医療費についての議論が大きく変化していることがわかります。

いくつかの国では治療の有効性に応じて医療費を支払う制度(価値に基づく医療)が利用されていますが、処方薬で最大のマーケットである米国においても、従来の出来高払い方式ではなく、同様の制度を求める声は、ますます大きくなっています。医薬品企業と同様に政府、規制当局、保険業者は、医薬品の開発においてイノベーションを抑制することなく、医薬品の費用を効率的に管理することができる妥協案を見つけることを必要としています。最も重要な利害関係者である患者は、破産のリスクにさらされることなく、高品質の治療を受けたいと考えています。これは、治療薬の開発といった科学的側面だけでなく、ビジネスモデルや先進的な思考、価値に基づいた契約といった側面においてもイノベーションを生む良い機会となると考えます。






■バイオ医薬品関連企業の売上高は新薬承認後の業績寄与などにより相対的に高い伸びに

バイオ医薬品関連企業の売上高は、堅調に成長してきました。(図表6参照)バイオ医薬品関連企業については、引き続き多くの有望な治療薬候補を有しており、新薬承認後の業績寄与が期待されていることから、今後3年間で年率+10.3%の相対的に高い売上高の伸びが予想されています。(図表7参照)




■売上高の伸びに沿って株価も上昇

過去の実績では、バイオ医薬品関連企業の株価は、売上高の伸びとともに上昇してきたことがわかります。(図表8参照)



■バリュエーション

バイオ医薬品企業の業績が景気動向に左右されにくい特性などが注目されて2021年夏頃までは株価が上昇し、PSR(株価売上高倍率)で見たバリュエーション(投資価値評価)の水準も上昇していましたが、2021年秋以降は新薬承認申請に対するFDAの予想外の決定などがマイナス要因となったことに加え、2022年半ばにかけてナスダック市場の下落が大きくなる中、ナスダック・バイオテクノロジー指数も下落したことから、PSR も低下しました。( 図表9 参照)


足元は、良好な治験結果の発表や、再びバイオ医薬品企業の業績が景気動向に左右されにくい特性などが注目され、PSRは上昇に転じつつあります。





                                                                    

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